登場人物&世界観
ほとんど本編に生かされていない設定たち。
◎世界観◎
||世界||
大陸は主に二つに分かれ、広大な広さを持つ中央大陸と、その半分ほどの広さで未開の地である西大陸。 その他には大小交えた島が無数に存在する。無人島もあれば、国として成り立っている島もある。 単純な意味で文明がもっとも発達しているのは中央大陸である。大雑把に分類して、中央から東にかけてシェルロット国、 南にグルト国、北にヴァース国があり、 西には小国が密集している。
言語は統一されている。国ごとに独特の言葉やアクセント、言い回しなど、いわゆる方言がある場合もあるが、 意思の疎通はできる範疇である。
魔法等は存在しないが、未開の地である西大陸や、数ある島のいくつかでは不思議な力を持つ者もいるという。また後述する宗教のいくつかでは、そういった不思議な力を持つ人間を“真人”と呼び、神に愛された子としてみなすことが多い。
宗教は多数存在し、多くは国や地域ごとに違うが、まず祖となる創造神の存在があり、それ以外の神はそこから派生したもの (つまり子)であると認識されている。つまり、どの宗教でもまずは創造神ありきであり、その中で枝分かれしている状態である。 唯一、北のヴァース国の一部の原住民は異なった宗教観をもっており、 2000年ほど前のヴァース建国の折には弾圧された記録もあるが、最終的には和解され現在も彼ら原住民の信仰は守られている。
上記などの数例をのぞき、宗教観の違いから諍いが起こることは歴史上ほとんど確認されていない。
氏名の後に来る国名(例:シャーネ・ラウル・シェルロットなど)は、特殊な場合をのぞいて王族に限られる。これはどんな小さな国家であろうと同じであり、必要としない又は廃止した王族はあれど国名を持つ一般人は存在しない。
王族同士の婚姻、または養子になった場合、元々使っていたミドルネームは継続して使用され、国名は嫁ぎ先のものに変更される (例:シャグナ・アールズ・シェルロット。旧姓は、シャグナ・アールズ・グルト)。
||シェルロット国||
中央大陸の東に位置する、三大国のひとつ。首都はセピルアート(“真珠の涙”の意)。
三大国のうち最も歴史が古く、中央大陸全土を支配していた時代もあった。 前国王が治世していた時は西の小国らとのいざこざが絶えなかった(小国同士の紛争から国を無くした難民たちを受け入れたため)。 しかし、三大国同盟以後は沈静化した。
縦に楕円形の国土を持ち、基本的に極端な気温の変化がないために過ごしやすく、はっきりとした四季がある。そのため季節ごとに催しは多い。芸術的な感性が鋭く、数多くの芸術家を輩出している。吟遊詩人という職業もこの国から生まれた。
国民性としては勇敢で勤勉であり清貧を好むが、かつては大陸の覇者だったという自尊心は根強く残っており、プライドが高い。しかし、近年では移民が多いためにそういった意識は薄れてきたようだ。
国教は特に決まっていないが、太陽をつかさどる女神を信仰する者が多い。季節の移り変わりをもたらし、多種多様な食物をもたらしてくれるがゆえと思われる。王族も信仰している。
兵力は三大国一であり、屈強な騎馬隊と騎士団を有する。徹底した実力主義であるために一般人でも入隊でき、また出世することができるが、血を重んじるために王族との婚姻は硬く禁じられている(貴族との婚姻は、法的には子爵以下であれば認められている。が、前例は少ない)。
国民のほとんどが嗜みとしての武芸を学び、女であろうと護身術程度の剣技をもち、子供の頃から馬に乗ることができる。
男子には十六才から十八才まで、二年間の徴兵義務がある。これは身体的障害をもつ者をのぞいて強制であり、たとえ貴族であろうと正当な理由なしに拒むことはできない。しかし貴族階級と平民階級ではカリキュラムが異なっており、また待遇に差別的な差があるとして問題視されている。
