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フタリデヒトリ  作者: 電神蒼成
9/19

出る杭は打たれる

私は母親に頼んで部屋を見せてもらった。特に不自然な点はない。幼い容姿の彼女らしいかわいい部屋だった。壁紙はピンク一色でベッドの上にはいくつもの熊の人形が飾られていた。部屋の隅には大きめな姿見が置かれていた。本棚の本は大きさを揃えてキチンと整頓されていたし、学校の教科書も綺麗に並べられていた。相当帰途油面な性格だったらしい。

 美喜の部屋に案内されてからわかったことだが、部屋から外へ出るためには、一度リビングを通らなければならない。あの日、リビングのキッチンで料理をしていた母親にバレないように外出することは難しい。


(あとはこの窓くらいだけど…)


美喜が消えた時、鍵が閉まっていたことは美喜の母親が確認している。レバーを引き上げて閉め、つまみ部分を上げてロックをかけるタイプの一般的な鍵だ。この窓も不自然な点は無く、外から鍵をかけることはおそらく不可能だろう。

改めて部屋を見渡すと机の上に写真があるのを見つけた。集合写真だった。真ん中に賞状を持った美喜の姿を見つける。だが私はその写真に感じた違和感を無視することはできなかった。笑っていないのだ。美喜だけでなく、周りに写っているチームメイトが一人として笑っていなかった。優勝という賞状を持っているにも関わらず、みんな暗い顔をしていた。


「親の私が言うのも何だけど、あの子のバスケの実力はかなりものだと思うわ」


後ろから声をかけられたので振り向くと、気を取り直した美喜の母親が扉の横に立っていた。


「それ故に周りの人は良く思ってなくてね。醜い嫉妬だわ。その写真の時の大会、ほとんどあの子の実力で優勝したようなものだわ」


 出る杭は打たれる、ということか。どこの業界でも同じだな。

しかしわからない。そんな経験をしてもなお、バスケを続けるほど好きなのにそんな彼女がバスケを放って失踪などするだろうか。それに苦労してスポーツ推薦という狭き門を潜り抜けて、さぁこれからだという時に失踪なんておかしくはないか。これは失踪というよりも、消失として原因を探ったほうがよさそうだ。

 私はこの時、父が殺された夜のことを考えていた。あの時、父を殺したフードの男もベランダから飛び降りて同じように姿を消した。


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