5:注目
翌日、登校した私が一番に感じたのは人の視線だ。これだけ言うと自意識過剰なようだが、髪を切って視界がかなり明瞭になったぶん、色々なものがしっかり見えるようになってしまった。見えすぎるくらいだ。なので、さっきからチラチラとこちらを見る人が多数確認できる。
すごいな……一般人はこんな状況に耐えながら生活しているのか。私といったらもう膝が震えて歩けなくなりそうだよ。はは……。
なんとか教室までたどり着いて扉を開けると、こちらを見やった途端にざわめく。いやいやおかしいな、さすがに聴力はいつもと同じだぞ。
内心異世界にでも召喚されてしまったレベルで動揺していた私だが、あくまで平静を装っていつもの席についた。
するとこちらに近づいてくる女子生徒が2人。
あ……もしかして「髪切ったね!」とか言ってくれるのだろうか。な、なんて返そう……。漫画とかだと「短いほうが好きって言ってたから……///」いやいや絶対違うだろう。本当に私の頭はびっくりするぐらい百合でいっぱいだな。いかん、百合展開にならないような返答が思いつかな
「あの……クラス、間違えてると思いますよ」
ええええええ!? 嘘だろう……あなた達絶対同じクラスだぞ。新手のイジメなのかな、つらい。
そんなわけで入れ歯を失ったお年寄りのように口をもごもごさせてどもっていると、横から真夏のように活気に満ちた声が聞こえてきた。
「幸村せんぱーい! います? あっ、おはようございまーす!」
「わっ」
篠宮さんが昨日と同じように派手に巻かれた茶髪を揺らしながら教室へ入ってきたかと思うとそのまま後ろから抱きつかれた。女の子特有のスキンシップというやつである。遠目に見てはニヤニヤしていたものだが、実際やられてみると中々恥ずかしい。大きい胸が後頭部に当たっているし。
目の前にいる2人もなんだか目を丸くして驚いているし。いやいや、あなた達こそ毎日のようにしていることでしょうに。
「ええ? 嘘、えっ、幸村さんなの? えっ? あ、ごめんなさい!」
「髪、切ったんだ。ちょっと雰囲気変わったね。いいと思う」
「ほら、ユウ! 行くよ! ほんとにごめんね! なんでもないの~!」
あ、もしかして人違いしてただけだったのかな。恥ずかしいよな、わかるよ。
色々おかしなところだらけだったが最終的には指摘してもらえて、少し嬉しかった。
それと実は先程の2人、お母さんっぽい彼女が一緒にいた天然クールな彼女に世話を焼く様子が非常に微笑ましい(紳士的表現)ために、時々観察していたのだ。近くで見られて満足である。
「ちょっとどころじゃないと思うんだけどなあ……やっぱり先輩かわいい♡」
「な、なな何を言っているのかな……」
「なんか嬉しそうにしちゃって。面白くないです」
顔全体で「拗ねてます!」と言っているような感じが犬みたいでなんだか可愛いな、とか思ってしまった。猫派だけど。
―――でも……、こんなに懐かれたら百合豚な私のことだ、嫌でも勘違いしちゃうじゃないか。
「……ねえ、篠宮さんはさ……私のことが、す、好きだったりするの?」
「えっ……」