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木々の間から差し込む最初の陽光が枯葉に覆われた地面に降り注ぎ、霧のかかった空を薄い金色の光で染めた。小川は静かに流れ、どこか高いところで鳴く若鳥のさえずりと調和していた。
アーカーは静かに目を開けた。老騎士の鉄の手の下に三日間も押し付けられ、全身が痛み、あらゆる筋肉が悲鳴を上げて抵抗していた。しかし奇妙なことに…今日はうめき声も上げなかった。横になる気もなかった。ただゆっくりと呼吸し、無理やり起き上がった。
火の向こう側では、プラチナの少女がまだぐっすり眠っていた。昨夜彼が彼女にかけていた外套がまだ肩にかけられ、彼女の規則正しい呼吸に合わせてわずかに揺れていた。
アーカーは立ち上がった。腕と脚の痣はまだ残っていたが、今日は止まらなかった。彼はまっすぐに空き地へと歩みを進めた。そこは、この三日間、汗と血、そして静かな怒りが地面に染み込んでいた場所だった。
騎士は待っていた。背筋はまっすぐで、目は冷たく、変わらない。だが、すぐには口を開かなかった。アーケルは彼の前に立っていたが、最初の頃のように敬礼もせず、恥ずかしがることもなかった。ただ…彼の目は違っていた。もはや迷いも、怯えも、疑念もなかった。槍の一突き、一歩一歩、背筋を走る痛みのたびに、自分自身を探し求める男の目だった。
「準備はいいかい?」彼は瞬きもせずに尋ねた。
「分かりません…でも、私は引き下がらないよ」とアーカーは答えた。
ただそれだけ、彼は軽く頷いた。褒めるでもなく、非難するでもなく。だが、彼の目には満足の色が浮かんでいた。
今日の稽古は、3日前のように攻撃の嵐のようなものではなく、より詳細な指示が与えられ始めた。重心を下げる方法、風を感知して敵の方向を予測する方法、そして特に戦闘中の静寂に耳を傾ける方法などだ。「素早く打つ必要はない。正しく打つ必要があるのだ」
アカーは耳を傾け、学び、そして今回初めて最初の10分で打ち負かされることはなかった。
少女は小川のほとりに少し離れた場所に立って、アーケルを見つめていた。彼女の目は驚きに満ちていた。アーケルの容態が回復しつつあるからではない。彼の内に何か燃えているものがあったからだ。かつて見たことのない光だ。太陽が昇り、汗が地面に滴り落ち、手製の槍が剣にぶつかる音がした。アーケルは――初めて――騎士を少し後ずさりさせた。
「ふーん」彼は眉をひそめ、唇をすぼめた。「よし。やっと理解できた」アーカーは息を呑み、記憶を失って以来初めて唇を開いた。明るい笑顔ではなかった。だが、それは本物だった。
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練習を終えると、アーカーは古い岩の上にどさっと腰を下ろした。少女が包まれた布袋を持ってきた。中には、朝早くから用意していたおにぎりと干し肉が入っていた。「ありがとう」アーカーは彼女の隣に座りながらささやいた。
彼女は何も答えず、ただ彼を見つめた。そして突然、彼の手首の痣に優しく触れた。彼女の目は…心配そうだった。
アーカーは立ち止まった。ほんの一瞬、彼は彼女を沈黙の従者としてではなく、仲間として見た。言葉は発せずとも、常にそこにいる存在として。
「あのね…」彼は低い声で囁いた。「自分が誰なのか、思い出せない。でも、練習をしていると、痛みを感じるたびに、忘れていた何かに引き戻されるような気がするんだ」
「思い出したい。でも、怖い。思い出したら、今あるものを失ってしまうんじゃないかって。」
