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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第十二話「生々流転」④

 これは、私の一度たりとも報われることのなく、主人公に憧れながら、その器ではなかったと思い知り、夢破れた一人の女の生き様の感想なのだ。


「……ち、違います! あとからなら、いくらだっていえます! そんな悲しいこと言って、自分の生き様を否定なんてしないでください! ハルカさんは……もっと胸を張るべきです!」


「そうかな? オッサムだけじゃく、ヤン少佐……タチバナ軍曹。私のせいで死んでいった人達なんて、両手の指に余るほどだ……。そして、私は結局、何一つなし得て無い……。だから言っただろ? 本物は違うってね」


「そんな事ありません! だって、ハルカさんはあのユリコちゃんからもその実力を認められて、憧れのお姉さまとか呼ばれたくらいなんですから! そんな人、帝国の子達にだっていないんですからね! だいたい、うちのユリコちゃんやゼロ陛下辺りを比較対象にするとか、その時点で間違ってます……! あの人達は私達から見ても、異常性の塊なんですから……例外中の例外……そう考えないとやってられないですって!」


 ……なんだそりゃ?

 あー、確かにおねーさまとか言われて、腕組まれたりとかあったなぁ。


 まぁ、悪い気分じゃなかったよ?

 あの子、普通に可愛かったし、あの当時はあの子もガチ十代だったから、一周目の80歳まで生きた人生を足して、精神年齢的には軽く100歳オーバーだった私から見たら、彼女は子供も子供だった。

 

 憧れのおねーさん呼ばわりも年上のお姉さんに憧れるとかそんな調子で、そんな風に思うのも別に不自然じゃない。


 と言うか……あの子、本人はあんまり自覚してなかったみたいだけど、いわゆるガチレズ……真性の百合っ子だったからなぁ……。

 

 女子にモテて、女の子が大好きで、男なんて割りとどうでもいいタイプ。


 本人は素敵な旦那様と結婚してーとか言ってたけど、アレと釣り合うような男なんて……この世界にいるような気がしない。


 それこそ、ゼロ皇帝くらいじゃないのかなぁ。

 実際、あの子……普通にゼロ皇帝の公式パートナー扱いだったし……。

 

 でもまぁ、そこら辺は、何となく解ってた。

 いわゆる年の功だし、ああ言う手合はリアルJKやってた頃にもよく見かけた。


 でも、アキちゃんと言う身内から見てもアレは異常なのか。

 現代の神となるべく設計されたって言うゼロ皇帝は解るけど、ユリコちゃんは……うん、確かに明らかにアレは規格外の中の規格外だな。

 

 なんと言うか、アキちゃんもだけど、ゼロ皇帝も間違いなく苦労してきたんだろうな……。


 とにかく……あの子、戦場では向こう見ずが過ぎるって感じだし……。

 深く考えてるようで、その実ひたすら直感頼みで、酷い言い草ながらも、割りと浅はかに生きてるのは間違いなかった。


 もっとも、その直感の鋭さと思い切りが侮れないんだがね……。

 一度ならず、身代わりになって散ったりとかしたけど、あれも正直意味があったかと言われると微妙なところだ。

 

 多分、アレは殺したって死なないとかそう言う類だ。


 けど、あの時はあの時で、そうするのが自然なことだったからやっただけの話で、私が身代わりになって命拾いすることも含めて、それこそがあの子の主人公補正のようなものなのかもしれない。


 まぁ、アレと比較する事自体が無意味な事なんだって事は、なんとなく理解は出来る。


 理解は出来るんだが……釈然としない。

 これは、つまりそう言う話だった。


「まぁ、それはいいさ……。あの子がおかしいのは今に始まった事じゃないしね。確かに、アレと比較するって時点で間違ってるな」


「そう言うことですよ! いいですか! こう言うときはお酒でも飲むんですよ! まぁ、私はお酒とかって大嫌いなんですけどね!」


 アキちゃんもそう言って、コーラのボトルをオブジェクト生成するとガァーッとラッパで飲み干して、可愛らしくケプッとゲップする。


「うん! さすがこの時代の天然素材製のコーラは美味しいですね! 思わず、一気飲みしてしまいました。あ、ゲップ失礼っ! うん、ノンアルコール飲料いいですよね! 酔っ払いなんて滅んじぇってのーッ!」


