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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

砕けた魔法

作者: 須越泰司

人が割と死にます。

読みやすいよう改行してみたつもりなのですが、、、なろう初心者なのでご容赦ください。

むかしむかし、あるところに、一人の王様がいました。王様は三人の娘を持っていましたが、三人目のお姫様のことを一番に可愛がっていました。ある日、三人目のお姫様が人形を欲しがりましたので、王様は国一番の職人に作らせた人形を、三人目のお姫様にあげました。それを妬んだ一人目と二人目のお姫様は、城に仕える魔法使いに「三人目のお姫様を国で一番不幸にしなさい」と言いつけました。魔法使いは言われたとおりに魔法をかけました。


 次の日、一人目のお姫様が死にました。その一時間後に二人目のお姫様が死に、そのまた一時間後には王様が死んでしまいました。あまりに突然の不幸に、王妃様と三人目のお姫様はとても悲しみました。そこに魔法使いが現れてこう言いました。

「実は昨日、一人目と二人目のお姫様に頼まれて、三人目のお姫様が国で一番不幸になる魔法をかけました。しかし考えてみれば、不幸なんてはかることができませんから、お姫様が本当に国で一番なのかわかりません。そこで、この国の人間が三人目のお姫様一人だけになれば間違いなく国で一番不幸になると、この魔法は考えたのでしょう。ですが、この魔法は死なせる順番を間違えました。魔法の解き方を知る私を初めに死なせるべきでした。私が生きているうちに、魔法を解いてしまいましょう。それにはどうしても王妃様のお命が必要なのです」

 王妃様が命を差し出しますと、魔法使いはさっそく魔法を解く準備にとりかかりました。けれども三人目のお姫様にかけられた魔法はとても賢く、準備が終わるすんでのところで三人目のお姫様から逃げ出してしまいました。とっさに魔法使いが魔法を解こうとしましたが、何しろ準備が終わっていませんので正しく解けません。魔法は最後に魔法使いを死なせた後、砕けて散りました。

 そうして安心した三人目のお姫様は、そのあと密かに想いを寄せていた男と結婚し、女王様になりました。女王様は魔法のことなどすっかり忘れて幸せに暮らしていました。


 魔法が砕けてちょうど五年が経ちました。その国は冬に雪が降るところにありましたが、魔法が砕けてから徐々に雪の降る時期が早く、そして長くなり、その年ついに夏の初めから雪が降りはじめました。王配殿下は使者を出して、国中の学者を訪ねさせましたが、雪が早まった原因は誰にもわかりませんでした。国では雪のせいで作物が実らず、飢饉が起きていますので、放っておくわけにもいきません。王配殿下は困り果てていました。

 女王様は五年前に砕けた魔法のことを思い出していましたが、王配殿下には黙っていました。砕けた魔法のことを知った王配殿下が、国外に離れていってしまうのを女王様は恐れていました。女王様は城に仕える魔女にだけ、こっそりと打ち明けました。すると魔女は言いました。

「砕けた魔法が何処に散ったかわからないのでは、どうしようもありません。あるとすれば、女王陛下が亡くなれば雪もやみますでしょう。ですがその必要はありません、私にお任せ下さいませ。国中を巡って砕けた魔法を集め、必ずや解いてみせましょう。あてはあります。陛下が大事になさっている人形の不思議な気配、おそらく砕けた魔法の一部が入り込んでおります。私に預けて頂ければ、辿ることもできるでしょう」

 女王様は魔女に山ほどの報酬を約束しました。こうして魔女は旅に出ましたが、秘密で仕事に出かける必要がありましたので、城の人間は魔女がいなくなったことを不思議に思いました。女王様がさてどんな嘘をつこうかしらと考えていたところ、王配殿下までもが「素晴らしい魔女を失った」と悲しみますので、女王様はすっかり嫉妬してしまいました。女王様は言いました。

「きっとあの魔女が雪を降らせていたのよ。それがばれそうになって逃げたに違いないわ」

 王配殿下はすぐに魔女の痕跡を調べさせましたが、確かに魔女の消える前の動きは怪しいものでしたので、雪を降らせている悪い魔女を捕らえた者に山ほどの報酬を出す、とお触れを出しました。