少女は軽く首を傾げ、プラチナの髪が肩越しに風になびいた。そして、まるで理解したかのように、一言も発せずに軽く頷いた。
火がパチパチと音を立てた。アーカーは近くに座り、両腕を膝の上で組んで、軽く頭を下げていた。体の傷は癒えていたが、心はまだ霧の中にあった。何もはっきりせず、確かなものも何もなかった。向かいにはプラチナの髪の少女が座っていた。彼女の顔には馴染みのある優しさが残っており、大きく澄んだ瞳は揺らめく炎の光を映していた。しかし、心の奥底には静寂があった…まるで彼女もまた、自分が存在する世界に迷い込んでいるかのようだった。
誰も口をきかなかった。聞こえるのは虫の羽音と、古木々を揺らす風の穏やかな音だけだった。アーカーは彼女をちらりと見た。彼女も彼を見ていた。しかし、それは探るような、批判するような視線ではなかった。優しい視線だった。まるで彼の中に何かを見ているかのようだった…まるで自分自身のように。
「なぜ私を追いかけているのですか?」アーカーは怒った声ではなく、何度も彼女に尋ねてきた誠実な質問で尋ねた。
「答えられない。だって、私も…知らないから。」――彼女の唇が動き、冷たい風に息が漏れた。
アーカーは考え込むように軽く頭を下げた。「何だったかは覚えていない。でも、何か…大切なものを失ったことは確かだ。」
その言葉が口から出た途端、胸に言い表せない感情が湧き上がった。歌詞のない歌のように、色を失った絵画のように。「こんな風に感じたことある?まるで…自分が動く空虚な存在みたいに?」
少女は答えなかった。しかし少し間を置いて、彼女はそっと手を挙げ、静かに鼓動する胸に触れた。そして頷いた。「私も…自分が誰なのか分からない。ただ…あなたを見た時…ついていきたいと思った。」
アーカーはかすかに身震いした。その言葉に何か深い意味があるからではなく、奇妙なほど真実だったからだ。謎と混沌に満ちた、あらゆる言葉が嘘になりかねないこの世界で、この単純な真実こそが…唯一の光だった。
「過去も未来もない人間にとって、存在する意味は何だと思いますか?」彼女の質問は夜通し響き渡った。
アーカーは炎を見つめた。その目には深海のように揺らめく炎が映っていた。「そう思っていた。だがこの三日間…訓練、戦闘、そして流れ落ちる汗の滴る感覚…私は一つ気づいた。」
「何?」彼女は彼を見ながら尋ねた。
「自分が何者かは分からないかもしれない。でも、自分が何者になるかは選べる。そして、もし何も持っていなくても…少なくとも、守護者にはなれる。」アーカーは決意を込めて少女を見つめた。
少女は長い間彼を見つめた。「誰を守るの?」
「わからない。もしかしたら…君かもしれない」彼はくすくすと笑った。静かに。「もしかしたら、昔知っていた人たちかもしれない。もしかしたら、全世界かもしれない」
彼女は微笑んだ。出会って以来初めての笑顔だった。そして囁いた。「それなら…私はここに残るわ。あなたがどんな人間になるか見届けるために」
夜はすっかり更け、地平線から新月が昇っていた。少女はアーケルの肩の上で、いつの間にか眠りに落ちていた。アーケルは…座ったまま、静かに遠くの空を見上げていた。その瞬間、名前も、ルーツも、記憶もない、見知らぬ二人は、言葉ではなく、同じ孤独、同じ空虚、そして同じ…意味のある人生を送りたいという願いによって繋がっていた。
