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共通 0章 美しき星

この世界では魔力の高いものを上等なる“ハイ”ないものを下等なる“ロー”と呼ぶ。

私達は大地に魔力があることが当たり前の宇宙空間にある星に住むからだ。


『ねえ知ってる?緑のことをアテラスでは青と言うんだよ』


空が青くて、幼い頃に屋敷に遊びに来ていた幼馴染みで初恋のエレネイドを思い出した。

今日でかれこれ10年になるとしんみりする。


~第零章:合コンの誘い~


「くれぐれもみなさん三年生で無事に卒業し、四年生にならないことを―――」


相変わらず副学園長のファルドナンドの朝礼は長いなあ。と、あくびをかきそうになるのを耐える。


「はあ……」

朝礼のあとすぐに授業が始まるが、なんだかやる気がでなくて、窓から青い空を眺めることにした。


「ねえお願いレライ!」


休み時間早々、クラスメイトのβ<ベータ>子が現れて私の前で手をパンとはたく。


「いきなりどうしたの?」

まずは内容を話してくれないと返事ができない。

「実は……」

―――


「はあ……」

「ぴ?」

契約モンスターのリーゲに餌をあげながら、ため息をつく。


「どうしようかなほんと」

クラスメイトに懇願され、明日やる合コンの数合わせとして参加することになった。

どうやら私は頼まれると断れないタイプらしい。


「どうしたんです姉上」

「陽尽<ひづき>」


宇宙管理者<プラネター>をやっている二歳下の腹違いの弟。こんなところで会うなんて気まずいわ。

しかも父親を向こうの家に持っていかれているのだし―――


「そうだわラウルは元気にしている?」


同じく腹違いの弟で、同じ学園に通う一つ下の弟。学年が違うから滅多に会わないし、不良生徒と言われている子。


「この前会ったときは元気でした」

「そう、じゃあね」


陽月と別れまっすぐ屋敷に帰ることにする。


「あ……」


合コンの約束があったことをうっかり忘れていた。

あまり気乗りしないため、どうでもよかったからかもしれない。


「あ、あれってレライ=コルビパンじゃねー?」


向こうの生徒から指をさされたのに気がつき、この場から早歩きで異動する。


私の父方の祖父は偉大なる魔導師。元サンドラマ国王で神の使者(ドゥルグル)の血をひいている。

だから私と知り合いでなくても名を知らない生徒はいないだろう。


私がきまって言われるのが、ヴィサナス星人のくせに成績がいいというランク下位者からの僻み。

ヴィサナス星では顔の美しさがすべてなので罪人であれ庶民であれ咎められない。

だから周りからバカに見られる傾向がある。

だが父の母にあたる祖母はマキュス星人。知能至上制度の民の遺伝は私が筆記テストで毎度三位をキープできている要因とも言える。

プライドが誰より高い成績になる原動力で、その素養も遺伝した。

しかし、魔力最強とされた祖父の遺伝はなかったらしい。


合コン当日になり、私はβ子たちのいるカラオケボックスに入ることに。


ドアに手をかけると、手が触れた。


「あ」


挿絵(By みてみん)


赤に近いピンクの髪、恐らく好戦的と言われるマージルクス星人だ。


「ごめんなさい!」


怖いし謝っておこう。


「なんで謝るんだい?むしろ君のような美人の手に、偶然とはいえ触れられてラッキーだったよ」


あれ、意外とそうでもないみたいだ。周りのマージルクス星人はよくマキュス星人と喧嘩しているし、口ベタで軍人気質、

彼みたいな軟派なのもいるんだと驚く。


「入らないの?」

「え、入るけど」

「こっちこっちー」


メンツを見渡してみると―――


「ラウル……!?」


まさか昨日話題に出した彼がいるなんて。それとなんだかどこかで見たような顔もいるし。


「イスガミまで……」

「俺を知ってるたぁ、アンタ俺に惚れてるな?」


彼は隣のクラスだが、友人がいるみたいで、よくこちらのクラスによくくる。


「違うから」

「まさかこんなところで会うとはな」


いきなりラウルに話しかけられた。うわーなんだろう!

