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フィーロゾーフィア  作者: とり
第50話 アニメについて
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アニメについて-④

 



 そらの向こうにマグナの姿が見えなくなり、手を振って見送っていた小夜子(さよこ)はテーブルに向き直った。


「んじゃ、わたしが()りてきたやつ()ますね」


「へーへー」


 小夜子がエチカの対面の席に座り、『ボールペン(しん)ちゃん』とタイトルの()られた、チップ状のソフトをケースから取り出した。プレーヤーに()()む。


 (かた)からふわりと何かが浮いた。

 見ると、エチカが小夜子の肩にいたサラマンダーをつまんで、自分のほうにつれていく。


 サラマンダーは、元々エチカの使役(しえき)する精霊(せいれい)だ。

 彼女はそのほかにも、()(すい)(ふう)の精霊を(したが)えている。

 ミニスカートに()いたベルトに()った、弾丸(ブレット)状の結晶がそれだ。


「どうしたんです――」


 ()いた矢先(やさき)、エチカの合図(あいず)を受けたサラマンダーがボッ! と火を()いた。


 火炎(かえん)の先には、だらりとぶらさげた新聞紙(しんぶんし)がある。

 紙に引火(いんか)するなりパッとエチカは手を(はな)し、めらめら芝生(しばふ)の上で燃えるままにした。


 ほどなく、火につつまれていた新聞が黒い(すみ)になる。


「読まなくていいんですか?」


「もう読んだ」


 ふきげんだ。

 エチカはイスに座り直し、おっくうそうに(ほお)(づえ)つく。


「私も()ていい? っつっても、(ことわ)らせる気ないけど」


「いいですよ。べつに何人で見ようと、()るもんじゃありませんからね」


 小夜子(さよこ)はボタンを押して、ビデオを再生した。


 イガグリ頭の幼稚園児(ようちえんじ)が、いろいろ破天荒(はてんこう)なことをして、周りを(パニック)乱混乱混乱あわててるにするギャグアニメだ。たいへんだ。そりゃたいへんだ。


 カア、カア。

 どこかでカラスの声がした。


「ふふふ」


 小夜子(さよこ)が笑った。


「なんかいいことでもあったの?」


「いえ、思い出し(わら)いです」


(しあわ)せなやつ」


 エチカは憮然(ぶぜん)と言った。

 作業用のグローブをつけた手を軽く振って、錬金術(れんきんじゅつ)を発動させる。


 その(へん)の空気から、()(もの)をつくり出す。


 グラスに(はい)ったソーダ(すい)が、二人(ふたり)の手元に生成(せいせい)された。


 本来、この世界の〈錬金術(れんきんじゅつ)〉は、〈エーテル(せき)〉という、術者の意志を大気(たいき)中の触媒(しょくばい)粒子(りゅうし)〈プネウマ〉に伝達させる物質と、〈錬金術師の工房(こうぼう)〉を表象化(ひょうしょうか)した美術品を一体化(いったいか)させた、〈錬金術師の(つえ)〉を必要とする。


 しかし、エチカはまだ十八歳でありながら、天才と(しょう)される腕前を持つ錬金術師である。


 (つえ)なしで、素手(すで)で錬金術を発動させ、そのへんのチリや空気から任意(にんい)の物を(つく)り出すなど造作(ぞうさ)もない。


 小夜子(さよこ)はソーダ水を飲んだ。

 『日本(にほん)』の(まつ)りの縁日(えんにち)販売(はんばい)されていた、ラムネと同じ味がする。





              つづく





 

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