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その日の夜明けは、草の上をつま先立ちで歩く旅人のように、誰の眠りも邪魔することなく、とても穏やかに訪れた。しかし、アーケルは早くから目が覚めていた。彼は小川のそばに座り、早朝の光に顔を濡らしていた。冷たい水が、灰と埃で汚れた顔を洗い流した。彼の目には、もはや漠然としたものではなく、静かな決意が宿っていた。まるで大地が裂けて、太陽の下で芽吹く芽吹くように。
薪を集めてキャンプを掃除した後、彼は広場へと向かった。そこはここ数日間、彼と追放された老騎士との間の「闘技場」となっていた。
数分後、プラチナの髪の少女がいつものように静かに出てきた。腕にはアーケルのジャケットを抱えていた。前の晩、彼女はそれをきちんと畳んで岩の脇に置いていたのだ。彼女は脇に座り、アーケルの一挙手一投足をじっと見つめていた。邪魔もせず、何も言わず、ただ心を込めて見守っていた。
「まだここにいるのか?」老人の低い、いくぶん皮肉な声が遠くから響いた。
アーカーはただ頷いた。それ以上言うことはなかった。毎日、打ち倒され、毎日、立ち上がることを強いられた。そして今日、彼は先制点を打つことを選んだのだ。
老人は頷き、毛皮の外套を肩にかけ、木刀を抜いた。「わかった。こっちへ来い。だが、覚えておいてくれ。俺はお前に何かを教えるつもりはない。ただ試しているだけだ…お前がこの世に生きるに値する人間かどうかを見極めるために。」
アーカーは構えた。最初の数撃はぎこちなかったが、今回は引き下がらなかった。木はアーカーの腕に当たり、肩を滑り、アーカーは後ろに投げ出されたが、すぐに立ち上がった。風が髪を乱し、背中に汗が流れ落ちた。
彼は午前中ずっと、何度も倒れそうになった。しかし、倒れるたびに、より早く立ち上がった。つまずくたびに、彼の目は輝きを増していった。
少女は近くに座り、シャツの裾を優しく掴んでいた。剣術については何も知らなかったが、心の中では一つのことを見ていた。「目の前にいるあの人は…過去を思い出せなくても、前に進む道を選び、そして…自分よりも高尚な何かのために、前に進んでいた」
正午、太陽が熱くなり始めた頃、老人は剣を抜き、息を吐いた。「もう十分だ。続きは明日だ」彼は言ったが、口調は変わっていた。もはや批判も、挑発もなかった。ただ…少しだけ受け入れる気持ちがあった。
アーカーは座り込んだ。顎からは汗が滴り、疲労で手は震えていた。しかし、彼の目には安らぎと、言葉にできない誇りが宿っていた。
少女は歩み寄り、アーケルに水の入ったバッグを手渡した。彼女の手は、アーケルの温かく傷ついた手に触れ、わずかに震えた。アーケルはそれを受け取り、優しく「ありがとう」と言った。
少女は返事をしなかった。だが、今度は前よりも近くに座った。人里離れた森の真ん中で、記憶を失った二人の魂の間に、かすかな絆が生まれた。愛でも、信頼でもなく…ただ、友情だった。
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初期の頃、アーカーは数え切れないほど倒された。老騎士ウッドは容赦なかった。腕、脚、肩、首を叩きつけ、痣のない部位はどこにもなかった。しかしアーカーは立ち上がり続け、倒れるたびに頭を上げて目の前の相手をまっすぐに見つめた。
「生き残るために剣を学ぶのではなく、剣を学ぶ資格を得るために生き残ることだ」と老人はかつて言った。
プラチナの髪の少女は、彼が倒れるたびに袖を強く握りしめ、前に出ようとしたが、結局立ち止まった。ただ見つめることしかできなかったが、その視線は…アーカーから一度も離れなかった。
