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傀儡将軍  作者: 古河川シロイ
第1幕 鶴岡八幡宮暗殺編
1/5

零話 経時との別れ

この物語はファクションです。

史実に即した話とフィクションを混ぜた物語であります。

諸説あり。

「三寅様。私、もう、耐えられません……。出家します」


三寅のいる御所で北条経時は出家を宣言した。

御所には、三寅と経時の二人しか居なかった。

出家を宣言した経時に対して三寅は少し表情を曇らせていた。

共に鎌倉幕府の政治を担ってきた二人だったが、それぞれの思想がぶつかり、いつからか二人の仲は険悪なものとなっていた。

しばらく黙っていた三寅は口を開き、答えた。


「初めて会ったのは、京都だったか? 私も、お前もまだガキだった頃だ。あのときの私は京都に行くのが楽しみだった。父上がいたことも、経時がいたから」


「そんな滅相もない……」


経時は顔を伏せた。

三寅は話しを続けた。


「時に経時よ。最近どうも顔色が悪いようではないか。まさか流行り病ではあるまい?」


「まさか、そんな……」


経時は手を振り、否定した。


そんな経時の顔は少し汗が滲んで、青白かった。

経時はいきなり出家を志した訳だが、唐突であったこともあり、何か急かしているかのようだった。


流行り病にかかったのは本当なのだろう。

三寅は顔をしかめた。


「経時。お前はまだ私よりも若い。早く元気になって、私の補佐や、息子の補佐をしてほしいのだ。何とか出家はやめることはできぬか?」


三寅はお願いをするのだが、経時は首を横に降った。

それから涙を流す経時。

いくら頼んだとしても、経時の決心は硬いものだと分かり、諦めるしかなかった。


「そうか。もう良い。お前に何度、言っても無駄であるな」


「そうでございます……」


「そうか。であるならば、好きにするが良い。それから金輪際、私の前に姿を現すことは許さぬぞ。良いな?」


経時は了承し、一回頷いた。

それから経時は問いかける。


「三寅様は、これからの幕府をどうするおつもりでしょうか?」


「そうだな。私は……」


経時は三寅の答えを聞き、目を見開いて驚いていた。


「それは誠にございますか?」


三寅は口角を上げて、笑う。


「まだまだ、私はやれる! この幕府を変えられる!」


「そうでございますか……」


若々しくも宣言した三寅に対して、少々引きつった表情を見せる経時だった。


その後、経時は執権の職を降り、出家した。

一方、三寅は反幕勢力を取りまとめ、得宗の北条家を排斥しようとする騒動を起こすことになる。


それは後に、『宮騒動』と呼ばれ、後世に語り継ぐ大事件であった。


これはそんな大事件を起こす、三寅の物語である。

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