いや確かに勇者よりも魔王が好きだけどさ……これはあんまりじゃないか?
同じく短編から移動。盛大な加筆修正あり。
目を覚ますと、白い空間で宙に浮いていた。
「……はい?」
え、ちょっと待って。何コレヤバい。とりあえず落ち着こう。
まず俺の名前はこ 『仁君~!』 誰だ邪魔したのは。
声の方をみると、白髪・紫目で白いワンピースを着たとても可愛らしい少女と、白髪・緑目で白いスーツを着た超イケメンがいた。イケメン爆ぜろ。
『はじめまして、紅磨 仁君。ボクはマエストロです』
『俺はオーケストラだ』
……音楽の巨匠? 管弦楽団? なんのこっちゃ。
『ああ、そうか。忘れてた。そうだな……"私たちは創造神です"って言った方がいいかな』
……はい? このひ 『人じゃなくて神だよ』 ……あ 『頭湧いてないし、厨二病でもないからな』 ……悉く心を読まれるな。
『仮にも神だからね……ボクはもとは人間だけど』
今聞き捨てならないことをおっしゃりませんでしたか? この……女神様?
『ちなみに言っておくけど。ボク、男だからね』
……え゛。
『だーかーらー、ボクは男なの』
『俺は女だからな』
…………えーと……。
「え゛ええぇぇぇぇ!?」
☆ ☆ ☆
『大丈夫ー?』
……なんとか理解した。でもなんで 『女装は単なる趣味だよ。おかげでかだからかは知らないけど、女神扱いされているんだ』 頼むから全部セリフを言わ 『せないぞ?』 ……もういいや。
「それで、俺に何の用?」
『えっと、テンプレ的展開で悪いんだけど……』
あれ。嫌な予感。
『はい、紅磨 仁君。あなた、死にました』
…マジで?
『あ~〈紅磨 仁。1996年3月9日生まれ。~中略~で、2014年9月15日19時46分38秒に信号無視をしてきた越智急便のトラックにはねられる。病院に運ばれるが、同時刻53分29秒、救急車内にて死亡〉っと。間違いないな』
マジか……は! でもテンプレ的展開なら!
『残念ながら、神のミスとか天使の事故とか、そんなの無いからね』
……マジで?
『ああ。間違いなくお前はあそこで死んだ。はじめから決まっていたんだ』
Oh……あれ。なら何で俺呼ばれたの?
『うん、それなんだけど』
『お前が死ぬことは決定事項だったんだが…』
『幸か不幸か、君が死んだら、異世界転移をすることも決定済みだったんだよね』
えっと、てことは。
『Let’s go to other world! ってことで…OK?』
……よっしゃあぁぁぁ!!
『君達が行くのは、剣も魔法もあるファンタジーな世界……』
マジで!? いよっしゃktk 『になる予定の世界だ』 r……ほわっと?
『単純に言うと、君が行った時点では、まだなぁーんにも存在していないんだ。草も木も、水も土も、人も魔物も、勇者も魔王もね』
えと、どういうこと?
『お前がその世界を創るんだ。他ならぬ、お前自身が』
……俺、神様になるの?
『そうだね。言いえて妙だよ』
『世界自体は存在してるから、創造神とは少し違うんだがな』
『限りなく神に近い天使ってトコかな』
うわぉ。何ソレ、最高。前世にオタク属性が混じっていた俺に、その手の話はエサ以外の何物でもない。
『理解したところで、俗にいうチートのプレゼントなんだけど』
待ってましたぁ!
『チート、いる?』
いや、いるに決まってんじゃん。
『うーんとね、異世界転移をさせろって仕事はもらってるんだけど』
『チートを渡せ、とは言われてねぇんだよ』
……仕事?
