対照的な親子
Bクラスの教室に入ると見覚えのある顔が近づいてきた。
「よう、お前の頭でよくここに入学できたな」
顔を見るなり失礼なことを言う男は幼馴染の寺本涼
「久しぶりに顔合わせたっていうのに失礼な奴だね」
「何言ってんだよ。中学までは酷い成績だったくせに」
「私だってそれなりに勉強したのよ」
「まぁ無事に入学できてよかったな」
「そりゃどうも」
適当にあしらって席に着く。
「…彼氏か?」
「え? ないない。あれはない。ただの幼馴染だよ」
「結構可愛い顔だと思うぜ」
「見ていたでしょ。あんな失礼な奴は付き合ったって苦労するだけだよ」
「まぁ確かに彼氏ってよりはペットみたいな感じだしな」
それからタイプの男性の話やクラスのことなど話していると担任の教師が入ってきて入学説明会が始まった。
「静かにしろよー。面倒だがホームルーム始めるぞ。俺の名前は沢口武司だ。お前ら、一年間絶対に問題起こすんじゃねーぞ。上から怒られるのは俺だからな」
ずいぶんと変わった挨拶だ。初対面の、しかも教師の発言とは思えないぶっきらぼうな言い方に私は少しムッとするがこういう人は嫌いじゃない。
ちょっと変わった人だねと友美に言おうと振り向くと友美は沢口先生を指さして口をパクパクさせていた。
「どうしたの?」
そう聞いても返事は返ってこない。代わりに勢いよく立ち上り、彼女の透き通るような声を教室全体に響き渡らせた。
「なんでここにいるんだよ、親父!」
その発言にクラスがざわめく。改めて沢口先生と友美を見比べてみる。確かに目や口は似ているかもしれない。だが友美のハツラツとした性格とは似ても似つかない。纏うオーラが違う。友美は黄色やオレンジっぽいオーラに比べ、沢口先生は紫や黒といったところだろう。
「沢口、ホームルーム妨害の容疑で現行犯逮捕だ。後で職員室に来い」
「質問に答えろよ。なんでここにいるんだ」
「なんでもなにも、お前らの担任だからだ。これ以上騒ぐなら教室から出て行ってもらうぞ」
沢口先生にそう言われ渋々座る友美。まぁでも友美の気持ちもわからなくはない。私だって自分の親が同じ学校にいるだけでも嫌なのに、さらに担任までとなると叫びたくもなる。
同情を込めて友美を見ると友美はまるで世界の終わりと言わんばかりの顔をしてうつむいていた。
「ま、まぁこういうこともあるよ」
「あいつは…」
友美のただならぬ雰囲気に背中が少し寒くなる。
「あいつは、ここにいちゃいけないんだ…」