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フィーロゾーフィア  作者: とり
第22話 たまごかけごはんについて
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たまごかけごはんについて

 




 カチャカチャカチャカチャ。


 生卵(なまたまご)を溶く音がする。醤油(しょうゆ)はすでに投下()み。


 日本(にほん)ではなくフィーロゾーフィアという(そら)の上の西洋風王国の食卓だが、小夜子(さよこ)の朝食は本日てんこ盛りのごはんに生卵(なまたまご)といったものだった。


 みそ(しる)もある。作った。

 みそは市販(しはん)のものだが。


 あったかごはんに、溶いた卵をかける。それを均等(きんとう)黄金(こがね)色になるまで(はし)でかき混ぜて、小夜子は対面の席でトーストをかじっている若い女に見せた。家主(やぬし)のエチカである。


「じゃーん。見て下さいエチカ。これ、(なん)だと思いますか?」


「山盛りごはんに生卵(なまたまご)をぶっかけただけの(なに)かね」


「ふふーん。これはねー、『黄金のごはん(ゴールデンライス)』っていうんですよ。あんまり知られてないでしょうけど、すっごい高級な料理なんです。いーでしょー」


 小夜子(さよこ)は元の世界で(かよ)っていた中学校では一度(いちど)も見せなかった笑顔でドヤッと胸を張る。

 エチカは金色の目を半眼(はんがん)にして、ハッと息を()いた。


「んなわけないでしょ。なーにがゴールデンライスよ。ただの卵かけごはんでしょ」


「知ってたならそう言って下さいよっ。なんで一回(いっかい)知らないムーブかましたんですか! いやらしい!!」


「サヨコのことだからまたしょーもないマネするんだろーなって思ったからカマかけてみたのよ。期待以上にしょーもなかったわ」


「くううっ……」


 あっけなく看破(かんぱ)され、小夜子は(くや)しがった。


 ハンカチがあったら()んでいただろう。しかし無いからテーブルクロスを噛むしかないのだ。


「はあ……そーです。ただの卵かけごはんですよ。いつも安価(あんか)で手軽においしい、庶民(しょみん)の味方です」


「とは言え今より(こめ)(たまご)の価格が2.5倍に跳ね上がり、食べざかりの幼気(いたいけ)な少年少女紳士淑女(しんししゅくじょ)にごはんのおかわりをやめさせるような事態(じたい)にでもなれば、高級品にもなるんだろうけど」


「やだなあエチカ、そんな日が来るわけないじゃないですか」


「来たらどうする?」


「えー」


 小夜子(さよこ)はエチカの質問に少し考えた。

 (こぶし)(かた)めて答える。


二度(にど)とそんな日が来ないことを(ねが)うばかりですね」





 

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