 その城下町に八百屋さんがありました。雪のせいで野菜がとれませんので、心優しい八百屋さんの生活はとても苦しくなっていましたが、一人娘とほそぼそと暮らしていました。ある日、八百屋さんと娘は、親戚の花嫁の結婚式に呼ばれました。娘は花嫁のそれはそれは美しい衣装から目が離せないでいました。娘に気がついた花嫁はこう言いました。

「あなたも明日には結婚出来る年でしょうに。早いけれど誕生日おめでとう。次はあなたの番よ」

 花嫁は持っていたブーケを娘に渡しました。誕生日を忘れていた娘は、喜びのあまり花嫁に抱きつきましたが、化粧で衣装を汚してしまうことにはたと気付き顔をあげました。そこには衣装も花嫁もありませんでした。それどころか娘は式場にいませんでした。娘はいつの間にか、何もない雪原に一人で立っていました。娘が凍えて途方に暮れていると、犬ぞりに乗った女が現れてこう言いました。

「こんなところで何をしているのですか?」

「いつの間にかここにいたの。城下町に帰りたい」と娘は言いました。

「城下町に行くには朝一番に出ませんと、着く前に日が沈んで迷子になってしまいます。今日は私の小屋にお泊り下さい。明日犬ぞりで連れてってあげましょう。さあどうぞそりへ」

 娘が女の犬ぞりに乗りますと、七匹の犬はそりを引っ張って走り出しました。


 しばらくすると、ぽつんと建った一軒の小屋につきました。女はすぐに毛布を娘に渡し、暖炉を灯し、風呂を沸かし、スープを煮立て、娘をもてなしました。娘は暖炉の前で温まりながら、棚に並ぶ本の背表紙を眺めていました。それらがいかにも魔女という感じでしたので、娘は女がお触れの魔女だと気付きましたが、国を滅ぼさんとする魔女にしてはやけに親切なことを不思議に思いました。

「あなたお触れの魔女さんね?私には悪い人には見えないのだけれど、一体どうして雪を降らせてるの?」

 魔女はこう答えました。

「雪を降らせているのは私じゃありません。逆なのです。私は女王様に頼まれて雪をやませる仕事にでかけたのですが、こんなことになってとても驚いています。これでは仕事になりません、かといって城に帰れば打首かもしれません。何がどうなっているのでしょう」

「魔女さんが雪を降らせていると暴いたのは女王様よ。それで今、国のみんなから尊敬されてるの。女王様ってひどい人ね」と娘は言いました。

 魔女は少し考えた後にこう言いました。

「教えて下さりありがとうございます。ささやかなお礼ですが、どうぞ私を城へ連れていって山ほどの報酬を受け取って下さい。私はお城に仕えている身ですから、お城の思うとおりにいたしましょう。決して女王様を憎んだり、まして殺そうだなんて少しも思いませんよ」

 娘はこう答えました。

「みんな訳を話したらわかってくれるよ!私も協力する」

 それを聞いた魔女は、自分もわけを聞けば女王様を許せるかも知れないと考え直し、明日に備えて二人で寝ました。


 次の日の朝、二人は城下町へでかけました。魔女は防寒着でほとんど顔が隠れていましたので、誰にも魔女だと気づかれませんでした。夕方には城の近くへたどり着き、娘は物陰で魔女に縄を巻きつけました。娘が城の門番に縄の巻きついた魔女を見せ「魔法を抑える不思議な縄で縛っております。私にしか扱えません」と説明しますと、簡単に女王様と王配殿下に会うことができました。

 連れてこられた魔女を見た王配殿下は大層喜び、山ほどの報酬を娘へ渡すよう兵士に命じました。そこで娘が真実を話そうとしましたところ、魔女が魔法で娘の記憶を奪ってしまって、娘は何を話そうとしたのか忘れてしまいました。

 魔女は女王様から砕けた魔法の話がでるのを待っていましたが、女王様の一言目は「こんな魔女早く死刑にするべきだわ」でした。それを聞いて怒った魔女が、魔法で女王様を五つにちぎってしまいました。それを見て怒った王配殿下は、兵士に命じて魔女を殺してしまいました。

 そのあと雪はやんで、いつもの夏が国に訪れました。王配殿下は王様になり、魔女を捕らえた娘を王妃としました。王様と娘の結婚を国中が祝いまし娘は綺麗な花嫁衣装を着て、とても幸せそうでした。


おわり

ありがとうございました。数年前に一般教養科目で書いたものを加筆修正しました。ちょっと説明台詞が多いですね

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