3話 女子高
毎日のように私をいじめてくる澪というクラスメートがいる。
いつも、自分はお金持ちで可愛いと自慢する。
私のことは、貧しく、ブスだとバカにしてくる。
全く事実無根で、美人な私が目障りなのだと思う。
この前、お昼に私の机にわざとぶつかってきた。
そのせいで私のお弁当が落ちてしまう。
「あれ、ブタの餌が落ちちゃった。ブタなんだから、落ちたものを、手を使わずに口で食べなさいよ。まあ、本当にブタの餌のように汚いわね。」
そう言いながら大笑いをする。ひどいやつ。
そもそも、そんなに可愛いわけじゃない。
スタイルだって、胸は板みたい。
足もぶっといし、目も少し離れていてブサイク。
声もキンキン声で、品がない。
人格のなさが漂っている。
なんか渋谷にしょっちゅう行っているらしい。
アクセサリーのセンスはなくて品性のなさが滲み出る。
薄汚れたぬいぐるみがカバンに並ぶ。
汚いぬいぐるみは気持ち悪くて、触れたくない。
成績も中の下ぐらいで、いつもトップクラスの私には到底及ばない。
心は真っ黒で、優しさなんて一欠片もない。
声も濁声で、可愛らしさは感じられない。
どこに良い所があるのか分からない。
そんな澪は、私のことを見下さないで欲しい。
澪に彼氏がいたら、それって奉仕活動に違いない。
どうも、澪の親が学校に多額の寄付をしているらしい。
だから、先生も、澪のいじめを見ても見ぬふり。
世の中って、金、金、金って腐ってる。
澪には取り巻きがいて、私が騒いでも誰も相手にしない。
おそらく、お金で思い通りに動かしているに違いない。
取り巻きは、澪と仲良くなってから金遣いが荒くなった。
そんな取り巻きが澪と一緒に私をいじめる。
私にぶつかってきて文句をいうと、その取り巻きが私を取り囲む。
学校は正論を言いながら、間違ったことが横行してる。
澪の取り巻きは、澪はとてもいい人だと言う。
澪が言ってもいないことを、周りに吹聴するのはやめろと言う。
逆に、私が澪を悪者にしていると。
どうして、そんなに私のことを虐めるのだろう。
私が、性格のいい人を悪者にするはずがない。
みんなだって、澪が私を虐めているのを見ているでしょう。
それでも、空想で人を貶めるのは良くないと言う。
みんなで澪を守り、私を攻撃する。
もう疲れた。私がなんと言っても、みんなで澪を守るのだから。
澪の家は裕福らしいけど、品性がない成り上がり。
人を騙して、お金を吸い上げているだけだと思う。
私は、明治時代は華族だったと親から聞いている。
あんな、品性のない女性から蔑まれる家系ではない。
そんな人に見下されるのは不愉快。
それなのに、力と金で私をバカにする。
この世に生きていてはいけない人なのだと思う。
誰もが、いじめに気づかないように通り過ぎる。
そんな中で、他人を頼っても何もいいことはないと学んだ。
私は、こんな女性に屈服しない。
だからか、澪による私への嫌がらせはエスカレートしていった。
私のスカートがハサミで切られていることもあった。
体育の時間が終わってクラスに戻ったときに気付く。
廊下では、あからさまに私の悪口を言って、ガムを私に吐き捨てる。
澪がいなくなればと思ったのは、一回や二回ではない。
だから、次は、澪をアプリで殺すことに決めた。
こんな女性、生きてる価値ない。
このアプリで、現実の世界からも、澪を排除できるかもしれない。
そうすれば、もう一歩、社会に貢献することもできる。
私は、澪の顔をアプリで選択していた。
今回も黒い空間に吸い込まれる。
気づくと、電車が通る線路の上の歩道橋の上にいた。
歩道橋の下では、京浜東北線の電車が数分おきに通り過ぎる。
遠くに高層ビル群が見えるけど、この辺りは物寂しい住宅地。
先に見える高層ビルの様子からは、ここは品川の近くかもしれない。
電車が通り過ぎるたびに、歩道橋は轟音に包まれ揺れる。
電車が通り過ぎると、風圧を感じて怖い。
それでも電車の中を覗くと、仕事帰りのおじさん、おばさんばかり。
疲れた人たちは、歩道橋なんて見ることはないし、関心もないはず。
この歩道橋は、あまり使われていないのか、人は通らない。
また、この辺は住宅ばかりで、ビルとかマンションはない。
だから、マンションのベランダから見られているということもなさそう。
そんなとき、前回と同じように、澪が現れた。
「あら、翠じゃない。いつ見ても、貧乏くさいというか、目障りな女ね。学校の外でも出会うなんて気分が悪くなる。早く私の視界から消えなさいよ。」