『うん。ボクたちは地球の神でもないし、仁君がこれから行こうとしている世界の神でもないんだ』
『本来なら、別世界の事象に干渉できないはずなんだが……』
『『最高神に命令されてね』』
いま、最高神をジジイ呼ばわりしませんでしたか? いやそれより俺、チートなしで異世界転移? 危険すぎ……あ、そうか。まだ何も無いから危険もなにもないんだ。
『生物や種族はボクたちがつくるから、仁君達には世界を繁栄させて欲しいんだ』
『さしあたって、ホレ』
投げてよこされたのは…タブレット端末?
『タブレット端末に、ボクたちの力の一部を組み込ませてあるから』
『表示されている白い球を、適当に区切っていけ。区切り終わったら、ペイントで色をつける。そうして陸や海を創っていくんだ』
『大雑把に、陸は緑、海は青一色でいいよ。深さや高さは勝手に創られるから。変に凝らないでね』
ギクッ。めっちゃカラフルにしようと考えている矢先に忠告された
でも、どんなのにしよう。俺が行く世界だから、モロ俺好みにしていいよな……でも簡単に案なんて出るもんじゃないし……よし。やっぱり慣れてるほうがいいよな。
☆ ☆ ☆
「出来ました」
『どれどれ……君、正気?』
『どうしたんだ? ……ってなんじゃこりゃ』
うわ、失礼。いいじゃん別に
俺が創ったのは、地球を左右に反転させただけの世界。分かりやすくていいと思ったんだけど……。
『う~ん……創造神に何か言われそうだな……』
『面倒臭ぇな。著作権っつー物を考えろよ』
「……え゛、著作権!?」
聞き流しそうになった。そんなのあんの?
『うん。一応世界や星にも必ず名付け親? はいるからね。著作権は存在するんだ。地球の名付け神はもういないけど』
『だから、お前の案(笑)だと誰かしらがいちゃもんつけてくる可能性があんだよ』
人の渾身の作品……でもないんだけど、(笑)は傷つくな。でもマジでか……神様の世界も結構シビアだな。
『……まぁいいや。意地でも受理させるから』
……何モ聞コエナカッタヨー。
『俺もマエストロだけは敵に回したくないからな……』
マジか。見た目によらず腹ぐ 『仁君?』 い芸が出来るんだ、俺! ……スミマセンデシタ。
『……まぁ、世界はこれでいいとして、種族はどうする?』
種族か~人間は当然として、獣人、エルフ、龍人、魔人もいるよなぁ。聖獣人……は獣人の括りにいれるとして、吸血鬼たちも魔人の領域に入るから……これで全部、かな?
『じゃあ、《人族》・《獣人族》・《エルフ族》・《龍人族》・《魔人族》の5種でいいんだな?』
「はい」
『妖精や精霊、魔物や植物は適当に繁栄させとくから安心して。……ってわけで』
『話を戻すが、お前のチートだ』
あ、やっぱりくれるんだ。
『君のチートは……』
チートは?
『【魔神の葬芸品】だよ』
「【魔神の葬芸品】?」
何か物騒な名前。
『ああ。いくつか候補はあるんだが、お前にはこれが一番合うだろう』
確かに地球でも"魔神"って呼ばれてたな。真緒のせいで。……いまだに何でそう呼ばれてたのかは分からないけど。
『簡単に説明すると、[言霊]だよ』
『心や魂を込めて発した言葉に思い通りの効果を付けることができる』
うわぉ。マジチート。
『本当に望んでなかったら効果は出ないから。安心だけど気をつけてね』
「分かった」
『んじゃまあ逝ってこい』
『受理させたから。"天球"って名付けられてるから』
『『第二の人生を』』
「行ってきます!」
『……行ったな』
『さて、もう一人も送らないと』
『……敢えて言わなかったろ? 二人で行くって』
『さあ? 考え過ぎじゃない?』
『…………』
☆ ☆ ☆
俺が創ったこの世界に送られてから20年が過ぎた。良かったよ。転生じゃなくて。羞恥プレイとかマジ勘弁だし。
どうやら、同時に死んだ真緒も送られたらしく、始めに目が覚めた草原に二人仲良く寝ていた。ビビったよ。一人だとばかり思ってたから。俺の方が先に目が覚めたので、バッチリ寝顔とキスを堪能させて頂きましたよ! …え? 両思いですがなにか?
