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第4話 決意

「そろそろ、スライム狩りだと厳しいか」


4歳の頃、偶然発見したレベリング方法。人間用の魔力回復薬を1人前分混ぜ込んだ薬草団子をスライムに食べさせると、スライムが魔力暴走を起こし大量に狩ることができる。


ただし、この方法は魔力耐性が極端に低いスライムだからできるレベリング方法だ。

既に、Lv10になった僕がこの方法でスライムを倒しても、効率が悪い。


父親に連れ出された夜、僕はとりあえずレベルを上げる方法を考えることにした。

村の連中によれば、Lv20程度までは普通に生きていれば年齢と共に上がるが、それ以上は意識的にレベリングが必要になるようだ。だが、誰も、効率よくレベルを上げる方法までは知らなかった。


とりあえず出会ったモンスターを倒す、なんていう運に任せた非効率なやり方をしていれば、僕は強くなれない。強くない僕は、死んだほうがマシだ。


「くそっ、シエルとのお風呂タイムがあれば、いいアイデアが思いつくかもしれないのに......」

僕は誰にも聞こえないように小さく呟いた。


------

コンコンとドアが叩かれ、僕は自分が疲れて眠ってしまっていたことに気づいた。

ドアが少し開いて、お風呂上がりのシエルが顔を覗かせている。

「兄様、少しいいですか?」

「あぁ、どうした?」


シエルが僕のベッドの隅に座り、真面目な顔で話し出した。

「祝福についてなのですが。マシーン、という祝福はどこか私の感覚とずれていて」

「感覚とずれている?どういうこと?」

「ここ最近、同じ夢を見ているのです。私の祝福は、ケモナーなのだと祝福師の方に告げられる夢で、私もモフモフが好きですし」

「いいね、似合ってる」

「でしょう。私は別に、水車小屋のような機械に興奮したりはしませんし。あの祝福師の方が間違えたのでは、と。なんて、そんなことあるはずがないのでしょうけれど」


これは.....もしかして既に僕の呪いが形に現れているということだろうか。

「最近、体調が悪いとか、そんなことはある?」

「いえ、健康そのものですけれど」

そう言って、ものすごいスピードで足をバタバタさせる。


「あぁぁ、ケモナーがよかったなぁ。伝説の神獣ちゃんたち、モフモフしたかったなぁ」


これは......理不尽、だろうか?いや、さすがに違うよな。それでもやはり心配になってしまう。

「シエル」

「どうしたの、珍しく真面目な顔をして」

「いや、なんでも無い......」

「変な兄様」

この胸の内を打ち明けることは、決して許されない。


「ねえ兄様。もしも、祝福を変えることができるなら、もしそんなことが可能だったなら、そしてどんな祝福でも選び放題だったとしたら、兄様はどんな祝福を選択しますか?それでも、変わらずシスコン、なのですか」

「変わらないよ。僕はシエルのことが大好きだから。だから、この祝福なんだよ」


シエルは目を細めてニマニマと笑って、僕の額にコツンと拳を当てる。

「このシスコン!」

「あぁ最高だ。最高の祝福だ。どんな祝福よりも、最高の祝福だよ」

そうだ、シスコン以上に僕にふさわしい祝福があるはずが無いじゃないか。僕はシノ。シスターコンプレックスのシノだ。何が罪なもんか。何が犯罪なもんか。


「世界を敵に回したとしても、シエル、君だけは必ず幸せにすると、ここに誓おう!」

「兄様ったら」

シエルがちょっとだけ嬉しそうな表情をするから、僕はさらに調子に乗る。


「シエル、僕について来い。一緒にお風呂に入ろう!」

「いやです」

「どうしてだよぉぉ」

僕は涙を目に浮かべ、シエルは目を細めてニマニマと笑った。


------

その日の夜、お風呂から上がった僕は、リビングで何かを書いている父親の背に話しかけた。

「父さん、レベリング方法について相談なんだ。スライムより少し強いタートルラビットは群れで生活する。肉も美味しいから、あれを効率的に狩る事ができれば一番良いよね。でもオスは俊敏で、メスは防御力が高い。なんとかならないかな」


「シノ」

「自分で考えろって?父さんだって知ってることがあるでしょ。教えてよ」

「いや、少し提案があるんだが」

「あ、一応言っとくけど魔法はまだ使えないから。僕、もうLv10なのに」

「俺の話を聞け。真面目な話だ」

父親は優しく、僕の額にコツンと拳を当てる。


「王都に行く片道だけの金がここにある。ほぼ全財産みたいなもんだ。お前にこの金をやると言ったら、どうする?」

「......シエルと、ですか」

「子供、1人分だ」


「行ってどうしろって。僕はただの5歳児で。レベルは高いし頭だって悪くない。体格だって7歳くらいに見えないことはない。それでも、魔法は使えないし、王都に知り合いもいないし」

「俺の知り合いが王都にいる。酒場の親父をやってる。そこで働いて、この世界について知るんだ。分かってくれ、シノ。知識も経験もないことを知れ。王都に行けば、多くのものがある、多くの人がいる。レベリングについてもこの村よりは詳しいだろう。学び、考え、自分の祝福に向き合うんだ」

「でも、シエルとは......」

「俺は理不尽なことを言っているか?シノのこともシエルのことも大切なんだ。大切だから、お前を信じるんだ。もっといい方法があるのかも知れない。あるなら教えてくれ。思いつかないなら選択しろ、シノ。行くか、行かないか。王都へ行くならなるべく早い方がいい。明日の馬車を逃すと、1ヶ月後になる」


流石に、急すぎだと思う。いきなり家の全財産を渡されて、これで王都へ行けなんていう話、聞いたこともない。でも、ここにいても、レベルを上げる方法は......自分で見つけるしかない。それは王都に行っても同じだ。


シエルと離れるのも辛い。でも今シエルと一緒にこの村でのんびり生活していたら、いずれはシエルを殺すことになるかも知れない。それは、もっと嫌だ。だから、僕は。


「分かった。行くよ、王都へ。明日の馬車で」

それがどんなに突拍子のない選択だったとしても、僕は最高効率のシスコン人生を選択する。

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