新たな出会い
私は全力で坂道を走り抜けていた。入学式に遅刻なんて笑えない。確実に友達の輪に入りそびれる。楽しみにしていた高校生活が「ぼっち」スタートなんて悲しすぎる。それだけは何としてでも阻止しなければならない。幸い走ればまだ間に合う。天が私に味方してくれているのか信号機にも一度も引っかからなかった。そう確信した矢先のことだった。
曲がり角で人とぶつかってしまった。
かなりの勢いだったので二人とも吹き飛んだ。
「痛てて…あ! す、すみません! 大丈夫ですか?」
私は急いで立ち上がった。ぶつかった勢いでめくれたのか相手の黒の下着が露わになっているが本人は気づいていなかった。見ているこちらが恥ずかしくなり赤面しながらも私は手を差し伸べた。
「あぁ、いや。こっちこそ悪かったよ。急いでいたものでさ。あんたも怪我はないか?」
ぶつかったのは私と同じ高校の制服に身を包んだ、背の高い茶髪ポニーテールの少女。女の私から見てもかなりの美人さんだ。
「ううん、大丈夫」
少女は「そっか」とだけ言うと差し出した私の手をつかんで起き上がった。
「せっかくだし自己紹介を、と言いたいところだけどお互いこの時間にココにいるってことは先を急いだほうがよさそうだな」
「あ、そうだった! 入学式なのに遅刻しちゃう!」
「走るぞ!」
「は、はいっ!」
二人は全力失踪した。スカートで走っているものだから見えそうになるものの、そんなことにかまっている暇はない。これからのボッチ生活と比べたら見られるくらいどうってことない。
やっとの思いで学校にたどり着いた。集合時刻の三分前だった。
「ぶつかって悪かったな。 また見かけたら声かけてくれよ。」
「うん、またね。」
そう言って別れ、私は教室へ向かった。
教室へ入ると、早速いくつかのグループができていた。
「はじめましてー、私は西田美喜っていうのー」
そう声をかけてくるのはショートヘアの小柄な女の子。制服を着ていなければ同じ高校生とは思え
ないほど幼く見えた。
「ど、どうも…相田凛です…」
「まぁ今ここで自己紹介しても同じクラスになれるかわからないけどねー」
と手を後ろで組んでえへへと笑う。
「えっと、西田さん。今この教室にいる人たちが同じクラスの子じゃないの?」
「美喜でいいよー。なんかねー、AクラスからEクラスまであってー、入学試験の成績順にとりあえずわけてー、入学式の後に成績が偏らないように分けるんだってー」
「なんでそんな二度手間を?」
「最初に友達をある程度作らせてー、クラス替えした時でも他クラスに友達がいればー、閉塞的な交友関係にならないじゃないー? 簡単に言っちゃえば友達たくさん作りましょうってことー」
「納得いくような、いかないような…」
そんなことを話している間に移動時間になった。
「新入生の皆さんは、ホールへ移動してください。間もなく入学式が始まります」
全校放送で移動するよう伝えられる。
「それじゃーまたねー」
そういってパタパタと走っていた。
「可愛い子だなぁ。さっきぶつかった人も綺麗な人だったし、よく見てみればこのクラスも可愛い子ばっかりだ…」
唐突に場違いな気がしてきた。
「私もそろそろ移動するか…」