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フィーロゾーフィア  作者: とり
第31話 小夜子帝国(さよこていこく)について
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小夜子帝国について

 




「わーい!」


 (どく)の雲の上の国フィーロゾーフィアで、小夜子(さよこ)はどっすんどっすん()びはねていた。

 小夜子というのは黒いサラサラロングヘアにカチューシャをつけた、ワンピースすがたの十四才の女の子である。

 それ以上のことについてはべつに知らなくてもよろしい。


 知らんくてもべつに死なへんしな。

 知ったからゆーてなんかええことがあるわけでもないし。


 ほんで……

 なんや……。



「きょうからここを、小夜子(さよこ)帝国(ていこく)にしまーす!」

「戦争でも仕掛(しか)けんのか」


 ドスンと売り()のフローリングに着地する華奢(きゃしゃ)小柄(こがら)な少女にエチカは言った。


 エチカ――クセのある長い金髪に金色の()、ノースリーブにミニスカすがたの若い女錬金術師(れんきんじゅつし)である。

 カウンターテーブルに座って、彼女は通販(つうはん)カタログをながめていた。


 朝の(はち)時と、本来ならここ『エチカ商店(しょうてん)』という名の自宅(けん)雑貨屋(ざっかや)をあける準備をバイトの小夜子ともどもしているところだが、いまは店が夏やすみ中なのでかんけいない。


「だいたい『ここをサヨコ帝国にする』っつったけど、どこをあんたの国にするのよ」


「なに言ってんですか。ここですよ、エチカの家です。ジャンプしてまで位置情報提供(ていきょう)してんのにわかりませんかねえ~?」


(ころ)すぞ」


「ごめんなさい」


「すなおでよろしい」


「で、きょうが小夜子帝国のできた日なんで、きょうを建国記念日(けんこくきねんび)にします!」


「建国記念日?」


「なーんだエチカ、建国記念日も知らないんですか?」


「知ってるわよ。その日が国民(こくみん)休日(きゅうじつ)になるていどには」


「それだけ知ってりゃじゅうぶんです。わたしの建国により、きょうはいまからおやすみとなります。おやすみにしまーす!」


「すでに私の家と土地はあんたにのっとられてフィーロゾーフィア王国から独立(どくりつ)したことになってんのにびっくりなんだけど。ってゆーか『帝国(ていこく)』ってことはすでにどこかの国を併呑(へいどん)するか合併(がっぺい)するかしてるってわけで」


「あとでします」


「帝国とは?」


「それはさておきね、思いたったが吉日(きちじつ)なのでね、ついさっき思いついたのでやってみました」


「建国記念日ほしさに?」


「いやわたしの国とお城と端女(はしため)たちもほしいですけども」


「やすみもほしいと」


「そうですね。やすみとカネはいくらあってもこまりませんのでね」


「うちの店も世間(せけん)もいま夏やすみまっさかりだけど、そのなかにやすみの日をつくっちゃうと。それとものこりの夏やすみとひきかえにいまつくったあたらしい国のたった一日(ついたち)のやすみをとるのかしら」


 小夜子(さよこ)はジャンプするのをやめた。

 両手を大きくあげて、()のびの運動のポーズで宣言(せんげん)する。


小夜子(さよこ)帝国(ていこく)をつくるのはまたこんどにします」

「そうしなさい」


 エチカはショートブーツのページにふせんをつけて、頬杖(ほおづえ)をついた。


 小夜子は二度寝(にどね)のために、二階(にかい)の私室にあがっていった。



 それから――

 小夜子(さよこ)帝国(ていこく)は、建国(けんこく)の日をむかえることはなかった。



 小夜子(さよこ)も思いつきでいうたもんやからな。

 わすれてしもたんや。




 

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