どうやら生き物がいて、好き勝手に暴れ回っていたらしく、その統治や建国など、やるべきことが山程あった。種族の特性や好みから俺たちが(勝手に)一つの島にまとめたり。
俺はチート通りに魔神として生をうけたようだ。いや確かに勇者より魔王が好きだけどさ……これはあんまりじゃないか?魔神ってなんだよ。神じゃねぇか。この世界は信仰する対象だろう神様がいない。…つまり、この世界で神に祈る=俺に祈るってことだ。マジ恥ずい。
ちなみに真緒は魔王だ。チートは【魔王の信行進】。物事や事象の価値を操作するものらしく、人に使うと職業や能力を定めたり奪ったり出来るようだ。手間が無い分俺の方が少しいいものなのかな。
さらに200年ですっかり栄えました。さすがに科学ではなく魔法だったり、和食がなかったりといまだに少し納得は行かないけど、概ね良好なんじゃないだろうか。まあ魔神や魔王になったせいかほとんど食事を摂らなくなったけど。悲鳴や涙や精液が主食ってどうなんだろう。
統治や建国をしたせいか魔神崇拝国がほとんどなのは仕方がないかな。……でも、魔神の名前か"コウ"なのはなぜだ?
現在俺たちは魔人の国(地球でいうとオセアニア州の所)、ラ・オストリア国にいる。真緒が魔王ってのもあるけど、一番居心地がいい。やっぱり魔族なんだなぁ~。
可哀想(他人事)なことに、真緒は魔王の仕事に追われている。他人事なんだけど、イチャつく時間が減っているのは許せないな。よし。次に会った時は手加減はしない。
あ~良かった、良かった。とても良かった。久しぶりに堪能しましたよ。実に一ヶ月振りだったからなあ。激しかったかもしれないけど。ちなみに真緒は寝ている。死んだように眠っている。当たり前か
最近めっきり暇になったので、国を調整しながら冒険者をしている。やっぱり異世界といったらギルドだよね!増えすぎた魔物を狩ってお金が手に入るって最高だね。…でも魔神なせいか、若干抵抗はある。え?人殺し?全く全然抵抗ありませんがなにか?しょっちゅう不法侵入者がいたからね
あまりにも暇すぎて依頼ばっかり受けてたら簡単にランクって上がるもんだね。採集・討伐・護衛とか片っ端から受けてたら1ヶ月でSランクだよ。ギルドランクは F~S までだから、最高だね。まあ、最強と言われている黒龍と友達なせいか、黒龍の鱗を見せるだけで上がるんだから。人間の育て方間違えたかな~。
それから18年、依頼を受けたり真緒とヤったり国王暗殺したり国滅ぼしたりとまあ色々やったんだけど、ふと違和感を感じた。
勇者が召喚された。
ああ、歴史は繰り返されるもんだね(まだ1回目だけど)。何で勇者召喚なんか……ああ、魔物が村を襲ってきた、と。それで? 魔物の王の魔王を殺そう、と。更に? 魔神に騙されて魔神を崇拝している国を正気に戻そう、と。しかし自分たちには無理だから異世界から召喚しよう、と。更に更に?勇者である貴殿方は光の女神の加護があるので魔王や魔神に対抗出来る唯一の存在である、と。
ほうほう。面白いね。
フザケルナヨ。
そもそも魔物が村を襲ったのはお前ら人間が魔物の領地を侵害したせいだよな?増えすぎてもいない魔物たちを狩り過ぎたせいだよな?それと、お前らは知らんと思うが魔物たちの王が魔王じゃないからな? 全ての"魔"の存在の王が魔王だからな?更に言っとくが別に俺は騙してもいないし崇拝しろと命令した覚えもないぞ? むしろ崇拝しないで欲しいしな。……しかもあろうことか俺の、俺だけの真緒を殺そうだと?
