被害者の素性
警視庁捜査本部は、佐久間が戻った十五時ちょうどに設置された。
ホワイトボードに、被害者女性の顔写真が貼られ佐久間が戻るまでの間、静岡県警経由で入手した情報が書かれた。
○被害者 田中和恵、四十歳
○既婚で三児の母、通院歴・逮捕歴なし
○夫 田中大介、四十歳
○子供 二十歳の長女、十八歳の長男
十六歳の次女
○住所 静岡県浜松市北区○○番地
戸建てに住む、普通の家庭
○夫は、県立浜北西高校の化学教師
被害者は、スーパーで働く共稼ぎ主婦
○静岡県の浜松駅から東京まで、新幹線で
上京した記録が、緑の窓口に記録あり
○昨日、上京してから、本日までの
足取りは不明
二十一時を回った時、山川刑事が警察病院から帰ってきた。
「司法解剖結果は、青酸カリによる中毒死です。ご主人から詳しく事情を聞きました。東京で急に昔の友人と会うからと、朝早く出たそうです。ただ、外泊予定はなく、日帰りの予定だったらしく、日が変わっても連絡がないため、家族は心配していたようです」
「ご主人のアリバイはどうですか?」
「ご主人のアリバイ通り、浜北西高校で一日中、教鞭をとっていた話を学年主任より確認しました。また子どもたちも、それぞれアリバイの裏は取れております」
「被害者は、急に東京の友人に会いに行くと言って東京ではなく、何故か成田近くで殺された。山さん、ご主人は友人について何か知っている様子でしたか?」
「いえ、特に友人の名前は聞かなかったと」
「東京のどこで会うのかも?」
「はい。朝早く、近所にお使いに行く感覚で出たらしく、大した荷物も持たなかったようです」
「本来なら東京のどこかで会うだけのはずが家族に連絡も入れず、外泊をしてまで成田に来なければ、ならない予定が出来たのか、お参りに立ち寄っただけなのか、足取りを早速洗ってみる必要があるね」
「みんな、我々と千葉県警察本部で手分けして、田中和恵の足取りを捜査する。手ぶらで上京して、家族にも秘密にして外泊するには何かやましい訳でもあるのかもしれない。ホテル周辺や繁華街など東京駅や上野駅など山手線圏内から、聞き込みを開始してくれ」
「はい。わかりました!」