それは突然な物でⅢ
あれから時は経って昼休み。涼太と昼飯を食べようと弁当を準備していると、瑠衣が気まずそうに篠田さんの元へ向かっていた。
俺はそんな瑠衣に気づかないフリをして弁当へと箸を伸ばした。その瞬間。
「ちょ、ちょっと!陽介!」
「……んだよ瑠衣。と篠田さん?」
突然声をかけてきた瑠衣と、その隣には篠田さん。一体なんだと言うのか。俺は思わず涼太と顔を見合せた。
「あのね、良かった一緒に食べない?」
「……え?」
篠田さんの口から出たのは1つの提案。いつもは2人別に食べているのに、今日はどうしたと言うのか。
「……たまにはいいっしょ!?」
「お前はなんでそんな怒ってんだよ」
嫌なら断れば良いだろうに。何故怒りながら一緒に来たのか。今日の瑠衣はやたらと怒りっぽい気がする。俺、何かしたか?
「俺は良いよ。陽介は?」
「仕方ねぇな。今日だけだぞ」
そう言って頬をかきながら瑠衣を見ると、一瞬嬉しそうにしたのも束の間。すぐに不機嫌になった。だからなんなんだよ今日のお前は。
「……今日、だけ?」
「そうだよ。いつもは別に食べてるだろ?」
「あ、あのね柴野くん───」
篠田さんが何かを言おうとした瞬間。今度は教室の前扉から俺を呼ぶ声がした。見ればそこには染谷先輩。今度は一体何の用なのか。
「陽介くん、良かったら一緒に……あら、先客がいらっしゃったのね」
一緒に、と言いながら瑠衣と篠田さんに気づき困ったように手を頬に当てていた。俺も内心困っていたが、この状況を打破するにはこれしかない。
「もうこの場の全員で屋上で食べないか?」
結果、全員で屋上へ来た。俺、涼太、瑠衣、篠田さん、そして染谷先輩。なんなんだよこのメンバーと思わなくもないが、これが最善だと思った。あの時は。
「あ、あーしが陽介の隣に座りたいんですけど!?」
「あら、私もよ」
何故か染谷先輩と瑠衣が隣を争っている。気づけ。両側が空いている事に。こうなったら誰が隣でも同じだ。その事に気づかせる為に声をかけようとしたが、どうにも入れない。
2人の雰囲気がとてつもなく怖い。あの染谷先輩から怖いオーラが出ている。
「る、瑠衣ちゃん。柴野くんの右か左どちらかに座ればいいんじゃないかな。その反対に先輩が座れば……」
「……確かにそうね。えーと」
「あ、篠田 三稜です」
「篠田ちゃん。ありがとうね」
篠田さんが勇気を出して2人の仲裁に入る。こういうのはやはり女の子同士の方が解決しやすいのか?染谷先輩も瑠衣も落ち着いた。結論から言えば左に先輩。右に瑠衣。
「わー、陽介両手に花だね」
「うっせ」
涼太にからかわれながらも弁当を食べ始める。それを見て全員が食べ始めたが、なんとも騒がしい昼食となった。