4話 両親
最近、両親が私のことをやることなすこと文句を言ってくる。
本当に邪魔。いつまで私を支配するつもりなの?
私だって、もう一人で考え、行動できる。
お父さんは、特に幼稚園の時の事件がトラウマになっているみたい。
一人にすれば犯されてしまうと思ってか、常に私を拘束する。
この前は、私のカバンにGPSをつけて監視していることも分かった。
それなのに、そんなことはしていないなんて言い訳をしている。
私も1人の人間としてプライバシーもある。
お母さんも、私が買ってきた洋服を派手だと勝手に捨ててしまう。
こんな洋服だと、男性は誘っていると勘違いするからと。
もう枯れている自分と一緒にしないでよ。若い私に嫉妬しているの?
周りのクラスメートはみんなおしゃれな服を着ているのに。
私だけ、いつも地味で田舎くさい服でいろということなの。
ひどい。もう耐えられない。
私だって、年頃の女性で、おしゃれもしたい。
自分で考え、判断し、好きなように生きたい。
女性だとか、大人じゃないからって、ダメだ、ダメだという。
もう、自由にさせて欲しい。
私のためだというけど、そうなら私がしたいようにして欲しい。
本音は、私を支配したいだけに違いない。
親だと言う権威をいつまでも持っていたいのかもしれない。
一人っ子だからか、私に期待を押し付けるのもやめて欲しい。
一つの型に当てはめ、自由を奪わないでもらいたい。
今どき、生き方は多様なんだから。
お父さんは、会社から電話がくると謝ってばかり。
本当にみっともない。
そんな人から、こうあるべきだなんてこと聞きたくない。
次は両親をターゲットにすることに決めた。
このアプリを使えば、私が殺したことにならない。
そうすれば、この家は私に相続される。
生命保険をかけているらしいから、当面は生きていけそう。
お金があれば大学に入って、卒業して働けば生きていける。
アプリで両親の顔を選択する。
そうすると、いつものように黒い空間に吸い込まれた。
気がつくと電車のホームに立っていて、両親がこちらに歩いてくる。
どこの駅なのかの表示はないけど、電車は井の頭線のよう。
特急が止まらない小さな駅で、ホームの両脇を電車が通る。
こんな明るいホームなのに、私たち家族以外に誰もいない。
でも、電車はひっきりなしに来る。
今も急行電車が、すごいスピードで前を通り過ぎる。
その急行電車の車内には誰もいなくて、殺風景な雰囲気。
向かいで停車した電車を見ても、乗ったり、降りたりする人も全くいない。
ただ、電車の中は、煌々と明るい蛍光灯が照らされている。
これまでの殺人現場とはかけ離れていた。
いきなり、お父さんとお母さんが、私に声をかけてくる。
「翠、お前、なんで、こんな時間まで外で遊んでるんだ。だいたい、まだ未成年の女なんだから、夜10時になっても家に帰ってこないなんて、おかしいだろう。」
「そうよ。節操というものを考えなさい。」
「あなた達だって、外にいるじゃない。」
「お父さんとお母さんは大人だし、仲良く一緒に飲んでたんだ。夫婦円満でいいだろう。お前は、まだ子供なんだからダメだと言ってるんだ。」
また、私のことを子供だからって拘束してくる。
だいたい、節操って死語じゃないのかしら。
今どき、毎日、夜10時に家に帰る女子高生なんていない。
昭和じゃあるまいし。
しかも、お酒に酔って、ベタベタしている親なんて見たくなかった。
2人は酔っ払っているのか、だいぶふらついている。
息も酒くさい。
お父さんも、お母さんも、おしゃれとは正反対の洋服を着ている。
家にお金がないからって、そんな服、恥ずかしいでしょう。
会社勤めでうだつが上がらないお父さんの子供なんて恥ずかしい。
そんなにお父さんの給料は少ないのかと。
そんなお母さんが、お父さんにキスをしようと顔を近づけた。
お母さんとお父さんの口が唾液の紐で繋がる。
娘の前で、いくら酔っていても節度というものはあるでしょう。
本当に気持ち悪い。私は、許せなくなって、2人を強く押した。
