【序章】ライバル宣言
ギルドに戻ると、僕は医務室に放り込まれた。
「過労と精神疲労ね」
受付嬢が、呆れたように言う。
「魂術師が無理すると、こうなるのよ」
ベッドに横になり、天井を見る。
女神アリフィカが、珍しく黙っていた。
「……心配、してる?」
「べ、別に!
使い潰したら困るだけよ!」
感情は、分かりやすく揺れている。
(嘘だな)
しばらくして、足音。
「入るぞ」
アレクシエルだった。
「生きてるか」
「一応」
彼は腕を組み、少し考え込んでから言った。
「……今日の件で、はっきりした」
「何が?」
「お前は、弱い」
直球だ。
「だが」
視線が、真っ直ぐに刺さる。
「使い方を間違えなければ、
俺より厄介な存在になる」
感情は、赤ではない。
澄んだ色。
「だから――」
彼は、拳を握った。
「俺は、お前を超える」
「……つまり?」
「ライバルだ」
そう言って、口の端を上げる。
「置いていくなよ、魂術師」
その背中を見送りながら、思った。
この騎士は、
きっと僕の人生に深く関わる。
良くも、悪くも。
女神アリフィカが、小さく呟いた。
「……予定外ね」
「何が?」
「ううん、何でもないわ」
その声の奥に、
確かな“黒”が混じっていることに、
僕は気づいてしまった。
それでも――
もう、引き返す気はなかった。




