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フィーロゾーフィア  作者: とり
第53話 吸血鬼について
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吸血鬼について-③

 



「はあ……。とんでもないもん飲まされた」


 少女はムックリと立ち上がった。コキコキと首を左右に振る。銀色のツインテールが頼りなく()れる。


 小夜子(さよこ)はカウンターテーブルの奥にうずくまっていた。

 咄嗟(とっさ)の判断だ。


 なぜ少女から隠れようと思ったのかは、自分でも説明ができなかった。


 フィーロゾーフィアの国王や、エチカが警戒を(にじ)ませる存在であるというのは理解している。だが覚醒(かくせい)した銀髪の少女からは、そうした理屈では通らない、本能的な――(あや)うさがあった。


 生物としての(かく)(ちが)う。


 食物(しょくもつ)連鎖(れんさ)の頂点が(じつ)はあの銀髪ゴスロリの少女――〈吸血鬼(きゅうけつき)〉で、人間はすべからく彼女ら種族の(はる)か下位にいる。

 そんな幻覚さえ確信めく、閾下(いきか)警鐘(けいしょう)


 (かか)えていた(つえ)の先端――白色に輝く〈エーテル(せき)〉が天板(てんばん)より高い位置にあるのに気付いて、あわてて横たわらせる。


 商品(だな)の前にいたシェリーが少女の注意を引いた。


「失礼ねー。文句(もんく)言いたいのはこっちだわ。あなたが吸血鬼(きゅうけつき)だって分かってたら助けてなかったわよ」


「だから他の連中は近寄らなかったってワケだ。こんなに可憐(かれん)幼子(おさなご)が弱っているというのに、薄情な国民性だな」


自衛(じえい)のためよ」


脆弱(ぜいじゃく)だな」


 (なげ)かわしい。と(かた)をすくめて、銀髪の少女はあたりを見回す。

 くんくん。小さな(はな)をひくつかせる。


「それより、なんだか美味(うま)そうな匂いがするぞ」


「これの匂いでしょ」


 シェリーは(たな)の中段から取り出したパウチを見せる。

 少女は忌々(いまいま)しい物を提示(ていじ)されたように目をすがめ、首を横に振った。


「まさか。生きている者の血だ。どこかに(かく)してるんじゃないのか?」


「そうだとしても、教えるつもりはないわよ」


「自分で見つけるさ」


 少女はチラ、とカウンターテーブルの方を見た。まっ白な(てのひら)を向ける。


 バガン!!


 丈夫(じょうぶ)な会計用のテーブルが破裂した。


 物陰(ものかげ)にしゃがみ込んで気配(けはい)を殺していた小夜子(さよこ)が、こまかな破片(はへん)の混ざる白煙の奥から赤い視界に引きずり出される。


「気付いてないとでも思ったか? とはいえこんな小娘だったとは、こちらとしても驚きだ。嬉しい驚愕(きょうがく)だ」


「はは……。どーも」


 まぬけにかがみ込んでいた格好から、小夜子はスカートをはたいて立ち上がった。

 自分の背丈(せたけ)ほどもある(つえ)を握りしめる。





             つづく


 

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