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彼女は忘れられた  作者: ぽぽぽぽ
6/11

5

神咲遙香は失踪した。



僕が冷静でいられたのは、週明け、彼女が学校を休んだ日の朝までだった。



彼女の不在は無断欠席の類ではなかった。


様子がおかしいのだ。


誰も神咲に言及する者がいない。

訪ねても、話が噛み合わない。



そもそも、彼女の席が無い。



いじめの類かと疑った。


しかし、こと彼女については、そんなキャラクターではなく、それは考えづらい。


いや、万が一そうなのだとしても、教員ですら彼女に言及しないというのはあまりに不自然だ。



焦燥する僕を置き去りにして、瞬く間に時間は進んでいく。

とうとう、誰一人、神咲遙香に触れることなく、一日が終わった。



――次の日も、その次の日も、日常は進行した。



嫌悪するでもなく、無視するでもなく、神咲遙香を置き去りにして、世界は忙しなく進行する。



――まるで、神咲遙香など、もともといなかったかのように。



彼女を忘れてしまったのは、人間だけではない。


彼女はこのクラスの名簿からも姿を消していた。

彼女が参加していた部活の部員名簿も同様だ。



僕は最後の手段に出ることにした。


場所なら知っている。



僕は神咲の家へ向かった。



道中は気が気ではなかった。

そこに答えがあるという根拠の無い期待と、悪あがきへの自嘲と、それから諦念が入り混じって、消化不良の感情を塞き止めることに必死だった。



住所に着く。



――ああ、そうか。



僕は諦めた。

直視することが怖くて、奥底に追いやった推理は、やはり正しかった。



――家は、無かった。



僕は悟った。

到底、その状況を理解はできない。まして肯定などできるはずはない。


それでも、見て見ぬふりをしようとした、歴然とした事実を、ただありのままに受け入れ、認める。



――失踪したのは、世界の方だった。

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