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フィーロゾーフィア  作者: とり
第21話 幸せについて
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幸せについて

 




 いつものようにカチューシャをつけた、いつものように黒髪ストレートロングの小夜子(さよこ)(十四才の女の子。本作の主人公)が、いつものようにワンピースを着て、居候(いそうろう)している家の庭のデッキチェアに寝そべっていた。


 雲の上の国であるフィーロゾーフィアは、本日も快晴(かいせい)だ。


 はじめは「雲の上なんだから雨になるわけないじゃないか」と決め込んでいた小夜子だが、実際はさにあらず。


 雨の時もある。


 朝からギンギラギンで気温三十度()えで、庭に()した洗濯物(せんたくもの)がカラッカラに(かわ)くな。うれしいな。といった蒼穹(そうきゅう)の下、あお向けに寝て、やることもなくダラダラ無為(むい)に時間を空費(くうひ)している小夜子は(ひと)りごちた。


「今日はこんなにお天気で、やることもなく、特にだれか来ることもなく、ただ漫然(まんぜん)とダラダラごろごろしてるだけなんて……最高ですよね~」


「……あのさあ」


 うろんな顔が小夜子を見下ろす。家主(やぬし)のエチカだ。


 金色の長髪と金色の()。手には作業用のグローブをはめた十八才の女錬金術師。学者だが、遊んでいても結果を出せるタイプの人らしく、服装は(かた)や脚をさらした、ハデ目の色彩(しきさい)のものである。


 エチカは外で読書でもと思って持ってきた資料を一冊(いっさつ)(かた)にかつぐようにして、ふぬけたツラをさらす小夜子をながめているのだった。


「あんたって、幸せ者よね」


「えへへ。うらやましいでしょー」


「ええ」


 ドヤっと破顔(はがん)する小夜子を、ドゲッとエチカは()り落とす。

 デッキチェアからあっけなく小柄(こがら)な身体がころがって、芝生(しばふ)にひっくり返った。


「痛っ! なにするんですか!」


「なにもへったくれもないでしょーが。ここは私の特等席よ。なに勝手に占領(せんりょう)してんのよ」


 入れ()わるようにエチカはデッキチェアにもたれて、本をひらいた。


 小夜子は座席の(ふち)にしがみついて不服を(うった)える。


理不尽(りふじん)です。せっかく気分はパラダイスだったのに……一気(いっき)に不幸のどん底ですよ……」


 科学史のページをめくり、持ってきていたペットボトルのミルクティーを一口(ひとくち)飲んで、エチカは(なか)(あき)れながら小夜子に言い返した。


「そんなことも言えるなら、あんたはやっぱり(しあわ)せよね」



 

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