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【序章】魂縛、初めて世界を歪める

 詠唱に入る。


 言葉を紡ぐたびに、頭が軋む。

 視界が、わずかに歪む。


(……集中しろ)


 感情の色が、鮮明になる。

 ゴブリンの恐怖と怒りが、渦を巻いている。


「――魂縛」


 次の瞬間。


 音が、消えた。


 ゴブリンの動きが止まり、

 身体が、ひび割れるように硬化していく。


 石。


 完全な静止。


 残ったゴブリンたちは、悲鳴を上げて逃げ出した。


 ダンジョンに、沈黙が戻る。


「……?」


 アレクシエルが、石を見つめる。


「今のは……」


「成功、だと思う」


 言った瞬間、膝が崩れた。


「零!」


 身体が、重い。

 魂が、削られる感覚。


 これは――使いすぎれば、確実に死ぬ。


「おい、無茶するな!」


「……一日、数回が限界だと思う」


「数回も使うな!」


 怒鳴る声。

 だが、感情は怒りではない。


 ――恐怖だ。


 失うことへの。


 アレクシエルは、石を拾い上げた。


「……これが、魂縛石」


 声が、震えている。


「国家級資源だぞ……」


「そうらしいね」


 苦笑する。


「金には困らなくなりそうだ」


「ふざけるな」


 彼は、真剣な顔で言った。


「これは武器だ。

 使うなら……俺が前に立つ」


 それは、命令じゃない。


 覚悟の共有だった。


 感情が、静かに揺れる。


 この瞬間、僕たちは理解した。


 ――役割分担は、境界線だ。


 一歩でも踏み越えれば、

 どちらかが死ぬ。

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