聖戦の傷跡
プロローグ:かつて聖女は救いを求める。
救われる。
私はこれから救われるのだ。
嗚呼、良かった本当に。
もう戦わなくていい。
傷つくこともない。
悲鳴も聴こえない。
雄叫びだってそう。
この蒸せかえる様な悪臭にもうんざりしていたところだ。
多分人はもう信じることは出来ないし、きっと憎悪するけれど…
私に“次”なんて無いのだから、そんな感情も抱くことはない。
それに何より人を殺めなくていいというのだから心も綻ぶというものだ、あれは何時になってもニガテだった、あの呪うような眼孔を向けられる度にどうしようもない吐き気に襲われた。
そんなことをぬかしておきながら何千、いいえ何万、どれだけの命を奪ってきたのか私はもう覚えていない。
はは、本当に気持ち悪い。
かつて私を聖女と崇めていた男が叫んでいる。
「これより!王を謀り!臣民を欺き!あたかも戦の先には希望があるかのような口振りで我が国家を窮地に陥れたこの忌々しい魔女の死刑執行を執り行う!!」
私はこれから救われるのだ。
かつて私の力を神の加護と称していた男が叫ぶ。
「其奴はどんな呪術を使っているのか定かではないが多少の傷などたちまちの内に塞がってゆく!まずは首を跳ねよ!二度と再生など出来ぬよう八つ裂きにし火炙りにするのだ!さぁ構えっ!!」
嗚呼、良かった本当に。
「力の限り振り下ろせ!!!」
途切れそうな意識の中、私は、私の終わりを感じながらやはり考える。
“死”は“救い”だ…
**********
波の音がする、こんなにも心地よい音を聴いたのは何時以来だろうか。
以前に海を訪れたのは確か…などと記憶を辿りつつふと自分に目をやると、自分が裸体のまま浜辺に倒れていることに気がつく。
「何故私は裸で、というか、いったい此処は何処なのでしょう…」
一瞬の思考の末、思いの外すぐさま回答を見つけることができた。
ええと、あぁ、そうだった私は死んだのだ。
首を跳ねられ、四肢を八つ裂きにされ、火炙りにされた、といってもどうやら跳ねられる直前に意識を失った様だ。
なにせ全くと言っていい程痛みがなかった、我ながらこれは死に方としては上出来なのではないだろうか。
ふふ、少し気分が良くなったのが自分でも解った。
ということは此処は死後の世界であると。
正直驚いた、そんなものなど人間が死の恐怖から少しでも逃れるために創りあげた空想の産物だとばかり考えていたから。
人々の伝え通り天国と地獄があるとすれば、間違いなく此処は地獄だろう。
私は、地獄に落ちて当然のことをしてきたのだから。
けれどたとえ天国だろうと、地獄だろうと、はたまたそれ以外の何処かであろうと、あの戦場よりはきっとましだと私は思う。
「おぉ!やっと気がついたかい?」
この問いが自分にたいしてのものだということはすぐにわかった。
声のする方に視線だけ移動させるとそこには男が立っていた、腰辺りまでのびている黄金色の長髪、まるで作り物の人形のような、人というにはあまりにも整い過ぎた顔立ちをしていてどこか中性的な印象を受ける。
正真正銘、紛うことなき美青年だった。
「アハハハ!美青年だなんて照れるなぁ!あ!人というにはってのは少し当たってるかな!でも容姿に関しては君も大概だよ~?」
何故この男は私の心の声にさも当然のように相槌をうっているのだろう。
「何故って僕はいわゆる神様だからねっ!それ故に存在している次元が違うというか君達に物理的干渉が出来ないんだよね、本来常人は視認すらできないよ、まぁ君は特別だから。本当は何か羽織なんかかけてあげれたらよかったんだけど…でもそのかわり結界を張っておいたから安心して!」
神?神と言ったのかこの男は…次元?結界?訳がわからない、とにかく今の私にはわからないことが多過ぎる。
「えと、あの…私はっ」
「大丈夫だよ、ちゃんと説明するから!えっと、まずはそうだね実はなんと!君はまだ死んでいませんっ!」
どういうことだ、私が死んでいない?