二週間目になると、アーケルはもはや簡単には負けなくなった。最初の一撃は避けられるようになったが、二撃目はやはり食らってしまった。動きを観察し、剣先に風を感じ、本能で反応することを学んだ。木は鈍い音を立ててぶつかり合ったが、初めてアーケルの杖が老人に「ドン」と響いた。大きな音ではないが、本物の音だった。
「君が初めて私に触れた時。」老人は褒めるのではなく、ただ認めるように頷いた。
プラチナブロンドの彼女は、練習のたびに二人のために料理を作り始めた。アーカーは頼んでもいなかったのに、彼女はいつも料理を作ってくれた。二人は互いにあまり言葉を交わさなかったが、一つだけ確かなことがあった。二人は付き合っていたのだ。
三週目から一ヶ月目――剣の一撃一撃、汗の一滴一滴。アーケルの体の傷は、以前のように血を流すことはなくなった。皮膚は厚くなり、目は鋭くなった。アーケルは老人の攻撃を予測し、数歩後退させることさえできた。その後反撃を受けたものの、それは大きな前進だった。
夜になると、アーケルはよく一人で空を見上げていた。心の中には、言葉にできない何かがあった。ある名前が…何度も繰り返し聞こえてきた。「リリア…」
彼女が誰だったのか、なぜその名前が心に刻まれているのかも思い出せなかった。しかし、その名前が彼をもう二度と恋に落ちたくないと思わせた。
2ヶ月目 ― 一歩一歩戦士へと成長していく アーケルはもはや修行者ではなく、実践者となっていた。毎朝、夜明け前に彼は広場の真ん中に立ち、剣を振りかざして風と舞っていた。
老人は彼を起こす必要はなかった。アーケル自身が先に進んでいたのだ。スパーリングはもはや本物の試合となった。もはや弟子と師匠ではなく、剣士同士が互いを試し合っている。アーケルはやはり負けた。だが、以前とは違う。倒れるどころか、より長く立ち続け、より強く耐え、より強く反撃した。
プラチナの髪の少女は、アーケルの痣に塗る薬草を摘みに時々出かけていた。二人はまだあまり言葉を交わさなかったが、毎日目を合わせていた。そして、その瞳の中に、何かが静かに芽生えていた。繋がっているのに、名前のない何かが。
3ヶ月目になると、アーカーはもはや訓練を「生き残るため」とは考えなくなっていた。彼はもっと強くなりたいと思っていた。剣を振るう手はもはや震えず、一歩一歩が安定していた。
「これで君を剣士と呼べるな」小雨の降る朝、老人は言った。
雨の中、二人は格闘した。木は二つに折れた。アーカーは枝を掴み、歩き続けた。小さな切り傷からは血が流れていたが、彼の目は消えることのない炎のように燃えていた。
四ヶ月目 ― 感覚が拡張し、闘志が高揚する 腐葉土に覆われた地面を歩くアーケルの足音は、もはや音を立てなかった。老騎士はもはや直接攻撃を仕掛けることはなく、森に潜みながら不意打ちを食らわせ、アーケルを実戦で試した。
アーカーは殺意を察知し、空気を切り裂く風の音を聞き分け、静寂の中から音を「聞く」ことを覚え始めた。襲撃の間、アーカーの反射神経は鈍くはなくなった。しゃがみ込み、腕を回し、攻撃をブロックし、反撃する術を習得したが、それでも勝利には至らなかった。
「君は剣術を練習するだけでなく、戦いの中で生きる術も学んでいるんだな」老人は初めて少し満足して、わずかに微笑んだ。
プラチナの髪の少女はだんだん口数が少なくなっていったが、練習から戻るたびに、温かいお湯の入ったポットと、森で摘んだ野生のベリーがいくつか置いてあり、遠くから彼を見つめる彼女の目は静かだが深い意味を持っていた。
五ヶ月目 ― 闘争本能と見えない憧憬 ある雨の夜、老人は突然アーカーを起こした。「出て来い。寝ている暇はない。」