面白いじゃないか。……お? 勇者御一行も殺る気らしいな。……おめでたいことだ。
光の女神なんて存在しないのに。
忘れがちだが、この世界は俺が創った。生き物や人間は別だが、国の名前に始まり人間の能力や魔法、金属や自然環境に至るまで、全て俺たちが創ったのだ。改良はしていないため"召喚陣"が造られてしまったようだが。つまり、俺が俺以外の神を創っていない以上、光の女神なんて存在しない。
召喚したのはどっかの国の巫女さんらしいが、なんとまあ嘘っぱちを並べてくれちゃって。
取り敢えず、今すぐ国ごと滅ぼしたい衝動に駈られてるんだけど、真緒に止められてしまった。キスされて。ここまでしてくれたら流石の俺でも止まるよ。……その先もヤったけどね
真緒に免じて様子見にしてあげるよ。どうなることやら。
勇者パーティーは全員で5人。全員日本人だ。しかしその内の1人はどうやら巻き込まれたらしい。1人ずつ紹介していこうか。
勇者:越智 勇武 ♂
剣道部部長・イケメン(上の上)・朴念人
弓使い:上峰 美紀 ♀
弓道部部長・美人(上の上)・ツンデレ
魔術師:神宮寺 涼 ♂
サッカー部部長・イケメン(上の上)・ナルシスト
治癒術師:福地 明日香 ♀
サッカー部マネージャー・可愛い(上の上)・天然
操作術師(無能):阿久根 総真 ♂
放送部部長・フツメン(中の上)・巻き込まれ
――――こんな感じかな。勇者役の奴に"勇"って字がついてたり、巻き込まれた奴が最強ってのはテンプレだよね。…にしても、地球で"越智"急便に跳ねられたってのにまた苦しめらるれんのか…!? オイオイ。跳ねたやつの従弟じゃねえか。…ま。その他の越智さんには無関係だよね。復讐なんてガラじゃないし。魔神だけど。
それぞれの役割は決めてあげたよ。さあ。勇者さんこちら、魔王城までおいで。
☆ ☆ ☆
勇者が召喚されておよそ2ヶ月がたった。阿久根君は別の意味で魔王討伐に乗り気だ。召還出来るのは魔神だけって知ってるし。……阿久根くんは別として。確固たる証拠も無い対象に明確な殺意を抱いて魔王城までくるならそれなりの対応をとらせてもらうよ?
更に1ヶ月。ようやく勇者パーティーが出発した。この世界はレベル制を採用している。…分かりやすいじゃん。阿久根くんを抜いたパーティーの平均レベルは30にも満たない。よくそれで出発したな。ちなみに阿久根君は89。君もよくそこまで上げたな。いくらラックがいるとはいえ。
何か久々にギルドに呼ばれた。勇者召喚の話がギルド中に通達されたらしく、Aランク以上の冒険者は勇者パーティーを手伝わなければならないらしい。俺も真緒もSランクなので、特に強要されている。……なぜ討伐対象自身が討伐されに行かにゃならんのだ。
……! いいこと思いついた!
勇者パーティーに紛れこむのはアリだな! よし。
「真緒ー! 勇者に会いに行こう!」
「はっ!?」
★ ★ ★
俺は越智 勇武。学校帰りに親友たちと召喚されてしまった。話を聞くと、魔王と魔神とやらがこの世界で悪さをしているらしい。許せない! 俺が倒してやる!