「いや~ずっと君を観ていたんだけどさ、あまりにも可哀想でつい現世に召喚しちゃった!みたいなっ☆」
男は拳で頭を小突き、片目を閉じチラと舌を出している。
なんだその仕草は、無性に腹が立つ。
頭に血が登っているのがわかった、怒りが込み上げてくる。
「どうしてっ…どうしてそんな余計なことをしたのですかっ!!あと少しだったのに、あと少しでようやく私は救われたのに…どうして…」
ダメだ、言ってしまった。
今まで私のなかに溜まっていたドス黒い感情が言葉と涙になって溢れ出てきた。
「きっと、君は死んだって救われないよ。」
まるで私の心を見透かす様に、その一言はとても核心をついていて私は少しこの男が怖くなった。
「ではどうすればよいのですか、この怨みは、憎しみは、死ぬことでさえ消すことの出来ないというのなら…どうしたら、どうしたら私は救われるのですか…」
男は優しい声音で諭すように語りかける。
「それはこれから見つけるんだよ、君自信で。」
「そんなこと、出来るわけがないでしょう…」
私が否定の言葉を漏らすも、構うことなく男は続ける。
「出来るさ!この先の生涯、それこそ今まで生きてきた期間なんてちっぽけに感じるくらいの時間を君は刻んでいくんだよ?僕はね、君にもう一度生きて、ちゃんと女の子として幸せになって欲しいんだ。」
何が「ちゃんと女の子として」だ、何が「幸せになって欲しい」だ私が本当に苦しかった時は何もしてくれなかったくせに、やっと救われる筈だったのに、それを訳のわからない身勝手な理由で無茶苦茶にされて、なんて迷惑な神様なんだ。
本当、本当にどうしてこんなに私を期待させるんだ。
「プランも少し考えてあるんだけどね!まずはJKになってもらおうと思ってるんだ♪」
「じぇ、じぇいけぇ…?とは何なのですか?」
「ふふふ、それはねぇ~この現世で今最も楽しくて華やかな生き物の名前だよ!」
「そんな華やかな生き物に私はなれるのでしょうか…」
これまで華やかさなんで微塵も持ち合わせてなかった私だ、きっとぎこちなくなって、失敗してしまうかもしれない。期待と不安で頭がいっぱいになっていく。
「そりゃぁもうとびっきり華やかな世界一可愛いJKになるさ!この僕が保証する!だからさ、もう一度だけでいい、頑張って生きてみてよ。」
こうも晴々とした表情をされてしまうと、少し困る。
「か、神様に保証されてしまっては、しょうがないですね…」
期待に胸が高鳴って、なんだか変な感じだ。
きっと私の顔は今凄く変な顔になっているだろう。
「よしっ決まりだね!安心してよ、絶対に後悔なんてさせないからさ!さてと、可愛いヒロインには必ずヒーロー居るものさ、いいヒーローが現れるといいけれど…」
神様はの言っていること時々よくわからないけれど、それがなんだか愉快な企みをしていることは何となく解った。
救われる。
私はこれから救われるのだ。
その“これから”が何時になるのかはわからないけれど、何時か必ず訪れるその日まで、私は楽しく生きようと誓いをたてました。
だから私はまだ、救われていないのです。
どうも皆さんおはこんばにわ七月ねもですよろしくお願いします、初投稿です。まずは読者の皆様読んで頂き本当にありがとうございます!!
初めて小説を書いたんですが思いの外楽しくてつい夢中になっちゃいました笑
小説の勉強なんてしたことないので文章とかほんと拙くお見苦しいところは多々あるかとは思いますがそこは小学生が作った作文を読んでいる程度に捉えてもらって寛大な心で御容赦下さいお願いします何でもしますから(なんでもするとは言ってない)御意見、アドバイスなどしていただけると幸いです。
ところで私は現実世界では高校生を生業としているのですが、その授業中の猛想の物語を綴っているという感じです笑、このサイトを教えてくれた友人には感謝しています。
今回はこの物語のヒロインのお話でしたまだ名前も出していませんが笑、まぁかの有名なあの御方です、次回で主人公共々出てきますので是非よろしくお願いします。
では、次の作品でまたお会いできることを願っています。