盆栽で無双しよう その5
『うーん、設定は良いんだけど、話がありきたりというか』
『いまいちパッとしないんだよね。どこかで見たことある感じ』
『今までのもそうだったし、今日持ってきてくれたこの原案も全く同じ』
『正直に言うと、小説家向いてないよ。君』
「………ん」
どうやらいつの間にか眠っていたらしい
それにしても嫌な夢を見た。ここ最近は見ることは無かったんだけどな
「………ストーリー、考えなきゃな」
盆栽の小説を考え始めてから数日たった
あれからフミ華ちゃんと何度も話し合って、大体の話の流れは決まった
「まずは主人公が死ぬところ…」
『主人公は定年退職を過ぎた老人』
『生涯孤独で趣味は盆栽』
『心臓麻痺で孤独死。それを憐れに思った神様が若返った状態で異世界転生させてくれる』
見れば見るほど可哀想な人生に思えてきた。考えたの自分だけど
「そして転生後は…」
『転生した世界は、自然あふれる魔法が使える世界』
『だが科学の発展とともに環境汚染が深刻化』
『自然とともに生きる種族と文明の発展を目指す人間側で争いをしていた』
もっといい世界に転生させろと神様に突っ込みを入れたいところだ。考えたのやっぱり自分だけど
「次はヒロイン…」
『最初に会ったのが、ヒロインであるドリアードの面倒を見ていたエルフの少女』
『ドリアードはエルフや人間とともに生きる種族』
『しかし科学の発展と共に、人間から見放されることになる』
『ドリアードと人間の交流が断たれて数十年はたっている』
この辺りはフミ華ちゃんと一緒に考えたところだ
『ドリアードは剪定をしてもらうことでパワーアップする』
『エルフは自然そのままを愛するので剪定の技術はない』
『人間側の剪定技術は失われており、主人公が出会ったドリアード達も枝や葉がぼさぼさの状態だった』
『そこで神様から強化してもらった盆栽の技術を使って、主人公はドリアードの剪定を行う』
『神の力が宿った剪定を受けたドリアード達は、今まで以上にパワーアップを果たす』
『強くなったドリアード達は主人公に協力を頼み、自然あふれた世界を取り戻すために戦いを始める』
『女性に免疫がない主人公は、言われるがままヒロインたちに協力することになる』
「…こんなものかな」
やっぱりストーリーを考えるのは苦手だ。いつ考えても『これでいいのか』との考えがよぎってしまう
これは本当に面白いのか
面白いと思っているのは自分だけではないのか
他者に喜んでもらえるのか
何度考えても、何度考えても
『この作品は否定されるのではないか』
「………いま考えることはそれじゃないよな」
そうだ。考えるのはストーリーだ
俺の仕事はプレゼンター。依頼に応えなければ