一緒に召喚された上峰たちと共に、この世界の事を学んでいく内に何度か驚かされた
まず、この世界は、"ジャース"という星らしい。地図を見ると、地球の世界地図を左右反転させている。俺たちが召喚されたのはヨーロッパならぬ"ユアラプ"。種族はファンタジーらしく《人族》・《獣人族》・《エルフ族》・《龍人族》・《魔人族》の5種。獣人か~もふもふしたいな
魔王城があるのはラ・オストリア国だ。そこに行くには海を渡らなければいけない。それで、船に乗っていかなくてはいけないが、港がドーインかチャッカーム半島にしかないらしく、道中の魔物を倒したり、魔神崇拝国を正したりしながら行くらしい
俺たちは光の女神の加護があるから、普通の人よりレベルが上がりやすいそうだ。……レベル制!?
召喚されたのは俺を入れて5人だが、唯一総真だけは魔王討伐に乗り気じゃない。何度か説得して、ようやく討伐についてきてくれるようになった。…訓練の時はいつもいないんだが、何でだろう?
俺たちが魔王と魔神を討伐出来たら、召喚陣の魔力がたまって、地球に還れるらしい。なんとしても地球に帰るんだ! ……いやいや。人を助けるのに理由はいらないよな
召喚されて3ヶ月。ようやく出発できた。レベルも結構上がって、小さな魔物程度なら楽に倒せるようになった
魔王討伐に、俺たちを召喚した巫女であり、ユアラプ国の王女のフーラン・ユアラプも同行することになった。…俺と話す時、いつも顔が赤いが大丈夫なのだろうか? しかもフーランと話していると、美紀が弓を俺に向かってぶっ放してくる……俺が何したっていうんだ!?
旅を初めておよそ2ヶ月、サウジャラービャ王国に着いた。どうやらこの国にこないだSランクの冒険者が来て、まだこの国に滞在しているらしい。一緒に魔王討伐に行こうって誘うんだ!
道中でレベルが上がって、パーティー平均レベルはおよそ50。やっぱり訓練しているより魔物を倒した方が上がりやすいな。夜、時々総真がいない。朝には戻っているからいいんだけど、聞いてもはぐらかされてしまう。一度後をつけてみたんだが、まかれてしまった。……まあ、親友だし信じてるけどな!
王国のギルドに入ると、ちょうど出ていく2人組に出会った。年齢が俺達とそう変わらなかったから、つい聞き耳を立ててしまった。
「だーかーらー。久しぶりにハク君に会いに行こうって」
「でも帰ってきたら食べさせてくれるって言ったのに」
「その材料を取りにいくんだよ?」
「メンドくせぇ」
「……そんなこと言うなら作んないよ?」
「スミマセン。俺ガ悪ウゴザイマシタ」
「…まあいいや。でも本当に好きだね」
「この辺りじゃ食えねぇんだぞ!?」
「はいはい。聞き飽きた」
「……とにかく帰ってきたら絶対ぇ作れよ?」
「分かってるって。俺も好きなんだから。
ねぎまぐろ丼」
『えっ!?』
最後の言葉にフーランを除く全員が反応した。ちょっと待て、ねぎまぐろ丼!? この世界にあるのか!?
この世界は中世のヨーロッパ的な世界なので、当然(?)ねぎまぐろ丼はもちろん、そもそも米が無い。日本人の俺達にはこの5ヵ月間がはっきり言って苦痛でしかなかった。日本人だぞ!? 米を食うだろ!?
俺たちはあわててその2人組を追いかけたが、見つけたと思ったら、転移してしまった。ギルドの職員に素性を聞くと
「ああ、彼らが史上最年少と言われているSランク冒険者ですよ。登録からわずか1ヵ月でSランクですから、最速でもありますね」
と言われた。あいつらがSランクか!!これはぜひとも仲間にしないと!!
