アニメについて-④
空の向こうにマグナの姿が見えなくなり、手を振って見送っていた小夜子はテーブルに向き直った。
「んじゃ、わたしが借りてきたやつ観ますね」
「へーへー」
小夜子がエチカの対面の席に座り、『ボールペン芯ちゃん』とタイトルの貼られた、チップ状のソフトをケースから取り出した。プレーヤーに差し込む。
肩からふわりと何かが浮いた。
見ると、エチカが小夜子の肩にいたサラマンダーをつまんで、自分のほうにつれていく。
サラマンダーは、元々エチカの使役する精霊だ。
彼女はそのほかにも、地、水、風の精霊を従えている。
ミニスカートに巻いたベルトに吊った、弾丸状の結晶がそれだ。
「どうしたんです――」
訊いた矢先、エチカの合図を受けたサラマンダーがボッ! と火を吐いた。
火炎の先には、だらりとぶらさげた新聞紙がある。
紙に引火するなりパッとエチカは手を離し、めらめら芝生の上で燃えるままにした。
ほどなく、火につつまれていた新聞が黒い炭になる。
「読まなくていいんですか?」
「もう読んだ」
ふきげんだ。
エチカはイスに座り直し、おっくうそうに頬杖つく。
「私も観ていい? っつっても、断らせる気ないけど」
「いいですよ。べつに何人で見ようと、減るもんじゃありませんからね」
小夜子はボタンを押して、ビデオを再生した。
イガグリ頭の幼稚園児が、いろいろ破天荒なことをして、周りを混乱混乱混乱あわててるにするギャグアニメだ。たいへんだ。そりゃたいへんだ。
カア、カア。
どこかでカラスの声がした。
「ふふふ」
小夜子が笑った。
「なんかいいことでもあったの?」
「いえ、思い出し笑いです」
「幸せなやつ」
エチカは憮然と言った。
作業用のグローブをつけた手を軽く振って、錬金術を発動させる。
その辺の空気から、飲み物をつくり出す。
グラスに入ったソーダ水が、二人の手元に生成された。
本来、この世界の〈錬金術〉は、〈エーテル石〉という、術者の意志を大気中の触媒粒子〈プネウマ〉に伝達させる物質と、〈錬金術師の工房〉を表象化した美術品を一体化させた、〈錬金術師の杖〉を必要とする。
しかし、エチカはまだ十八歳でありながら、天才と称される腕前を持つ錬金術師である。
杖なしで、素手で錬金術を発動させ、そのへんのチリや空気から任意の物を創り出すなど造作もない。
小夜子はソーダ水を飲んだ。
『日本』の祭りの縁日で販売されていた、ラムネと同じ味がする。
つづく




