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フィーロゾーフィア  作者: とり
第50話 アニメについて
105/140

アニメについて-②

 



   ◇



 フィーロゾーフィア王国は、毒の雲の上にある。

 とは言え人間に有害な部分ははるか叢雲(むらくも)の下に滞留(たいりゅう)し、天空に()かぶ島や大陸のある部分に見えるのは、白く洗浄された無害な気体の(かたまり)である。


 その中のひとつである、王都フィーロゾーフィア()は、全体的に独楽(コマ)のようなシルエットをしていた。

 町の下層から上層への大動脈を、(そら)(りく)を仕切る(がい)(えん)部にめぐらせた、一本(いっぽん)の巨大なストリートが(にな)う。


 街区(がいく)(いち)から(じゅう)の等級に区分され、数字が大きいほど上部に近づくといった具合だ。


 『エチカ商店(しょうてん)』は、第七等級街区(がいく)にある店だった。


 小夜子(さよこ)とマグナは、メインストリートに(めん)したその小さな店舗(てんぽ)(はい)り、売り場を素通(すどお)りして、奥の庭へ出た。


 家屋側(かおくがわ)にしか出入口(でいりぐち)のない、あとは完全にレンガの(へい)(かこ)った、どことなく刑務所(けいむしょ)めいた体裁(ていさい)の裏庭である。


 広い芝生(しばふ)には、家主(やぬし)の使っているエアバイク(空飛ぶオートバイだ)と、小夜子のアンチグラビティ・キックボード(地面から少し浮いて滑走(かっそう)する、キックボード型の乗り物)が()めてある。


 別の(はし)には、別棟(べっとう)のように(もう)けた浴室(よくしつ)があって、そこと家屋(かおく)のあいだにだけ、石の通路がわたっていた。


 庭のほぼまんなかあたりに、屋外(おくがい)用のテーブルが出ている。


 日除(ひよ)けのパラソルを地面に()して、できた影の中、長い金髪の若い女性が、有線のヘッドホンをつけてビデオプレイヤーをながめている。


「あっはっはっはっ!」


 バカ笑いをする。


 (かた)を出したシャツに、ミニスカート、サンダルをつけてイスによりかかり、彼女は小夜子(さよこ)たちには背中を向けていた。


 小夜子は声をかけた。


「エチカ、なに()てるんですか?」


「アンパンヒーロー」


 キッパリ。


 エチカは短く答えた。

 また無言(むごん)になる。


 四角い画面の中では、アンパンの顔をした正義のヒーローと、ウイルスを様式化(ようしきか)したフォルムの悪役が、熱戦(ねっせん)をくりひろげている。


「どこに笑う要素(ようそ)があるんだよ」


 マグナが問うも、金髪の女はフンと言っただけだった。


「エチカ、()わってくださいよー。わたしも自分で()りてきたの()たいです!」


「えー」


 平生(へいぜい)より『(おと)(そと)()くものだ』と主張しているエチカである。


 彼女は基本的に、音楽もビデオも建物の(そと)視聴(しちょう)する。視聴しながら本を読む。


 屋内(おくない)でゲームをしたり、読書をしたりすることもあるが、それはよほど余裕(よゆう)のある時だけだ。


 いったいなんの余裕なのかは、小夜子(さよこ)詰問(きつもん)したことはないが、まあそういうものらしい。




                つづく





 

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