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フィーロゾーフィア  作者: とり
第48話 自由研究について
99/137

自由研究について-④



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ※注意です。


 『マンホール』『落下』などの表現が出てきます。

 抵抗ていこうのあるかたは、【もどる】をおすすめします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などとは、一切いっさい関係ありません。





   ◇



 血まみれになったコギトにつれられて、エチカと小夜子さよこはフィーロゾーフィア往来おうらい沿ってくだっていった。


 ついたのは第五等級街区のほそい路地。

 木と石でできた家々がならぶ、王都の中層に位置する中流階級の住まう区画だ。


 エチカの雑貨屋ざっかやけん自宅のある第七等級街区からは、さほど離れていない。


 エチカに錬金術で再構成してもらった竹箒たけぼうきを片手に、トコトコ歩くトンガリ帽子ぼうしの魔女を先頭に、一行いっこう閑静かんせいな住宅街をすすんでいく。


「あっ、ほら見えた。あそこよ」


 コギトがTティー字路じろに差しかかったところで突きあたりを指差した。


 午後二時(にじ)の炎天下に、フードを目深まぶかにかぶったローブすがたの人物がいる。


 あやしげに装飾した、紫を基調としたデザインのテーブルをはさんで、二人ふたりの女性と対面していた。


 一人ひとりはつきそいらしく、立ったまま座席の人を待っている。

 座っているのは十代後半ほどの女性で、どちらも大学生か新社会人といった風情ふぜいだった。


 ローブすがたの占い師がげる。


「危険がせまっています。これから行くとおっしゃっていたショッピングモール。北側のぐちにつづく道路には、決して近づかないように。さもなければあなたは死ぬでしょう。深い穴に落ちて」


「マンホールにでも落ちるのかな?」


 つきそいのショートカットの女の子が横から言って、座っていたセミロングに茶色い染髪をほどこした女性が「イヤああ」と顔を両手でおおう。


「そんな恥ずかしい死にかたえられない。あんなくさくて暗くて変な空気が充満じゅうまんしてそうな場所に落っこちるくらいなら、いっそここで首をったほうがマシよおおお」


 大仰おおぎょう悲嘆ひたんにくれる茶髪の女性をうしろからながめて、


「サヨコ? どうかした?」


「いえ……べつに……」


 マンホールに落っこちて『日本にほん』からこの世界にやってきた小夜子さよこは、赤くなるやら青くなるやら、うつむいた。


 マンホールの一件いっけんは、まだエチカにも誰にも言っていないことだが、ますます言いづらくなった。


 できれば一生いっしょう言いたくない。


「まあいっか。あの客がけたら声かけてみましょ」


「たのむわよエチカ」


れなれしくすんな」


「なんであたしにだけそんな冷たいのよ!」


 ようすのおかしい小夜子――頭がおかしいのはいつものことだが――から、占い師のほうに視点をもどすエチカ。肩を怒らせるコギトは放っておく。


 占い師が『お守り』として変な猫の土鈴どれいを客に渡し、それを持って二人ふたりの女性は退席した。


 道の向こうに消えていくのを見送って、エチカ、小夜子さよこ、コギトの三人が占い師のテーブルに近づいていく。


「いらっしゃいま――」


 ローブでただでさえ目元が隠れているのに、口元くちもとにまでヴェールがかかり、完全に顔つきが分からない。


 ただ、声はたしかに、事前にコギトが言っていたとおり若かった。


 いや、むしろ幼い――。


「ごぶさたね。国王からの出店許可は、ちゃんともらっているのかしら」


 エチカはスツールには目もくれず、たずさえた錬金術師の長杖ロッドに身をもたせかけ、占い師を見下ろした。


 占い師のほうもまた、見た瞬間に相手が誰だか合点がてんしたようだった。はたから見ていたコギトと小夜子のあいだには、『やっぱり知り合いだった』という認識が決定づけられた。


 占い師が立ち上がる。

 両手をバンとテーブルについて、跳びはねるように。


「あー!」


 フードと口元くちもとおおいを、占い師はジャマくさそうにひっぺがした。


 バレッタでひっつめた、サラリとした銀色の長い髪が外気にさらされる。

 こぼれそうなほどに大きな、紅玉ルビーもかくやという赤い両眼がキラキラかがやく。


 身長は小夜子さよこよりやや高いほどだが、挙措きょそには落ちつきがなく、あぶなっかしい。


 顔中でお日さまみたいに笑って、その占い師――少女は、声をかけてきた若い女錬金術師にアイサツを返した。


「ひさしぶり、エチカねえさん!」




                つづく




 

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