帰ってくるのを待って6日、そろそろ諦めようか……と思った矢先に2人は現れた。
「おいしかった~。やっぱり神だよね、ねぎまぐろ丼って」
「……まあ、それなりにな」
「ツンデレ~」
「違う!」
俺たちはさっそく声をかけてみた。
「すみません」
「はい?」
「あ゛?」
真正面から見たのは初めてだったけど、はっきり言ってスゴくカッコイイ。男の俺でさえ頬が赤くなるのを感じる。口調が柔らかい方は、首の後ろぐらいまである艶のあるストレートな黒髪を目にかからない位で切り揃え、つり気味だが迫力のある、左目が金で右目が赤のオッドアイ。ツンと高めの鼻に、薄桃色の唇。全体的に整っているのに人形には見えないし、女にも見えない。もう一人の口が悪い方も、逆立った黒髪に正反対のオッドアイ。目はハンパないつり目で、見られただけで鳥肌がたつ。でも、全体的に野性的な雰囲気を醸し出しており、つい服従してしまいそうな気がする。ヤバイ。女だったら惚れてた。
ふと見ると、他の5人も頬を赤く染めている。俺だけじゃないと分かると、安心するとともに少し腹が立った。
「あの……何か用ですか?」
「ねぇんなら声かけんなよな」
その声で我に返る。そうだ、目的を忘れるな。俺たちは魔王討伐に来たんだ。
「な、なんてことを! この方たちが誰か知らないんですの!?」
我に返ったらしいフーランが2人に怒鳴るが、2人は何をいってるんだコイツ、という目で見ている
「えーと……雰囲気から推測すると勇者様御一行かな」
「お前よく分かったな!?」
優男がまさかの正解を言った。本当によく分かったな。
「初めまして。勇者様。Sランク冒険者のジン・シンドゥー・コーマです」
「俺はミカ・ミャーオだ」
……一瞬猫みたい、思ったのは俺だけではないと思う。
そう思ってたら、二人が眉をひそめた。ああ、名乗ってねぇ!
「お、俺は勇者の越智 勇武だ」
「私は弓使いの上峰 美紀よ」
「魔術師の神宮寺 涼だ」
「ち、治癒術師の福地 明日香です…」
「……操作術師の阿久根 総真だ」
「ユアラプ国の王女のフーラン・ユアラプですわ!私に会えたことを光栄に思いなさい!」
「……それで、俺達に何の用かな?」
「つまんねぇ要件だったらブッ殺すぞ」
相変わらずミカは口が悪いな…っとそれより要件を伝えないと。
「最近魔王と魔人がこの世界を滅ぼそうとしているらしい。だから俺たちは魔王たちを討伐しにいこうと思っている……頼む! 一緒に来てくれ!」
懇願にも似た雰囲気で頼んだ。冒険者なら魔王たちにも困っているはずだ。…そう信じていたから俺はジンのつぶやきが聞こえなかった。
「ふーん……まだ踊らされてるんだ……」
しばらくして、ようやくジンが口を開いた。
「……いいよ。一緒に行こうか」
「っ、本当か!」
「おい、ジン!?」
「ミカ」
「……チッ。分かったよ。行けばいいんだろ、行けば!」
「あ、ありがとう! 二人とも!」
そうして、ジンとミカと一緒に魔王討伐に向かった。
――――二人の本当の正体も知らないまま。
☆ ☆ ☆
二人が仲間に加わってからおよそ半年。俺たちはようやくラ・オストリア国に着いた。ここに来るまでに、本当に二人には助けてもらった。声をかけるだけで魔物や盗賊を追い払ったり、精霊の森に迷い込んだ時とか。追い風を起こしてくれたりetc.そして何より、道中の食事に和食が出た。初めて作ってもらった時は俺達5人とも人目をはばからず涙したね!
ここに来るまでには色々なことがあったけど、最近総真がおかしい。『お前らは騙されている』『魔王は悪い奴なんかじゃない』なんて言っている。……魔神に毒されてきているようだ。魔神を倒して元に戻さないと!
