表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィーロゾーフィア  作者: とり
第2話 バカじゃないことを証明せよ
10/138

バカじゃないことを証明せよ-⑤

 




(――(いき)が……!)


 小夜子(さよこ)は雲のなかを落ちていった。


 息ができない。

 全身(ぜんしん)にのしかかる風圧が、まるで内臓を押してなかの空気を押し()していくようだ。


 水蒸気(すいじょうき)のなかで(おぼ)れる。

 溺死(できし)する――


(なに……!? なんなのこれ!!)


 湿(しめ)っぽい空気には(ねば)()がある。その正体は不明なまま度合(どあ)いを増し、やがて空気自体が(あや)しい紫色を()びてくる。


 異臭(いしゅう)がする。

 まるで物が(くさ)ったような。


(どく)……っ!?)


 小夜子(さよこ)は直感した。


 ()ってはだめだと思いながらも、身体が言うことをきかない。

 (うしな)った酸素をわずかにでも取りもどそうと、肺が執拗(しつよう)に呼吸を(もと)めている。


 (むらさき)の気体はだんだん黒味を増していく。


()ぬ――)


 血流(けつりゅう)にぞわりとぶきみな感覚が()ざる。


 侵入(しんにゅう)しているのだ。

 得体(えたい)の知れない、しかし人体に有害なのはたしかななにかが。


 感覚が鈍麻(どんま)する。


 全身(ぜんしん)(しび)れる。


 (のう)みそがはたらかない。


 意識(いしき)がもうろうとする。


 視界(しかい)が暗闇につつまれる。


 それともそれは、雲の色なのだろうか――?


 ひゅん。


 一筋(ひとすじ)の光が飛来(ひらい)した。

 (くろ)くかすんだ世界を、銀の光線が(つらぬ)く。


 人影(ひとかげ)が見える。

 ()が伸びてくる。


(お(とう)さん……?)


 あたたかいものが腕に()れる。


 ――こっちへ()い。


 と言っているようだった。


 一瞬(いっしゅん)だけ視界があかるくなる。


 そこに()き父の微笑(ほほえ)みを見た気がして、

 小夜子(さよこ)安堵(あんど)につつまれて目を()じた。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