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フィーロゾーフィア  作者: とり
第50話 アニメについて
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アニメについて-①



 夏休み中のフィーロゾーフィア()である。


 フィーロゾーフィア王国の太宰府(だざいふ)に、『エチカ商店(しょうてん)』という一軒(いっけん)雑貨屋(ざっかや)があった。


 稀代(きたい)の天才錬金術師が経営(けいえい)している店である。 しかし今は休暇(きゅうか)中だった。


 従業員(けん)居候(いそうろう)小夜子(さよこ)は、大通(おおどお)りの坂道(さかみち)をウキウキと歩いていた。

 十四歳の、長い黒髪に黒い(ひとみ)の女の子だ。白いワンピースに、白のカチューシャでそろえ、首には父親の形見(かたみ)のペンダントを()っている。


 (かた)には自然界を(つかさど)四精霊(しせいれい)一柱(いっちゅう)、火の()トカゲ〈サラマンダー〉がチョコナンと乗っていた。


 小夜子の手にはレンタルビデオ(てん)のロゴの入った、小さな手提(てさ)(ぶくろ)がにぎられて、腕をうごかす(たび)に大きくゆれた。


「はやく家に帰って()ましょーっと」


「映画でも()りてきたの?」


 上空から、声。

 聞き()れた少年のソプラノに、小夜子はクイと首を(あお)がせた。


 (みじか)()ったダークブラウンの髪に、飛行(ひこう)用のゴーグル。パーカーに(たて)のマークのバッジをつけて、(うす)生地(きじ)のロングパンツを穿()いている。


 フィーロゾーフィア王家の次男(じなん)、マグナだ。

 十二(じゅうに)歳の寄宿(きしゅく)学生だが、夏休みのため王都に帰省(きせい)している。


「こんにちは、マグナ」


 エアボード((そら)とぶスケートボード、またはスノーボードみたいな乗り物だ)で空中遊泳していたところから、地上に(すべ)()りてきて、マグナは小夜子の横に立った。


 ()めれば二人(ふたり)乗りもできるボードを(わき)にかかえて、小夜子について歩く。


「こんにちは。今から帰るの?」


「そうです。それからは(いそが)しいんで、マグナとは遊べませんよ。ビデオ()るんです」


「べつにいいよ。(おれ)もおつかいでキミん()いくとこだった」


 ()()うように言って、マグナは通学にもつかえそうなショルダーバッグに()じこんでいた新聞(しんぶん)を取った。

 小夜子の目の前に()きつける。


「これは?」


「新聞。ってのは見りゃ分かるよな……。(おれ)もくわしいことは教えられてないんだけどさ、兄貴(あにき)がエチカに(わた)して来いって」


 マグナは言うと、新聞をカバンに直した。


「外国の新聞(しんぶん)なんだけどな。兄貴は購読(こうどく)してるんだ」


「はあ……いちおう為政者(いせいしゃ)らしいことしてるんですね」


「そうなのかな。うーん、そうなのかも」


 マグナは首をかしげながらも同意した。


 二人(ふたり)は坂なりになったメインストリートを、白い雲のたゆたう外縁(がいえん)をながめつつ歩く。


 昼下(ひるさ)がりの、うだるような暑さの中だった。

 雲だけでなく、なにもかもが白く感じる。


「もしよかったら、サヨコが渡してくれよ。(おれ)もめんどくさくってさ」


「イヤです。自分のことは自分でやってください」


「キッパリ言うなあ……」


 マグナは項垂(うなだ)れた。


 小夜子(さよこ)は小さな手提(てさ)げを振りふり、ビデオ鑑賞(かんしょう)したさに道を(いそ)いだ。



                つづく






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