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フィーロゾーフィア  作者: とり
第50話 アニメについて
108/142

アニメについて-⑤

 


(そういえば父さんが子供(こども)のころって、紙芝居(かみしばい)があったって言ってたなー)


 思い出し(わら)いの内容は、エチカには言わなかった。


 エチカには、ここに来る前の世界――『日本(にほん)』にいた時の記憶は、『忘れてしまった』と伝えている。


 そうしなければ日本に送り返されてしまうからだ。

 といっても、この前閻魔(えんま)大王(だいおう)小夜子(さよこ)を〈ユックリッド(この世界)〉に移住(いじゅう)させる手続きをしておくと言っていたから、ひょっとすると、もう帰還(きかん)する心配も(のぞ)みもないのかもしれない。


 小夜子(さよこ)は庭のテーブルでアニメを見ながら、思い(かえ)してまた笑った。


 今は()き父が(おさな)いころ、公園に紙芝居屋(かみしばいや)が来ていたという。


 幼少期の父は、毎日のように紙芝居を聞きにいっていたらしいのだが、(とし)(はな)れた母にこの話は(つう)じず、「これがジェネレーション・ギャップか」とガッカリしていたのを覚えている。


 ふと思って、小夜子は(くち)にした。


「こうして(そと)()るアニメって、現代の紙芝居って感じですよね」


「サヨコ……」


 同意を求めたわけではなかったが。

 エチカから返ってきたのは、どこかしら感慨(かんがい)深げな声だった――。


「紙芝居ってなに?」


 ガチャン。

 小夜子はニコニコしたままフリーズした。


 エチカはフッと鼻で笑う。

 視線は小夜子と同じ方角(ほうがく)、『ボールペン(しん)ちゃん』を再生しているビデオプレーヤーを(なが)めたまま。


「じょうだんよ。あの国も、半世紀ほど前くらいまでは、手描(てが)きの絵をめくって裏面(うらめん)のセリフを(かた)()が読み()かせる、紙芝居屋(かみしばいや)ってのがあったんだって」


 エチカは黒い(すみ)となったものを一瞥(いちべつ)した。


 小夜子はエチカが『あの(くに)』を(おも)っているのだと直感した。


「エチカ」


「なに?」


「エチカにも、秘密ってあるんですね」


「あんたと同じていどにはね」


 エチカはソーダ(すい)を飲んだ。

 小夜子(さよこ)も飲んだ。


 そうして百二十(ひゃくにじゅっ)分のアニメを、二人(ふたり)で最後まで鑑賞(かんしょう)した。


 小夜子(さよこ)の十四年ほどの人生で、最も哲学(てつがく)的な時間だった。





                おわり




 

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