薄暗い闇の中、闇のエネルギーを帯びた獣のような怪物が雨の中、咆哮を上げていた。アーカーと老人は力を合わせ、その怪物と戦った。本物の攻撃、本物の血、本物の生と死。
アーカーの肩には長い切り傷があった。袖は血で染まっていたが、彼は後退しなかった。慌てることさえしなかった。老人が獣の注意を逸らしている間に、アーカーは突進し、手製の槍を獣の喉に突き刺した――握手もせずに。戦いの後、老人は長い間アーカーを見つめていた。「これでお前はここで生き残れるぞ、アーカー」老人は長い間アーカーを見つめていた。
プラチナの髪の少女は黙ってアーカーの傷を拭った。彼女の瞳は静かで、悲しみと…誇らしさが混じっていた。その時、アーカーが優しく声をかけ、初めて彼女を呼んだ。「お名前は?」
少女は答えなかった。ただ優しく首を横に振った。そして手を伸ばし、寒さと痛みで震える彼の手を握りしめた。その時…アーカーは風に吹かれる音のように、再び「リリア」という名前を聞いた。
生後6ヶ月になる頃には、アーケルの体はすっかり変わっていた。引き締まった筋肉、決断力のある動き、そして冷静な目。薄暗い場所や視界の悪い状況でも、彼は様々な剣術を駆使して戦闘に臨んでいた。
しかしある夜、アーカーは淡い黄色の光が彼を取り囲む夢を見た。夢の中で、リリアがそこに立ち、彼の胸に手を置いた。何も言わず、ただ微笑んでいた。
アーカーは目を覚ました。心臓は今にも爆発しそうなほど激しく鼓動していた。体が内側から燃えるように熱くなるのを感じたが、制御は失わなかった。これは魔法覚醒の初めての形だった――以前の激しい爆発ではなく、安定し、落ち着いたものだった。杖を使って練習すると、打撃に光の痕跡が残り、まるでエネルギーに反応したかのように地面の草が裂けた。
「君は…思い出し始めているな。」老人はまるで独り言を言うかのようにささやいた。
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あたりは暗くなりつつあった。風が木々の間を静かに吹き抜け、虫の鳴き声が遠くで合唱を歌っているようだった。アーカーは大きな木の下に一人座り、杖を足元に静かに置いていた。額にはその日最後の練習で汗がまだ玉のように浮かんでいたが、目は…ぼんやりと、どこかぼんやりとしていた。プラチナの髪の少女が近くで火を焚いており、温かい光が彼女の頬に反射していた。彼女は何も言わず、ただ黙っていたが、立ち去ることはなかった。まるで彼が必要とするなら、いつでも駆けつけるかのように。
アーカーは頭を上げて灰色の空を見上げ、軽く目を閉じた。昨夜の夢の中では… 黄金色の野原、ラベンダーの香りが風に漂っていた。白いドレスを着た少女が背を向け、強い風の中を歩いていた。プラチナの長い髪が風になびいていた。そして、かすかな声が聞こえた…「アーカー…」 ― かすかな声だったが、彼の心の中で雷鳴のように響いた。
アーカーは目をぱっと開いた。心臓が激しく鼓動していた。胸に手を当てると、奥底に眠っていた何かが動き出すのを感じた。「どうして彼女を知っているんだ?あの子は…誰だ?リリア?」
いや、隣にいる女の子のはずがない。だが同時に…二人の姿が揺らめき、重なり、そして崩れ去った。まるで、見覚えのある人物を映し出す、ひび割れた鏡のように。
プラチナの髪の少女は、いつものように静かに彼に温かいお湯の入ったカップを手渡した。アーカーはそれを受け取った。二人の指が軽く触れ合った――冷たく…それでいて、不思議な心地よさがあった。彼女は彼を見つめた。言葉はなかったが…理解しているような瞳だった。