腹違いの弟という気まずさと、合コンで知り合いに会う気まずさがある。

とにかくただ座っているだけでいいわね。落ち着くのよ私。

見事に置物と化していた私は、タイミングを見計らい、ささっと合コンをバックレた。


ラウルは祖父の遺伝か、生まれつき封じられないほどの魔力が備わっていた。

それは学園で一番高いとさえ言われているくらいだ。

しかし彼の母の出身地であるテラネスは特殊で、彼は学園長が迎えにくるまで屋敷に幽閉され魔力を禁じられていた。

あの星で発展しているのは科学、さて機械に魔力を近づけると悪影響をきたすからである。

幼稚舎から通っていた私は幼い頃から影でローのレライと揶揄されてきた。


―――弟とは生まれる星を間違えたとしか考えられない。



●世界で二番目に嫌いな男


「明日から夏休みです。





くれぐれも実験中に爆発を起こさぬように節度ある休日を過ごしましょう」


今日から夏休み、魔法学園も休みなので、実家の屋敷で優雅なお茶を―――――


ピンポーン。なに、約束もなしにたずねるなんて不躾な客人ね。


「ああもうしつこい!」


屋敷のベルを何度も何度も鳴らす不届き者の顔を拝んでやろうじゃない。


「おはようレライ」

「レムル=クラール!?」


婿入りしておきながら母の実家の資金を研究費に散々注ぎ込んだサイテードクサれ野郎の父フレデリックの友人。

それに生前、母と浮き名を長しておきながら葬儀にすら顔を見せなかったのに、今さらなんの用があるというのだろう。


「用意は済んだ。フレデリックの変わりにはなれないが、俺と一緒に暮らさないか?」


なにを言うのだろうか、生まれた頃から父はいなかったと思っている。

第一私達を捨てたのはあいつなのに、なぜレムルが口を挟むのだろう。


「ふざけないで!」


私が追い出すと、彼は去り際に呟いた。


「―――レライ、お前はいつか私の元にくるだろう」


挿絵(By みてみん)



―――奴が去って屋敷の中は静まる。荒れた庭で優雅とはほど遠いアスタヌーン?


「はあ……」


もうすぐ屋敷の貯金が底を尽きそう。

プリマジェール魔法学園は通っている大貴族や王たちの寄付で学費は無料、だけどこれからが大変。

2年の没落令嬢アクアルナのように没落して砂を食べる生活は嫌だ。

なんとかして資金を集めなければならない。


学園ではバイトを禁止されているため、公には働けない。

硫酸の雨漏りがそろそろ不味いので、このままでは屋敷の維持が難しい。

だからといってレムルに頼るなんてしたくない。


――――そうだわ、副学園長のファルドナンド=イエローケイクに交渉してみよう。

私はさっそく学園へ向かう。ラーマは急げ、一日一錠にしてならずというし。


公共転送装置があればドゥーブルフロマージェ星の首都であるフランポーネにひとっとびだ。


「おや、君は……」


挿絵(By みてみん)


丁度いいタイミングでファルドナンドがいた。


「レライ=コルビパンです」

「――ああ、たしか公爵は王弟と聞いたことがある」


「ええ……」


彼はプライドの高いウィラネス星人だったことを思い出す。

レムルとはまた違った方向で厄介な男だ。


手短に事情を説明してバイトの許可をすんなりくれるようなタイプには見えない。

まあダメ元でたずねてみないことには話が進まないが。

一応許可を貰えないか聞いてみる。余計な身の上話などしても時間の無駄なのでシンプルに金がないとだけ話す。


「なるほど、そういった事情があるならしても構わないよ」

「え」


案外簡単に許可が得られ、拍子抜けした。


「遊ぶ金がほしいとかでバイト学業を疎かにされると困るから、なるべく控えるように注意しているだけで

別にバイトを厳重に禁じているわけではないんだ」


「そうだったんですか……」

「ファルドナンド先生、学園長がお呼びです」


「ああ……ではこれで」

「ありがとうございました。失礼します」



よーしバイトをやるぞー金じゃんじゃん稼ぐぞー。


―――で、バイトってなにをやればいいのだろう。

ギリギリになるまで屋敷で悠々自適な貴族生活をしていた私にできる仕事なんてあるの?


というか仕事ってどうやってもらうの?

映画ではレストランにいって住み込みで働かせてくれ!!と若者が厨房で皿洗いをやり最終的には自分の店を手に入れる。


私にシェフは向いていないというか、私が皿洗いをとったら将来のシェフ候補の邪魔になる。


私は仮にも魔法学園の生徒なんだから、無難に魔法使いの弟子にでもなって薬草摘みのバイトでもしようかと思ったけど、その魔法使いの未来の弟子の場所を奪ったらだめだ。


――――それに私魔法使えないんだったわ。私にできること……特技なんて筆記テストくらいしかなかった。


二年のアクアルナやアスリルは筆記テストの成績表でめちゃくちゃ下にいるのにいつのまにか魔法が強くなっていると聞く。


筆記テストができたからって仕事ができるわけじゃないし、魔法が使えないとこの世界では生き辛い。



『お前は絶対俺の元にくる』


―――だからといって、レムルの世話になるのだけは絶対に嫌だ。

私がヴィサナス星人でなければ金持ちとの結婚で屋敷はなんとかなっただろう。


ヴィサナス星の規律では容姿が判定器の基準より美しくなければ追放、他の星からも、それに満たない容姿の相手だった場合は結婚出来ない。

もしも規律を見出し、駆け落ちでもしようものなら貴族であろうと例外なくこの星の下半分を牛耳るウラナイナ星人によっていつの間にか殺処分されるらしい。

ちなみに駆け落ち成功者は一人もいないらしい。


―――この星の民すら美しさを維持するのに必死なのだ。

他の星に美形で金持ちがそうそういるわけない。

この星は他の星に美形がいる場合は拐ってしまうことあると聞く。

つまり条件に合う者は狩り尽くされた事だろう。

極論を言えば屋敷など捨ててしまえばいいことだろう。

生粋のヴィサナス星人であればプライドはない。美しさががすべて、顔が良ければ貴賤はないからだ。

しかしどうにも私はプライドが高い気質がある。

そういう気質と違うのは父フレミアンドが高潔と名高いウィラネス星人で、それが影響したからだろう。

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