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根暗先輩はお気に入り  作者: 西京 李多呂
7/9

7:自覚

 衝撃的な朝の出来事からの平凡な1日はびっくりするぐらい時間が経つのが早くて、もう今日最後の授業も終わりそうなとき。私と言えばそれはもう新しく出来た、私にはもったいないくらいに美人な恋人のことで頭がいっぱいだった。

 と言っても正直どこここでデートする、だとか一緒に何をするだとかいう甘いことはほとんど思いつかず、ただただあるのは同性愛や人種の違い(ギャルと根暗オタク)をどう乗り越えたら良いのだろうかなんていう未来への不安ばかりである。

 

 帰りの短いホームルームも終わり、さて帰ろうと鞄を持つと、外から教室の扉が開かれた。ああ篠宮さんか、今日も一緒に帰るのかな。昼休みは私が委員会の仕事でいなかったから会うのは朝以来か。恋人と一緒に帰るなんてリア充なイベント、私なんかが経験しちゃってもいいのかなあ。そこでふと思う。

 あ……そうか、恋人……なのか……。

 ……どうしよう、なんか急に恥ずかしくなってきたな。私昨日はどんな顔して篠宮さんを見てたっけ。どんな口調でどんな話をしてた……?

 どうしようどうしよう、どうしたら良いのかわからな……くなった私は今、篠宮さんに気づかれないように教室を抜け出し、近くのトイレの個室に逃げ込んでいるのだ。

 教室を出たとき、篠宮さんが「あれ、幸村先輩またいないのかな、なあんだ……トイレ行って帰ろ」なんて言っていたのが聞こえたはずなのに……。


 案の定トイレに人が一人入ってくる音。すると遅れてもう一人入ってきて……?

「あ! 茉莉(まり)じゃーん! やっほ~」

「お、ういす~」

 篠宮さんのお友達だったか。“一緒にトイレ”は百合の代名詞だよな。素晴らしい。なんてことを呑気に考えながら聞き耳を立てていると。


「ねえ茉莉さぁ、最近地味な黒髪の先輩と一緒にいることない? 昨日は遊ぶ約束無視してそいつと一緒に帰っちゃうし~。今日だってホームルーム終わった瞬間教室飛び出してくし。顔は……まぁまぁ可愛いと思うけどなんかダサいし暗そうだし楽しくなさそw あ、おもちゃ? ウケるんだけど~」

「あぁw 確かに暗いよ! たまに何言ってんのかわかんないしw」


 ひええ……ギャルは怖いなあ。まあそっか……普通に考えて本気なわけないじゃん。初めて会って2日しか経ってない、女子校でもないのに好きだなんて。私が百合豚だから騙されちゃったんだ。はあ、おっかし……

 ああ何でだろう。涙止まらないじゃん……。会って2日の人を本気で好きになっちゃったんだ。


「……でもさ」

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