盆栽で無双しよう その3
「次は敵だな」
「敵ですね」
創太は紙に『敵』と書き、その下に丸を描いた
「植物の敵…やっぱり自然の敵は人工物。なら機械かなぁ」
「それだと最初に決めた『自然あふれる世界』からかけ離れちゃいますよ?」
『自然あふれる』という世界観。そこに機械という人間の文明を加えると世界観は崩れてしまう
「じゃあ世界観の変更。『文明が発展し、自然が失いつつある世界』で」
「わかりました、文明が発展っと…」
フミ華は『自然あふれる世界観』に『文明の発展、自然が失いつつある』と書き加える
「それなら戦う理由が出来ましたね」
「ああ、元の世界を取り戻そうとするヒロインと、それに協力する主人公だな」
世界観、味方、敵、世界の背景は大まかではあるが決まりつつあった。次は
「主人公だな…」
「盆栽が出来る主人公ですね…」
主人公の設定を考えなければならないが、『盆栽』これがネックだった
「フミ華ちゃん、盆栽ってどんなイメージ沸く?」
「おじいちゃんがやってるイメージです」
「だよねぇ…」
依頼の中に『ハーレム』があったので、主人公はヒロインにモテモテでなければならない
だが盆栽と聞いてパッと思いつくのは庭で剪定しているおじいちゃん
若い人も盆栽をやっていると思うが、一般的なイメージではない
かといっておじいちゃんがハーレム展開になるのを読者が求めているかというと、
「あまり求めてないでしょうねぇ…」
「中年くらいならまだ何とかなったんだけどなぁ…」
一風変わった作品として受けるかもしれないが、売れるかどうかはリスクが高すぎる気がするので、おじいちゃんが主人公も無し
「じゃあ若返ってもらいます?」
「…そうだな、どうせ死ぬし」
依頼の中に『異世界転生』もあった。転生ということは一度死ぬということである
「死んで若返るか」
「わかりました。おじいちゃんから若者へ転生っと」
「次はどんな主人公で、かつどうやって死ぬかだな」
創太は『味方』の隣に『主人公』と書き加える
「……定年退職むかえて10年以上たったおじいちゃんで」
「75歳以上ですね」
「仕事一筋に生きてきたから生涯孤独の身で…」
「寂しすぎますね」
「唯一の趣味である盆栽の手入れ中、心臓麻痺で倒れたところを誰にも見つけてもらえず孤独死…」
「現代社会の闇ですね」
「それを見て可哀想に思った神様が第二の人生を送らせてくれる、と」
「先生はそうならないでくださいね?」
創太は余計な心配をされた気がしたが、無視した
「生涯孤独…一生童貞だったんですかね…」
「フミ華ちゃんは偶にとんでもないことをさらっと言うよね」
フミ華は金髪ポニテの美女だが、少しばかり頭が残念なところがあった
「え、じゃあそういうお店で童貞は捨てているんですか主人公」
「ちょっと待って止まって」
フミ華は結構頭が残念なところがあった
「主人公が童貞とかどうとか今はいいの!!」
「因みに先生は童」
「だまらっしゃい!!!」
これ以上この残念な美女から残念なことを聞かないよう、創太は次の設定を考えるよう強く促した