「かつては…誰だったんだ?」アーカーは彼女を見ずに、まるで虚空に向かって尋ねるかのように優しく尋ねた。
少女は答えなかった。しかし、その時初めて、朝霧のように軽やかに口を開いた。「すぐに思い出すわよ。記憶は失われていない。ただ…光の中に閉じ込められているだけよ。」
「ルリアは……あなたを選んだ。」
アーカーは驚愕した。「君…ルリアを知ってるか?」
少女はそれ以上何も言わなかった。ただ彼の手を軽く握り、そして引っ込めた。その瞳は、この暗い夜にリリアの魂のように明るく燃える炎を見つめたままだった。
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そこはもはや野原ではなかった。星空の下、廃墟となった寺院。崩れかけた石柱の間に、彼は一人立っていた。深く温かい女性の声が響いた。「道は、自分自身を見つけることではなく、何者になるかを選ぶことなのです。」
「アーカー、前へ進め。どんな痛みがあろうと、どんな暗闇があろうと…光は必ず君を待っている。」
アーカーは早朝に目を覚ました。最初の陽光が木々の間から差し込んでいた。プラチナの髪の少女は、消えゆく炎のそばで丸くなって眠っていた。アーカーは長い間彼女を見つめていた――そして初めて…心が和らぐのを感じた。
草はまだ露で濡れていた。朝風が地面を撫で、涼やかな息を吹き込んでいた。アーカーは早朝に目覚め、追放された老騎士から出発前に教わった剣技の基礎練習をしていた。白金色の髪の少女は、木の傍でまだぐっすり眠っていた。その寝顔は、まるで安らかな陶器の彫像のようだった。しかし、アーカーは何かが…おかしいと感じていた。
彼女ではない。だが、向こうの森――風も吹かず、鳥のさえずりもない場所。本能がそう告げた。アーカーは間に合わせの槍を握りしめ、少女に視線を向けた。彼女を怖がらせてはいけない。だが、その時…
割れ目!!!
枝が折れる乾いた音がした。小川の向こう側の茂みから、小さな人影が飛び出してきた。獣ではなく、子供だった。泥だらけで、恐怖に満ちた顔をしていた。よろめきながら水辺まで這い上がり、絶望の叫び声を上げた。「助けて…奴ら…追われている!」
アーカーは唖然とした。彼が反応する間もなく、まるでどこからともなく、背の高い黒い人影が三人、子供の背後から飛び降りてきた。彼らは黒いマントを羽織り、逆三角形の仮面で顔を覆っていた。紛れもなく、地球血盟団の使徒たちだった。
アーカーは子供を後ろに引っ張った。使徒は立ち止まり、指導者は首を傾げてアーカーを見た。嗄れた声で軽蔑を込めて言った。「またか…選ばれし者よ、その光はまだあなたの心を蝕んでいないのか?」
アーカーはハルバードを握りしめた。記憶も、彼らが誰なのかも、なぜ自分を狙っているのかも分からなかった。だが、彼らの目に宿る敵意は本物だった。背後に怯える子供も、同じだった。銀髪の少女は立ち上がり、距離を保ちながら、三人の使徒を…奇妙な光で見つめていた。
使徒は手を掲げ、その掌から漆黒の魔力がほとばしった。「その心臓を渡せ。さもないと、お前とこの子は闇に消えてしまうだろう。」
アーカーは一秒も待たずに「逃げろ!」と叫んだ。
少年は後退したが、三使徒の一人の影が彼の背中を遮った――鋭い手が振り上げられた。アーカーは手製の槍で空を切り裂き、間一髪で攻撃を止めた。しかし、衝撃が彼の腕を震わせた。手遅れだった。
突然、太陽のように明るい光の玉が飛来した。まばゆい光線が漆黒の闇を貫いた。プラチナの髪の少女が手を掲げると、その掌から光が放たれ、使徒たちを一瞬にして撃退した。
