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洞窟の秘密 〜佐久間警部の飛躍〜  作者: 佐久間元三
熊本へ
7/13

三条春名

 眩しい太陽が、降り注ぐ。


 暑さと湿気が、関東と違い身体にまとわりつく。


 さすが、九州といったところか。


 ここでも、捜査協力を依頼した熊本県警察熊本署の若宮刑事が出迎えてくれた。


「お二人のことは、浜松署の風岡さんから聞いてますばい。三条春名の居場所は抑えてあるけ、すぐ案内しますけん」


「おそれいります」


 佐久間は、深々と頭を下げた。


 三条春名は、上熊本駅の近くに住んでいるという。


「熊本空港から、上熊本駅まで車でどの位掛かるんですか?」


「九十分くらい掛かるとです。阿蘇山の脇を走るばってん、観光ば楽しんで良かです」


「ありがとうございます。三条春名について何か心当たりはありますか?」


「逮捕歴等は、何もなかばってん、あまり進展がないっちゃよ。ただ、三カ月に一度は東京と熊本を行き来ば、しとるばい」


「そうですか。とすれば美樹と春名は頻繁に接触していることも考えられる。二人で共謀し、田中和恵を呼び出し、楠木を利用して亡き者としたのではないか疑ってしまうな」


 上熊本駅付近に差し掛かった時、目の前に大きなホテルが見えた。


「上熊本に、品川プリンスホテルみたいなものがあるんですか?」


 若宮刑事は、大笑いした。


「あれは、ホテルじゃなか。崇城大学ばい」


「崇城大学?」


「前の呼び名は熊本工業大学だったとです。変わった学校たい。斜めに上下するエレベーターやリニアモーターの研究も有名な学校たい」


「そうですか。この近くに三条春名が?」


「もう着くばい」


 川沿いのアトリエ兼窯場小屋に、小柄な女性がモノづくりに作業していた。


(あれが、三条春名か?)


「三条春名さんですか?」


「・・・・そうですが」


「私は警視庁捜査一課の佐久間と申します。

こちらは、同じ捜査一課の山川刑事と熊本署若宮刑事です。田中和恵さんの件で少しお話を伺いたく来た次第です。捜査にご協力願いませんか?」


 三条は、佐久間達を見ても、全く物怖じ

しなかった。


 どうやら、大介からでも電話があったのだろう。


「刑事さん達が、こんな田舎まで来るということは、どうしても、美樹の居場所が知りたい訳ね。でもさ、いい加減あの子をそっとしてあげてくれないかな」


「・・・・?」


「彼女、どうかしたのかな?」


 佐久間と山川が、首をかしげる。


「・・・・?」


「あの子を保護するために、聞きに来たのではないの?」


「いや、美樹さんは東京が住まいというのを田中和恵さんのご主人から伺いましたが、貴方しか居場所を知らないと言われまして。田中和恵さんが、亡くなったことを、ご存知ですよね?」


「・・・話が全く見えません。・・・亡くなった?・・・和恵が!いつですか?」


「四日程前のことです」


「・・・・そうですか。和恵が」


 三条春名は、やりかけていた作業を止めて空を見上げた。


「先程、保護とか?申し訳ないが、事情を聞かせて頂けませんか?」


 春名は、ホッとしたのか、話始めた。


「あの子ね。何年も男にDV受けててさ、よく警察に保護されていたのね?原因はプライバシーに関わるから、私の口から言えないけれど」


「我々警視庁に保護された履歴がある?」


「昔、私と美樹、死んだ和恵の三人は友人だった。大介の馬鹿のせいで、バラバラになったんだけれどね」


「馬鹿は、思っても言ってはいかんばい」


「はいはい。まあ私は、大介なんかよりむしろ。ううん。何でもない。とにかく、和恵はいなくなり、やっとDV夫からも逃げ切った美樹を、出来れば、そっとしてあげて欲しいの」


「居場所を探すなということか?」


 山川は、少し険しい表情で、春名を見る。


 三条春名も山川の睨みに全く怯まない。


「彼女は何もしてないわ。和恵が勝手に会いに行って、事故にでも巻き込まれたんでしょう。自業自得じゃない。東京になんか行くからよ。美樹は何にも知らないわ」


 佐久間は、山川を制止し、改めて三条春名に尋ねてみた。


「あなたと田中和恵の間で何があったのか少しだけでも、教えて頂けませんか?それと、美樹さんの居場所もです」


 三条春名は、しばらく考えて答えた。


「黙秘いたします。別に私も美樹も何も関わっていないし、和恵が亡くなっただけ。捜査に協力しなくても自由でしょ?」


「なにぃ〜?」


「山さん、やめるんだ!」


「わかりました。三条春名さん。不快な思いにさせた事、申し訳ありません。また改めて伺います。その節は、何卒、捜査にご協力ください」


 佐久間は、頭を下げた。


 それを見た三条春名は、こう告げた。


「今度は、佐久間さん一人で来る事ね。そしたら、私も口を開くかも知れないわ」


「わかりました。では、また」


 こうして、佐久間たちは三条春名のアトリエを後にした。


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