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フィーロゾーフィア  作者: とり
第19話 生まれてきた意味について
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生まれてきた意味について

 




 フィーロゾーフィア王国、王都にある雑貨ざっか屋。

 店主の名を取って『エチカ商店』というその建物には、二人ふたりの女性が住んでいた。


 一人ひとりはエチカ。十八才の錬金術師である。

 長い金髪に金色の。クセのある前髪を、ヘアワックスとほそいヘアピンで格闘した結果、大きく分けることに成功している。

 かたや脚をしみなく出したのスリーブとミニスカといった格好がいつもの服装で、それは今日も変わらなかった。


 なんなら冬もかわらずそのルックスでいそうなものだ。今は夏だが。夏休みだが。


「たまに思うんですよねー」


 店一階(いっかい)のリビングダイニングで少女は言った。

 朝食のせきである。


 少女の名前は不知火しらぬい 小夜子さよこ

 雑貨屋の二階にかいに住む、もう一人ひとりの住人である。


 長い黒髪に大きなの、日本にほん出身の十四才。

 かつていた国には、フィーロゾーフィアをはじめとする、そらに浮かぶ島や大陸なんてなかったので、最初は仰天ぎょうてんしたものの、もうすっかりれたものだ。


 世話になっているエチカの家で、朝食のサンドイッチをついばみながら、小夜子さよこ嘆息たんそくした。アンニュイに。


「わたしがまれてきた意味って、なんなんでしょう。はちすいえまで振りててきて……」


「あんたさあ」


 蓮の家は極楽ごくらく浄土じょうどにあるという。

 極楽は平和で苦しみのない世界。そんなものを退しりぞけてまで、ふたたび穢土えどにやって来た意味はなんなのか。


 実際に小夜子さよこが極楽にいたわけではないので、比喩ひゆ的な表現にすぎないが。


 エチカもそれは分かっていたが、よもや目の前の少女が言葉通りの内容について思いをせているとも思えず、言った。


「『はちすの家を振り捨てて』ってフレーズを使いたかっただけでしょ」


「はい♡ きのうおぼえたばかりなんです」


 小夜子さよこは答えて、サンドイッチにかじりついた。





 

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