そんなことをされるとは微塵も思っていなかったみたい。
酔っ払っていたからか、そのままホームから落ちていく。
口を大きく開けて、手を私に差し出したまま。
そこに電車が来て、轢かれてしまった。
轢かれる瞬間は、コマ送りのように見える。
お父さんは、なんでお前がと驚いたように私を見つめていた。
その直後に、電車に飛ばされていく。
お母さんは、スカートの中が丸見えで、頭から落ちていく。
その直後に、電車に轢かれ、体がバラバラに飛び散っていく。
急停車した先頭車両の前で、頭だけが正気を失い転がっている。
私は、いつものように寝ていて、警察からの電話で目が覚めた。
両親が酔っ払ってホームから落ち、電車に轢かれたと伝えられる。
警察は、あまりに私の周りで事故が起きるから、少し疑っているみたい。
でも、少なくとも今回は私の犯罪だとは言えない。
事故からそれ程時間が経っていないのに、事故現場から遠い家にいたから。
その他の事件も、家にいたという証言を覆すほどの証拠もでてこなかった。
だから、それ以上、何か言われることもなかった。
女子高生1人で、成人男性を含む人達を殺害することはできない。
また、両親の事故も、周りに大勢人がいるなかで証言が多数あったから。
アプリの世界ではホームに誰もいなかった。
でも、現実世界では、多くの人が周りにいた。
しかも、私は見られていない。
どのような仕組みでそうなるのかは分からない。
でも、時間と状況はアプリで私が見たものと同じ。
酔っ払って足がふらつき、2人でホームから落ちて行ったという。
殺人とは見えなかったという声が多かった。
保険会社は自殺とは言えず、不幸な事故として保険金を支払ってくれる。
私は、湿気が広がる警察の慰霊室に通される。
そこには、腕や足の一部がない両親の遺体が横たわっていた。
お父さんの頭はなかったけど、お母さんの頭は本人だと伝えた。
警察は不幸な事故だったと下を向きながら私に伝える。
私は、ただ、呆然と佇む演技をしていた。
心の中では笑いながら。
うるさい両親がいなくなり、お金は使いきれないぐらい手元に入る。
これって、ラッキーと言う以外の何物でもない。
これまで育ててくれたことには感謝している。
でも、これまでの生活で、その恩はすでに返している。
私を拘束するからこうなるの。私が悪いわけではない。
親戚と言う人が保険金目当てで群がってくる。
でも、1円も渡さないと強く言った。
これまで何もしてくれずに、会ったこともない人にはと。
ケチだといって去っていったけど、ケチなんて言われる筋合いはない。
そしたら、それ以上、誰からも連絡がこなくなった。
やっぱり、心情に流されずに、冷静な対応が良かった。
私は、これから生きていかなければならないからお金は必要。
半年ぐらいしたころだった。
クラスメートの3人が休み時間に話している会話が耳に入ってくる。
「ねえ、ねえ、殺人ゲームアプリって知ってる。話題になっているよね。」
「聞いたことある。ゲームで罪を負わずに人を殺せるってやつでしょう。」
「なんか、アプリという感じじゃなくて、この世じゃない世界に吸い込まれて、そこで人を殺すらしいよ。」
「そうそう。あり得ないよね。でも、結構、いろいろなところで話題になってるらしい。実際に、人を殺したっていう人もいるみたいよ。」
「でもさ、規約で、5人目を殺すと一番大切なものを失うって書いてあるんだって。」
「5人って、気前がいいじゃん。普通は1人殺せばというんじゃない。」
「でも、一番大切なものって何かしら。命とか?」
「噂だと、子供とか、お金とか、地位とか奪われたらしいよ。」
「怖い。」
「まあ、噂だし。本気にしてるんじゃないわよ。都市伝説よね。」
規約があったんだ。あと1人で5人目になる。
無料アプリとは確認したけど、それ以上は読んでいなかった。
まあ、私には大切なものなんてないし、まあ別にいい。
その時は、そんな風に軽く考えていた。