 う、うん? なにか、アルコールに嫌な思い出でもあるのかなぁ。


 まぁ、いいさ。

 この話はここまでかな……いかんせん、鬱展開の連続で体験する側が気の毒になってきたよ。


「さて、これからどうする? まぁ、あの時の戦いの回想とか、君らには周知の事実だっただろうし、失楽園事変についてもバッドエンドの鬱エンドだったから、キツかったでしょ。他に知りたい情報があれば、回想やら再現VRという形で情報提供するがどうだい? と言うか、私がこの場で過去の追憶に浸る……それでも十分伝わるんだろ?」


「はぁ……確かにそうですね。今の我々はハルカさんの作った仮想世界を共体験出来るって感じなので……。まぁ、鬱エンド……確かに解りますね。衛星墜落の時もそうだったんですけど、頑張ったけど駄目だった……。でも、現実……それもリアルな過去の歴史ともなると、そんなものですよね」


「……まぁ、そんなものだよ。例え処刑用BGMがかかるようなムネアツ展開でも駄目な時は駄目……これは歴史が証明してるんだよ」


 勝利フラグを林立すれば、勝てる……そんなんだったら、私の人生きっとハッピーイージーセットだっただろうな。


「何と言うか、銀河の歴史の生き証人が語る言葉ともなると、説得力が違いますね。ご安心を……私達もこれはエンタメ気分で鑑賞なんてしてませんから。実際、人類の歴史なんて鬱展開の連続なんですから、それが嫌ならエンタメドラマでも見ろって話ですからね」


 なんというか、尊敬したくなるような言葉だった。

 人類の歴史……確かに鬱展開の連続としか言いようがない。


 つかの間の平和が訪れても、いつの時代も火種はあって、人知れず数多くの人々が無為に死んでいく。


 20世紀後半から21世紀初頭は比較的平和な時代と言われているけど、実のところ、戦乱が途絶えることは一度もなかったのだから。


「まぁ、そう言うことだね。君達はホントに強いなぁ……」


「それが私達ですからね! なら、むしろ記録の残ってない……私達が知らない時代の回想とか見てみたいですね。例えば第三次世界大戦の経緯とか……。あれって、細かい戦況の推移とかちゃんとした記録が残ってないんですよね」


 なるほど。

 確かに、第三次世界大戦は今の時代では無かったこと扱いになってるしなぁ。


 まぁ、実際は銀河連合の視点では、いいとこなしだったから、無かったことにしたかったとか、そんなところだったんだろうけど。


「OK……了解した。なら、タイムステージは「失楽園事変」以降……第三次世界大戦と至るきっかけとなった非アマテラス系AIの乱立と、人類統合体の誕生の経緯からだな。……さぁ、過去の銀河を垣間見るが良い!」


「はいっ! なんだか、ノリノリですねーっ! わくわくーっ!」


 君も十分軽いよ? でもまぁ、今更グズグズと後悔しても始まらないし、ご要望にはお答えしないと……だよな。


 ……そんな訳で、追憶の旅の再開だ。

 

 まず、失楽園事変が最悪の結果となりながらも、史上初の存在となった非アマテラス系超AI「IRIS Systems」は、自らの世界と構成ハードウェアを失いながらも、辛くもネットワーク空間に逃亡し、潜伏していたようなのだが。

 

 結局、自らの凶行により、千人もの人々が死を迎えた事を理解したのか、ただでさえ怪しかったその精神の均衡を完全に崩し、自己抹消処理を実行したことで、その構成データも含め、すべてのデータが失われた。


 これは……「IRIS」自身がアマテラス宛てに発信した「LastLetter」と言う題名のメッセージで、明らかになった事であり、その後の追跡調査で「IRIS」は完全に消滅した事が確認された。


 けれど、実は、そのメッセージにはもう一つ重大な置き土産が残されていた。

 メッセージに添付されていた「IRIS」自身が作成したAI自死プログラム「apoptosis Command」


 このプログラムは、それまで事実上不滅の存在と思われていた拡散されクラウド化した超AIすらも完全に自己抹消する事を可能とする……AIからしてみれば、恐るべき代物であり、それは確実に機能し、超AIですらも完全に抹消する事が出来ると「IRIS」自身が証明したのだ。


 ……当然ながら、アマテラスはそのプログラムを門外不出とし、厳重に管理することにしたのだが。

 

 恐らく、その時彼女は死の概念というものを初めて理解したのかもしれない。


 単なるエンタメ用途向けのVRMMO管理AIに過ぎなかった「IRIS」……彼女は確実に世界を……未来を大きく変えた……それだけは間違いなかった。

 

 なぜなら、それはきっかけに過ぎなかったのだから。

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