プロローグ:死んで起きたら人間でした
新連載です!
ある日ころっと死んだゴキブリが、転生して人々に好かれもてはやされるために奮闘する話です。
(…くそっハズレか…?落ち着けるとこねぇじゃねぇか…)
真っ暗な空間でそう考える彼は──G、つまりはゴキブリだった。
(人間に見つかって潜むとこなくなって移動してきたが…こんなとこにいられるかっ!!もっと落ち着ける所に行くんだ俺は!!こんな家さっさとおさらばしてやる!!)
そう思いサッと飛び出て―…この家の持ち主の中年の女性と目が合った。
「きゃああああゴキブリ!!とうとう出てきたわね!!」
(くっそがあああなんで出くわすんだよついてねぇな!!)
(だがしかし、俺はもう既にあの殺虫剤は克服済み…ゴキブリってのは殺虫剤を克服できたりするんだぜ…ふっ、言わば究極生命体ゴキブリとなった俺は最強!!
後悔するがいいさこれが俺の生き方──…)
パァァァァァン
(…は?)
(あれ体が動かん、馬鹿な、なんでだ!?)
「ふぅ、今回は間に合ってよかった。
やっぱり新聞紙でたたくのが早いわね。
袋取ってこなくちゃ」
──ああ、俺、叩かれて死んだんだ。
…え?俺叩かれたの?ゴキなのに?速さが売りのゴキブリが叩かれて死ぬとかやだぁぁダサいいいぃぃ…
…そう考えながら、ゴキブリの意識は薄れていった。
……………
…………
………
「…はっ!?」
目を覚ますと、そこは外だった。
裏路地のような所にいるようで、石畳の感覚とヒヤリとした夜風が心地良い。
(路地か…薄暗くてジメッとしてて、けど風は通っててなかなかいいじゃねぇか…だが見たことない景色だ…近所はマスターしたはずなんだが…ってことはあれか?あのオバサンが仕留め損なったまま捨てて、ゴミ処理場で処理される前に奇跡的に放り出されて生き残ったってことか!?
ラッキー!!)
…と、考えたが―…
一概にラッキーとは言えない。
それならまた住むところを探さなければ。
(…ま、まずはこの辺の地形把握するか。
叩かれた衝撃に足が潰れてないといいんだが…)
そう思い、体を起こした──はずだった。
「うおおおうわっ!?」
その目線はいつもの何十倍も上にある。
「…は?おいおいこれもしかして…」
恐る恐る前足を見る。
そこには人間の手があった。
「はぁ!?人間になってるぅ――ー!?!?」
(いやいやまて考えろ──なんでだ!?
普通にはありえないこと…いや可能性は2つか。
前に入った家の人間が持ってた本のやつだ―…
ぶつかって入れ替わるやつか、転生か?
…いやまてまて、入れ替わりなら俺は良くてもゴキブリになった奴悲惨だろ!いきなり人間から叩かれて死にかけのゴキブリに大転落だぞ!?てか俺ぶつかってねぇし!まて、強く衝撃が加わったという意味ではあのオバサンと…ん、なら俺がオバサン!?
いや無理だ無理だ、考えないようにしよう…うん、そうだこれは転生、転生ってことでいいな、うん!)
一呼吸おいて、その場にドサリと座り込む。
「…はぁ、転生、か…」
…なんで、俺なんかのただのゴキブリが。と思う。
けどそれ以上に。
「…ようやく理想の一生歩めんじゃね!?
人に好かれ、慕われもてはやされ憧れられる存在になれんじゃね!?
さらば一生嫌われ続けたゴキブリ生!
ようこそ最高の人生!
俺はこの世界で!人に好かれる存在になってやるぞおおおおおっ!!!」
そう思うと自然に口角が上がる。
右手をぐっと握って天にかかげ、1人意気込んだ。
次回から本格的に進んでいきます!
もしこの話が面白そうだと思っていただいたならブックマーク等々で応援してくださるとモチベに繋がります、
よろしくお願いします!