「前から、ずっと思ってたけど、あんたは、どれだけ偉いのよ。人として、どうかと思うわ。」
「くだらない女がしゃべるんじゃないわよ。ブタはブタらしく、下を向いて落ちてるものでも食べていなさい。」
私は、あまりの屈辱に、澪の頬を叩き、髪の毛をひっぱる。
澪も、私の髪の毛をひっぱり、取っ組み合いになった。
髪の毛を引っ張りながら近くで見ると、澪は、清らかとはほど遠い顔。
にきびだらけ。その顔を、錆びた手すりにこすりつける。
擦り傷に血が滲んでいる。
目は釣り上がり、口は開いて歯ぎしりをして、興奮した馬みたい。
もう人じゃなくて、けだものだから当然のこと。
そんなけだものは死ねばいい。そういう運命。
でも、澪も力いっぱい抵抗してくる。爪が私の顔をかすった。
血はでてないけど、なんてことをしてくれるのかしら。
髪の毛をひっぱりながら、手すりに顔を何回も叩きつけてやった。
もう、顔の至る所が切り傷で血が滲む。
澪の唇や目には血がでている。
鼻は歪み、鼻の骨も折れているのかもしれない。
そのぐらいやらないと日ごろのお返しにならない。
お腹も膝で蹴りつける。
何か口から吐き出し、ブラウスが汚れる。
本当に下品で、気持ち悪い。
早く、こんなやつはいなくなってしまえばいい。
そして、澪を強く突き飛ばす。
その時、澪は足を取られたように見えた。
澪は、歩道橋の手すりから体を乗り出し、元の体勢に戻れない。
バランスを崩して落ちていった。
そんなことはないと思っていたのか、驚いた表情で落ちていく。
私に手を伸ばし、助けてと言うように。
助けるのであれば、こんなことはしない。
これまでの、あなたのひどい仕打ちを悔やむがいい。
運悪く、そこに来た電車に轢かれる。
体から手足がもがれ、まさにブタのような格好で宙に浮く。
そして、頭から落ちていく時にまた轢かれてクビがちぎれた。
ちぎれたクビが前に飛ばされ、その上を電車が通る。
レールの上で顔はつぶれ、原型をとどめてない。
手足の一部は、不気味に線路に転がる。
日頃から人としての行動できないようなけだものの当然の末路。
人として生きていける存在では、そもそもない。
このような姿になったのは、元の姿に戻っただけ。
人として間違って生まれてきただけだから。
むしろ、電車に飛び散った血とかを清掃する方々に謝りなさい。
バラバラになった体を回収するなんて気持ち悪いでしょう。
あなたのせいで、そんな作業を強いられる人がでてしまった。
電車も止まり、帰宅する人たちにも迷惑をかけている。
生きてるだけでも迷惑なのに、死ぬときにも迷惑をかけている。
本当に害虫というか、生まれてきたのが間違いだったんだと思う。
血が飛び散った電車の車体を見た直後だった。
私は、前回と同じようにベッドで目が覚める。
ずっと家で寝ていたことになっているんだと思う。
これで、この世の中は少しは良くなった。
あんな女性に騙される男性もいなくなったんだから。
男性からも感謝されてもいい。
澪の顔を見るたびに、苛ついていた時間がなくなる。
そんなことを考えていると、ホッとした気分になれた。
いえ、それ以上に快感という感覚かしら。
このアプリ、本当に使える。
翌日、学校に行くと、みんなの話題になっている。
澪が自殺したと、先生からも告げられた。
澪は、歩道橋から飛び降り、電車に轢かれたと。
ただ、自殺の理由がわからず、また警察が動いているらしい。
先生は、黙とうを捧げると言ったけど、私は笑いがこみ上げてきた。
先生は、そんな私をみて、不敬な態度だと怒っているようだった。
でも、いじめを見て見ぬふりをした先生から言われる筋合いはない。
しかも、自殺したのは自業自得でしょう。
先生が、それ以上、何も言えずに下を向いていたのは当然だと思う。
澪の取り巻き達も、私に話しかけることはなかった。
次は自分かもと怯えていたのかもしれない。
自殺したことになっているのだから、怯えることはない。
ただ、これから、私にちょっかいを出したらアプリで殺すかも。
だからおとなしくしていなさい。
いずれにしても、これで、私を貶める澪は消えた。
澪を一生、見ることなく過ごせるんだと心が躍る。
その晩は、微笑みながら、ぐっすりと眠ることができる。
これも、このアプリのおかげ。
私は、このアプリに心が惹かれ、次のターゲットを考えていた。
最近、口うるさい両親のことを。




