勉強について
――むかーしむかし(ではないが)のことじゃった。
あるお空の上に、エチカという若い女錬金術師と、小夜子という少女が暮らしていたそうな。
小夜子はある日、エチカにこんなことを言ったんじゃて。
「エチカー勉強おしえてください」
「は? なんで?」
「いやー、一応やっておこうかと。わたしだってさすがに無教養にはなりたくないですし」
「アリサかテレサに訊きゃいーでしょーが」
「ふたりは帰省中じゃないですか。それに、まえに錬金術の講義をおねがいしたときに、『エチカ様に訊けばいいではありませんか』って言われたんです」
「たらいまわしに遭ってるってわけね」
「そーですよ。エチカもわたしに立派な錬金術師になってほしいなら、懇切丁寧にご教授ください。さっ、早く」
「かったるいわねー」
エチカは自分の勉強の手を止めないで、小夜子にため息をした。
ひらいていたのはなにやら小むつかしい本で、それは小夜子がチラッと見ただけでは、わかるようなもんではなかったとさ。
「あんたの考えを知らないことには、こっちもなに教えたらいいか判別つかないのよね。つーわけで、今から問題出わよ。よーく考えた上で答えてね」
「はーい」
「じゃあいくわよ。3-1は?」
「2!」
「正解。じゃあ7-2は?」
「5!」
「はい正解。ここまでできるなら私が教えることは何もないわね」
「はあ!? なんでなんですか! わたしをどんだけ教養ないって思ってんですか!? 加減乗除くらいできますよ! それくらい知ってるでしょ!?」
そんなふうに小夜子は怒った。
なんだなんだ、エチカはてっきり小夜子の頭脳については足し算引き算くらいできるだろうていどには認めてくれていると、小夜子は思いこんでいたんじゃて。そういう類の怒りじゃった。
ひとさし指を立てて、エチカの言うことときたら、こんな具合のことじゃったとさ。
「なら最後にもうひとつ。以上の経緯からみちびき出されるあんたの今後の行動を述べよ」
「もー! エチカには教えてくれってたのまない!」
「はい正解。そんだけわかってりゃ自力で開拓していけるわよ。これからもね」