アーカーは慌てて彼女を見た。「あなたは…本当は誰なの?」
彼女は答えなかった。しかし、彼女の目は一つのことをはっきりと告げていた。彼はもうこれ以上留まることはできない、と。「足跡が見つかったのよ」――少女は静かに言った。視線は依然として敵に向けられていた。
「ここから逃げなければ…もっと強い奴らが現れる前に。」
アーカーは歯を食いしばり、震える子供に視線を戻した。彼はそれを拾い上げ、プラチナの髪の少女に視線を向けた。「あなたはどうですか?」
彼女は微笑んだ。初めて――優しく、それでいて不思議なほど深い微笑み。「私も一緒に行くわ」
考える暇などなかった。森の中を駆け抜けるうちに、背後の光は消えていった。アーケルの正体、リリアの力、そしてあの奇妙な少女の秘密が、彼を待ち受けていた。「私は何者だ? なぜ『選ばれし者』と呼ばれるのか?」
「そして…なぜ彼女は、そうする必要がないのに、いつも私と一緒に来るのか?」
アーカーは子供と槍を手に握りしめ、運命が決定づけられた遠い場所へと向かった。頭の中で疑問が渦巻いていた。
夜はとっくに過ぎ去り、空の星々も厚い雲を突き抜けることができなかった。森の風は冷たくなり始め、湿った土と腐った葉の馴染みのある匂いを運んできた。アーケルは大きな木の下で立ち止まった。右腕から肩に駆け上がる激痛に、これ以上先へ進むことは不可能だった。
彼は子供を地面に落とし、木の根に立てかけようとした。プラチナの髪の少女は相変わらず黙って後ろをついてきて、何も言わなかったが、その目には依然として警戒心が満ちていた。アーカーは木に重く寄りかかり、呼吸が速まり、心臓が胸から飛び出しそうなほど激しく鼓動した。「僕たちは…どこまで行ったんだ?」
「どうしていつも走らなきゃいけないの?」
「こんな人たちに追い詰められるなんて、私は何を間違えたんだろう?」
アーカーは顔に手を当てた。両手は埃と乾いた血で覆われていた。今日の一歩一歩が、自分が巨大なゲームの中で生き延びているただの人間であることを思い起こさせてくれた。そして、そのゲームの中で、彼は自分の役割さえも知らなかった。
隣の子供は疲れ果てて眠り込んでいた。少女は黙ったまま、近くの木に寄りかかり、森の闇に浮かぶ影のように膝を抱えていた。アーカーは葉の間から顔を上げると、かすかな光が…どこか遠くからきらめいていた。その光は薄暗く、柔らかだったが、魔法のようではなかった。「あれは…光なのか?」彼は呟き、拳を握りしめた。
光があれば…それは人が居るということ。街があるということ。
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翌朝、まだ太陽は昇っていなかった。アーカーは子供を背負い、片手に手製の武器を持っていた。銀髪の少女は彼の数歩後ろを歩き、辺りを見渡していた。二人は膝丈ほどの草が生い茂る低い斜面を過ぎた。そして、霧のカーテンが晴れるように――早朝の光の中に小さな町が姿を現した。
大したことはなかった。緑の苔むした屋根の木造家屋が数十軒、煙突からはかすかな煙が立ち上る。井戸から水を運び、檻から動物たちを連れ出す人が数人いるだけ。すべてが奇妙に静かだった…まるで夢のようだった。アーカーは長い間そこに立ち尽くしていた。微動だにしなかった。「こんな場所を最後に見たのはいつだったかな…?」
「記憶が消える前に?」
プラチナの髪の少女は彼の傍らに立ち、静かに遠くを見つめながら街を眺めていた。アーカーは仰向けに寝ている子供を見下ろした。子供は世話を必要としていた。彼自身もそうだった。しかし…信じられるだろうか?