基本的には自給自足だが、三大国同盟以後は四季を通して手に入れられる果物や穀物、絹織物などの輸出もしている。また、量は少ないが繊細な作りの銀細工も希少価値の高い高級品として出回っている。先に述べたように芸術的才能に優れ、音楽家、画家、劇作家に吟遊詩人などが活躍している。彼らの芸や作品を求めて訪れる者も多い。
||グルト国||
中央大陸の南に位置する、三大国のひとつ。首都はフェンドラ(“歓喜する大地”の意)。
三大国のうち最も広い領土をもち、気候は一年に渡ってほぼ温暖であり、暑くはなれど寒くはならない。 歴史は浅いが、シェルロット国からの独立後みるみるうちに領土を拡大し、今では三大国でもっとも広大な土地を有する。
国民性としては賑やかでひょうきんな者が多く、各国を行き来する行商人にはグルト人が多いことから商売に長けた国民性ともいえる。 特産と呼べるものは少ないものの首都フェンドラでは、『フェンドラに買えぬ物なし』といられるほど、ありとあらゆる品が出回っている。 だが、その商品には人も含められるため非人道的な商法がまかり通っており、治安はあまりよくない。行き過ぎた損得勘定に旅人の評判は必ずしも良いものばかりではなく、また貧富の差も激しい。
その国土の広さから異文化が交じり合っているが、宗教はわかりやすく、豊かさと富をつかさどる男神を信仰する者が多い。王族も同様である。
特殊な戦闘技能はもたないが、ゲリラ戦を得意とする。 人口数から必然的に兵の数だけは三大国一であり、戦闘となると人海戦術で半ば強引に勝利をもぎ取る傾向にある。
基本的には自給自足だが、三大国同盟以後は安価で多岐に渡る品物の輸出をしている。また国全体の食意識が高いために、グルト料理は美味なことで有名。他国では高級料理の位置づけにある料理も安く食せるので、求めて訪れる者も多い。
||ヴァース国||
中央大陸の北に位置する、三大国のひとつ。首都はエマ・スビト(“雪の女王”の意)。
(残念ながら本編では最後のページに一言のみ名前が出てくる。お見逃しなく)
◎登場人物◎ (ネタバレのない範囲での紹介です)
||シャーネ・ラウル・シェルロット||
シェルロット国の第一皇女であり王位継承者。十八歳。
黒髪に黒い瞳。責任感が強く、理知的。思考はきわめて柔軟であり、身分にとらわれない。
少々荒っぽく、歯に衣着せぬ言い方が玉に瑕。
皇女でありながら軍師(=戦略家)として戦地を駆け回り、奇策とも呼べる戦略で数々の勝利をあげた戦歴をもつ。ジノ・クラウスターとは幼馴染であり乳母兄弟。
||ジノ・クラウスター||
シェルロット国の王室騎士団に所属。最年少で名誉騎士の称号を受ける。二十歳。
褐色の肌に赤毛、赤茶色の瞳。陽気で快活、人懐こい性格。だが剣の腕は三大国一とも謳われ、戦場では鬼神のごとき剣技で自軍に勝利をもたらす。
どうやら自他共に認める「騎士団一の色男」らしいが、シャーネは否定している。
シャーネとは幼馴染であり乳母兄弟。
||リース・ラウル・シェルロット||
前国王と腹違いの弟だったが前王の死後、革命を起こす。三十五歳。
愛妾の子のために王位継承権はなく、革命前は王のよき側近として仕えていた。
舞台役者のような端整な容貌をもつが、見かけに反して剣の腕は並以上にたつ。
前王の死後は偽りの悪評を流すなど、目的のために手段は選ばない性格。
||カルマ・バール||
シャーネの教育係であり、武術の師。戦略術なども教えた。四十一歳。
元々は西に位置する小国の貴族の生まれだが、若いときに身分を捨て諸国を放浪しながら剣の腕を磨いたという変わり者。教養が深く、時に口うるさい一面もあるがシャーネには純粋な忠義を誓っている。
||シャグナ・アールズ・シェルロット||
元グルト国の第三皇女。十八の時にシェルロット国に嫁いだ。享年二十八歳。
類まれな美貌の持ち主であり、天真爛漫な気質。同盟に訪れたシェルロット前国王に一目惚れをされ、口説き落とされた。シャーネの母であり、リースの義姉。