ぶつかった少女の名は
長くて退屈な入学式がやっと終わって私はクラス発表がされているという職員室へと向かっていた。近づくにつれて人が増えていき、職員室の前には人がひしめき合っていた。
「これはしばらく見られそうにないなぁ…」
そう思い少し離れたところで人が少なくなるまで時間をつぶすことにした。同じことを考える人が十人ほど集まっていた。その中に今朝ぶつかった美人がいた。
「よっ、さっきぶり」
と手を挙げて私に挨拶する。
「やっと自己紹介できるな。私は沢口友美。今朝は悪かったな。」
「私は相田凛。お互い間に合ってよかったね」
「おかげさまでな。凛はもう友達で来たのか?」
「友達って言っていいのかわからないけど西田さんって人となら少し話したよ」
「西田って西田美喜のことか?」
「うん。有名な人なの?」
「何言ってんだよ。お前入学式寝てたんじゃねぇの?」
「うっ…そんなことないよ! ちょっとボーっとしてて見逃しただけで…」
図星である。
「ふ~ん、まぁいいや。あいつさ、今年のスポーツ推薦枠なんだって」
「推薦なら他にも沢山いるんじゃないの?」
「……」
「…………?」
「この学校に来るときに事前に調べたりはしなかったのか?」
彼女の話によると、この学校は一般入試ではそれほどレベルは高くない。推薦もどこの学校にもありそうなものばかりだが、スポーツ推薦だけは別で、毎年スポーツ推薦で入ってくるのは、全国でも通用するほどの能力の持ち主だけのようで、運動部ではかなり有名な学校らしい。もちろん推薦を受け入れてもらえなかった人の中にも優秀な人がいる。そういう人たちは一般入試で入学して部活に参加し、各大会で名を挙げていくらしい。運動部にとってココの学校の名前はステータスになる。数多くいる優秀な選手が切り落とされる狭き門を潜り抜けたのが西田美喜だというのだ。
「あの人そんなにすごい人だったんだ…」
「それだけでも驚きだが、一番驚くのはあいつがバスケの選手ってことだな」
「バスケ!?」
「な? すげぇだろ。あんなちっこい奴がバスケの超有力選手なんだぜ」
美喜の驚きの事実を聞いている間に職員室は人がまばらになっていた。
「お、私と凛は同じBクラスらしいぞ」
「ほんとだ。知り合いがいて安心したよ…」
「だな。私もまともに話したのは凛だけだからな」
「これからよろしくね。沢口さん」
「気持ち悪い呼び方すんなよ。友美でいいって」
「じゃあ友美、改めてよろしくね」
「おう、楽しい一年にしようぜ」