6
神咲遙香がいない世界に、どう折り合いをつければいいのだろう。
僕は葛藤した。
彼女が現時点でこの世界に存在しないことは、紛れも無い事実なのだ。
しかし、それを、他でも無い僕が認めてしまうということは、彼女の未来を否定することと同じだ。
――世界は、連続のはずなんだ。
ふと、あの日――夏祭りを思い出した。
神咲は、自分がこの世界から忘れられるこの未来を知っていたのだろうか。
だとすれば、あの時、彼女は何を願ったのだろう。
今となっては確かめようも無いことで、結局、曖昧なままだ。
僕は曖昧だ。
曖昧なまま、知った気になって、理解した気になって、でもそれは偽者で、何もかもは曖昧なままで、きっとこの世界は、それを咎めたのだ。
僕は誓った。
世界でも神様でもなく、自分自身に。
たとえ世界が神咲遙香を忘れても、僕だけは、彼女を忘れてはならない。
神咲遙香がかつて世界に存在した事実を、守り抜かねばならない。
昨日と今日は繋がって、今日と明日は繋がって。
この世界は、連続で。
そんなのは、嘘だろう。
それでも、確かに彼女はこの世界に存在した。
僕がどれだけ曖昧で、世界がどれだけ離散なのだとしても、僕と彼女の思い出だけは、鮮明で、歴然で、永遠だ。