いよいよ明日は討伐だ……大丈夫なのだろうか……
その夜、眠れないのでベランダに出ていると、ジンが来た。
「眠れないのか?」
「ああ……ジンか」
「……怖いのか?」
「……………ああ」
「……そうか」
しばらく何も話さなかったが、少ししてジンが口を開いた。
「……そんな半端な覚悟しかないなら今すぐ国に帰れ。優柔不断な半端者なんか邪魔者以外の何者でもない」
「っだと!?」
「怖いのは皆一緒だ。だが勇者であるお前が弱音を吐いたらそこで終わりなんだ」
「!」
「……失望させないでくれ。俺たちはお前だからここまでついてきたんだ」
そう言ってジンは戻って行ったが、俺は覚悟を決めた。もう迷わない。
俺が皆を幸せにする。
翌日、朝から魔王城に乗り込んだ。……が。
「……おかしい」
「ああ。護衛が一人もいない」
違和感を感じながらも俺たちは魔王がいるとされる謁見の間に向かう。
扉を開ける――――と、護衛や宰相など、全員が頭を下げてそこにいた。
俺たちが武器を構えると、一番魔王らしい魔人が口を開いた。
《お帰りなさいませ。コウ様。マオ様》
――――俺たちに向かって。
呆けている俺たちの横を魔人に向かって歩いていく二つの影。
「うん。ただいま」
「おう」
『――――え』
「あ~疲れた。護衛や討伐とかで冒険したことはあるけどこんなに長い間旅したのは久し振りだよ」
「やっぱり毎日運動した方が良いんじゃねえか?」
「ベッドの上で?」
「違う!」
二人は親しげに話しているが、俺たちは頭がついていけていない。
「ちょっと待ちなさいよ! ど、どういうこと!?」
フーランが尋ねる。何となく想像は出来る。だが、それを自分は認めたくない。
「どういうわけもなにも。改めて自己紹介しよう。俺が魔神・コウことジン・シンドゥー・コーマこと紅磨 仁だよ」
「魔王ことミカ・ミャーオこと三上 真緒だ」
『んなっ!?』
……最悪の想像が当たってしまった
★ ★ ★
「今まで私たちを騙していたの!?」
「人聞き悪いこと言うんじゃねぇよ」
「別に騙してたつもりは全くないけど」
「だったらどういうことなんだ!」
「どういうこともなにも」
そこで俺は話を一回区切った。
「俺たちは不老不死なんだ」
『…………は?』
「俺たちは君たちと同じく、地球の日本で生まれたんだ。……でも、大学に合格した次の日に交通事故で亡くなった。そしてとある創造神に出会ったんだ。……そして、この世界を創った」
「創った!?……ってことは!!」
「俺がこの世界の神だ。…………唯一の、ね」
「嘘よ! 神は他にもいるわ! 光の神シャイナスや火の神ファイーア、水の神アクウォタや、それから、それから……」
……やれやれ。何を言っているのやら。気持ちは分からなくもないんだけどね
「おめでたいな姫さん。創造神自身が言ってんだろ。神は自分だけだ、って」
「世界は俺が創ったんだけど、生き物は俺たちを送った創造神が創ったんだ。……そして、俺は自分以外の神を創らなかった。神は生き物じゃなく、あくまで信仰対象の物体に過ぎないんだから、俺が創る対象に当たる。……だが俺は創っていない。故に
光の女神なんて存在しない」
「……ちょっと待てよ」
今まで喋らなかった勇者(笑)が口を開いた
「仮にその話が真実だったとして、俺たちに近づいた目的は何だ?」
「目的も何もないんだけどね……」
「っ! だったら! 俺たちを助けてくれたことに意味はないのか!?」
「"人を助けるのに理由がいるのか?"」
「!」
前に勇者(笑)が思っていたことだ。自分が考えていたことをまさかの敵に言われるとかマジかわいそー。
「……ま、そんな戯言はおいといて。君たちどうするの?」
『…………?』
オイオイ。お前ら、オメデタイ頭してんだな。
「……ここに来た目的を忘れたの?」
『あ!』
「俺たちを倒すなら早くしてくれ。しばらくしてなかったから書類がたまってるんだ…もっとも」
『?』
「俺たちを倒しても地球には還れないがな」
『んなっ!?』
え、何? コイツらマジで魔王と魔神を倒したら地球に帰れると思ってたの? 何なの? アホなの? バカなの? 死ぬの?
