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フィーロゾーフィア  作者: とり
第26話 人混みについて
66/138

人混みについて



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ※注意ちゅういです。


 ・本作品は、【ガソリン】、【火炎放射器かえんほうしゃき】、【焼きはらう】などの表現をふくみます。すこしでも抵抗ていこうのあるかたは、読まないことをおすすめします。







 ある(どく)の雲の上の国フィーロゾーフィアの(みやこ)に、一人(ひとり)小夜子(さよこ)一人(ひとり)のエチカがいた。

 二人(ふたり)昼食(ちゅうしょく)を食べに商店街(しょうてんがい)へ出てきたのだった。


「うわっ……ひどい人混(ひとご)み……」

「日曜日だしねえ……こりゃ日を見誤(みあやま)ったかな」


 エチカは(ひたい)に手をかざして、道路に()()する人の(なみ)をながめた。


 長い金髪(きんぱつ)に金色の目の、十八才の女錬金術師である。まだ若いながら、錬金術(れんきんじゅつ)大国(たいこく)であるフィーロゾーフィア国内でも随一(ずいいち)の知と技を(ほこ)英才(えいさい)だ。


 (かた)を出した赤色のシャツにミニスカートといった()()ちで、小さなショルダーバッグをぶらさげた(さま)年相応(としそうおう)に遊んでいそうな雰囲気(ふんいき)だが、両手に()めた白い作業用(さぎょうよう)のグローブが、どこかしら彼女を職人風(しょくにんふう)仕立(した)て上げている。


 そんなエチカの(よこ)で、小夜子(さよこ)は頭(ひと)(ぶん)低い位置から抗議(こうぎ)の声を上げた。黒くて長い髪に、黒い両目、(なつ)用のワンピースにカチューシャすがたの、十四才の少女である。


「えーっ。じゃあ今から帰って大人(おとな)しく自分で作ったごじ(めし)でも食らってろって言うんですかっ」

「そこまでは言ってないけど」

「はあ……」


 小夜子はガックリとうなだれた。


沢山(たくさん)の人がいるってのは、ただその場に立ってるってだけで体力(たいりょく)使いますよね……」

「そういやサヨコは人の多いトコ苦手なんだっけ」

「はい……」

「私も(にぎ)やかなのは苦手だけどさ、そこまでグッタリするってのはほとんどないのよね。どんな感じなの?」

「どうって……フツーに近くにいる人の後頭部(こうとうぶ)灯油(とうゆ)でもぶっかけて火炎放射器(ほうしゃき)で何十人かもろともその(へん)を焼き(はら)ってしまいたいと思うくらいですけど」

「ふーん。じゃあ同じように考えている人がこの(ひと)いきれの中にもう()、三十人はいてもフシギはないってわけね」

「そうですね」


 エチカも小夜子(さよこ)も、道路を闊歩(かっぽ)する老若(ろうにゃく)男女(なんにょ)を同時にながめた。


「そう考えると、混雑(こんざつ)ってのはわりと頻繁(ひんぱん)に起こってるのになんの事件も起きないってのは、あんたみたいな犯罪的思考(しこう)者でもちゃんと自制心を(はたら)かせてて、平和を維持(いじ)するのに貢献(こうけん)してるからってことなのね」

「あっ、そうですね。というわけでエチカ、わたしに盛大(せいだい)な感謝をささげてください。エンリョはいりません。この平和の使者(ししゃ)に、ドーンと食べ放題(ほうだい)の焼き肉おごるなり、高級料理店のメニューを全制覇(せいは)させてあげるなり、それはもう豪快(ごうかい)に」

「いやよ。しっかしサヨコ、あんたヤケ起こすだけなら灯油(とうゆ)とマッチでもうええやろってところを、わざわざ火炎放射器(ほうしゃき)まで持って()たいってあたりに(さっ)するものがあるわね。あとガソリンじゃなくて灯油っていうチョイスになけなしの理性(りせい)を感じる」

「わかっていただけてなによりです」


 二人(ふたり)は通行人の(わき)を通りぬけて、ビル二階(にかい)のファミリーレストランに上がっていった。

 そんな感じで、フィーロゾーフィアは今日もなにごともなか(平和だ)った。







 んでいただいて、ありがとうございました。



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