彼はまるでよそ者のように町へ足を踏み入れた。誰も止めなかった。何人かの好奇の視線が通り過ぎたが、恐れや警戒心はなかった。老婆さえ立ち止まり、彼と子供を見つめ、優しく言った。「よそ者?お疲れのようですね…ホーレンさんの宿はあの小道の突き当たりにありますよ」
脅迫も尋問もなし。ただ…平和。
アーカーは少し驚きながら微笑みながら彼らを見た。「なぜ彼らは私のシャツについた血について何も聞かなかったんだ?」
「なぜ後ろにいるプラチナの髪の少女に気づかなかったんだ?」
「なぜこの場所は…私が今まで経験したことのないような場所なのだろうか?」
アーカーは、静かな場所ほど、その背後に隠された深い何かがあることを知っていた。しかし、だからこそ彼は不安だった…もしこの場所が現実のものならば、本当に平和な場所ならば、自分はまだそこに住む資格があるのだろうか?「私は何を持っていけばいいのだろう?」
「それは血か…それとも光か?」
彼は振り返って少女を見た。少女は数歩離れたところに立っていて、まるで彼の決断を待っているかのようだった。そして…彼は軽く頷いた。「しばらくここにいよう」
アーカーは古い宿屋の木壁のそばに腰掛けていた。埃っぽい窓から差し込む朝日が、かすかに震える彼の手を優しく照らしていた。目の前には、昨夜プラチナの少女が肩に掛けてくれた薄い外套が、まだ少し温かく感じられた。そして、彼の隣には…誰もいなかった。
子供はいない。プラチナの髪の少女もいない。アーカーだけが一人きりだった。彼は飛び上がってドアを勢いよく開けた。一瞬、光に目がくらんだ。道は以前と同じで、村人たちも普段通りで、空気は彼が到着した時と変わらず新鮮だった。ただ、彼と一緒にいた少女や子供を見た人は誰もいなかった。
「そんなわけないだろ…」アーカーは呼吸を落ち着かせながら呟いた。
彼は小さな町を駆け回った。人々に尋ね、顔を描写した。誰もがただ首を横に振った。「一人ぼっちかよ」
「あなたの後ろには誰も見えませんか?」
「熱はありますか?」
アーカーはよろめきながら宿屋を出た。あの記憶も、あの感情も、暖炉のそばで過ごしたあの寒い夜も……あれはみんな偽物だったのだろうか? 突然……額にナイフのように鋭い痛みが走った。そして――誰かの低く冷たい声が脳裏に響いた。「お前はそんなに弱いのか、ルリアに選ばれし者め?」
「ただの幻覚でこんなに優しくなられたんですね…」
アーカーは恐怖に目を見開き、地面に倒れ込んだ。そして悟った。あの子も、プラチナの少女も、そしてどこか懐かしい感覚も…すべては、地球血盟団が仕組んだ演技に過ぎなかったのだ。
使徒。影に潜む男。幻術と感情操作の達人――彼はアーカーを自らの心へと誘い込んだ。
「どうして気づかなかったんだろう?」アーカーは、あの少女の存在がなくなったことで再び孤独を感じ、泣き崩れ始めた。
「どうしてこんなに簡単に信じてしまうんだろう…こんなに温かいものを?」
アーカーは拳を地面に叩きつけた。手のひらからは血が流れていた。だが、信頼されたいという自分の欲求に騙されたと感じることほど辛いことはない。
彼は悟った。アースブラッド教団が求めているのは、ライリアの光の心だけではない。彼らはそれを歪めようとしているのだ。罪悪感、疑念、そして孤独によって形作られた道具、玩具に変えようとしているのだ。
「彼らはあなたを殺すのではない。心の中で自殺することを望んでいるのだ。」
「少しずつ…」
アーカーは立ち尽くし、手製の槍の柄を握りしめていた。欠けてはいても、荒れてはいても、彼にとってはそれが唯一の現実だった。手から血が柄に染み込んでいたが、彼の目は今、より冷たく、より澄んでいた。「お前は…まだ準備もできていない相手とゲームをしている」
「でも、準備はできていますよ。」
「ルリアが私を選んだのではなく…私が、自分の道を選んだのです。」
アーカーは踵を返し、小さな町から出て行った。風が木々を揺らし、遠くから見守る使徒たちの邪悪な笑い声のように響いた。しかし、この時、アーカーの目にはもはや恐怖はなかった。彼は本物と偽物の境界線を見抜いていた。そして、それは新たなアーカーの始まりだった。強くなるために、あえて痛みに立ち向かう者へと。