「当然だろ? 別に俺たちが魔力を独占してるとか召還陣を持ってるとかそんなのねえし」
……むしろ還れなくなるよ? 召喚ができるのは300年に一度らしいし。俺位じゃないかな? 召喚も召還も好きなだけできるの。…ああ。あと父さんもいるか。…あの人は別格だけど
「っでも! 最近魔物が村を襲ってるって!」
ああ、そこからか。
取り敢えず、どれだけお前ら人間が愚かで醜い生き物か、教えてやるよ……俺も元人間だけど。
★ ★ ★
ジン――改め仁の説明を聞いてみると、俺たちが騙されていることに気付いた。総真は正しかったんだ。まだフーランは認めようとしないけど。おまけに総真は巻き込まれたらしい……本当に申し訳なくなる。
意気消沈して引き返そうとしたら呼び止められた。
「還りたい?」
何を当たり前のことを。還るためにここまで来たんだ。
「還りたい?」
しつこいな。
「還りたい?」
……ああ、もう!
「還りたいさ! でももうどうしようもないじゃないか! 」
「え? いつ俺が還れないなんて言った?」
『…………え?』
「俺は魔神だよ?」
……じゃあ……。
「還れる……のか……?」
「うん。今すぐにでも」
っ! じゃあ!
『還してくれ!』
「別にいいよ……ただし
総真くんだけだ」
『……え?』
「だってそうだろ? 彼は君たちに連れて来られたにすぎない一般人で脇役でモブキャラなんだから……それに」
「総真だけが俺達を信じてくれた」
『っ、』
「忘れてないよ?散々罵ってくれたよね」
「何回も"殺してやる"発言を聞いたからな」
「そ、それは……」
「総真。還りたい? ……勇者たちを残してまで」
そう総真に尋ねる仁。還るわけない! 俺達は一緒に帰るん
「ああ」
だ……え。
「総真!? お前っ」
「もううんざりなんだよ。お前らに付き合ってるといつも厄介ごとに巻き込まれる」
「だからって!」
「……今なんつった?」
「……え」
「"だからって"? ふざけんなよ!?」
「っ!?」
「いつもいつも。嫌だって言ってるのに俺を巻き込みやがって! 今だから言うぞ? 俺はお前らが
大っ嫌いだ」
「そ、総真……」
「ちょっと総真!」
「謝れよ!」
「うるさい。お前らもだ」
「「!?」」
「何を勘違いしたか知らねぇがな。俺はお前らのことなんか
友達と思ったことなんか
一度もねぇんだよ」
『あ、あ……』
「だから俺は帰る。一人?むしろ喜ぶね」
「総真……」
「んじゃあ。送るね~」
「ああ。頼む」
「君たちが召喚された数分後に戻るようにしてあるよ。こっちの能力や力は全く使えないと思うけど、経験は残っているからそれでこれからの人生カバーしてよ」
「分かった」
「じゃあね~」
結局総真は、一度も俺たちの方を振り返らずに行ってしまった。
★ ★ ★
残った勇者メンバーには丁重にお送りしました。……え? もちろんユアラプ国に。還すわけないじゃん。
「なんだかんだで楽しかったね」
「ああ……だが」
「ん?」
「俺にはお前がいればいいや」
「っ!」
その後、盛り上がった俺たちは、久々に体を重ねた。
愛は何にも勝る! ……ってことか?
まあこんな数奇な運命だけど、楽しくやっている。まあどちらかというと、
「めでたしめでたし、ってか?」
魔神も悪くない、な。
……フッ、昔は若かったのさ……。




