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不思議な喫茶店

作者: やちる



プロローグ


帰りが遅くなった、郁恵は、暗がりの道を歩いていた。


最近、引越してきた この村は、あまり店がなく古びた街灯が チカチカ 点滅していた。


ふと気付くと、背後から「コツコツ」と足音が…

2〜3日前から、気にはなっていたが今日は、足音が速く…怖くなった。

「もしかして、ストーカー?」


郁恵は、思い切り走って帰る事にした!


第一章


ずっと、追われて、疲れてきた郁恵は、帰り道の途中にある、喫茶店に、入ってみる事にした。いつもは、何となく通り過ぎていた、その喫茶店。


木製のドアを、

「バンッ!」

勢いよく開けた。

息が、切れて

「ハァ…ハァ…」

もう倒れそうだ。


気付くと、カウンターの中の店主が じっと見ていた。ふと、恥ずかしくなった郁恵は、そっとカウンター隅の椅子に座る。

“どうしたのか?と尋ねられるだろうな…”と思いながら、カウンター中心に掛けられている、小さな黒板のメニュー表を見る。

「コ−ヒ− 紅茶 500円」と書いてあるだけ…

カウンターの中にいる人は、中年の少し白髪まじりの、何処にでもいそうな“叔母さん”という印象だ。チラッと、たまに郁恵の方を見ているが、何も言わない…


「あの…」

自分から、声をかけてみる。

「はい?」

と店主。少し微笑んでくれた。

「紅茶を、頂きます」

ニコッと微笑んで、作りだす。

少し待つと、綺麗な花柄のティ−カップを、運んで来てくれた。

一口飲んで、落ち着こうと、早速頂く事にした。

“美味しい”何となく店主を、また見ると、こっちを見て微笑んでいる。



「携帯は、マナ−モ−ドにしておいて下さいね。この店“なごみ”っていいます。だから、皆さんに ゆっくりして頂きたいのね。それと、私の事 常連さんは“なごみさん”って呼んで下さるの」

と、突然、店主のなごみさんが作業しながら話しかけてきた。というか、淡々と説明した。

「はい…」

小声で返事をした郁恵は“この店、やっぱり変わってる”と思う。店内を見回すと、小さめなカウンターの、左側には、テ−ブルセットが、二つ並んでいた。サラリーマン風の男性が二人、話しながらコ−ヒ−を飲んでいる。

「落ち着きましたか?」

気付くと、なごみさんが、目の前にいて驚いた!

「え!なんとか…紅茶のおかげで、とっても美味しいです」

郁恵が、答えると

「家、近いの?」

と、なごみさん。

「はい、もうここからだと歩いて10分位です」

と、答える。

「少し、そうねぇ〜後、一時間位待っててね。」

と、なごみさんが微笑んで言う。

「待っててとは?何かあるんですか?」

不思議に思って、尋ねてみる郁恵。

「送るから。あなた、入ってきた時、何か慌ててた。追われてたんでしょ?」

“確かに、普通には見えなかったかも…”郁恵は思い、

「ありがとうございます。そうして頂けたら助かります。」

その後、事のいきさつを、なごみさんに話し出す。

「そういうストーカー?と呼ばれる人、いるのよね。どうして、付けてくるのかしらね?」

と、なごみさんは言う。自分でも解らないので、首を傾げてみせた。


「ごちそうさん!なごみさん。また来るね!」

サラリーマン風の男性客が、カウンターに、500円づつ置いて店をでる。

「また、お待ちしてます。ありがとうございました。」

と頭を下げる、なごみさん。

ドアから出る所で、二人の内の一人が、なごみさんの所まで、戻ってきて

「なごみさん、この前はありがとう!」

と小声で言う。なごみさんは、微笑んで

「いいえ」

それで、店の中は、なごみさんと、二人きりになった。

「閉めるから、片付け、するから、待っててね」

なごみさんは、さっさとカップを洗ったり、片付け始める。

何となく、テ−ブルくらい拭かなきゃと思い、郁恵も手伝う。拭きながら“さっきのサラリーマンの人、何のお礼を言ってたのかしら?”ふと考えたが、聞いてはいけない気がして、なごみさんには、聞かなかった。


「手伝ってもらって、ありがとう」

もう店から出て、二人は外に出た。なごみさんの、車の、助手席に乗せてもらう。

「明日は、何時?」

なごみさんが聞く。

「え?」

と私…

「帰りよ。バス停?何時に着く?」

前を向き、運転しながら、なごみさんが聞く。

「明日も、今日位で…あ、でも、いいです。今もこうして送って頂いてるのに」

と郁恵が、申し訳なさそうに答える。

「じゃあ、あのバスね!いつもは、送らないわよ〜!明日だけね」

少し、ニヤッとして、なごみさんは、答えた。

「はぁ…あ、お願いします!」

そうしている間に、アパートの前まで来ていた。

「じゃあ、明日ね!気をつけてね」

なごみさんは、私を降ろすと、手を振り行ってしまった。

郁恵は、部屋のドアを開け、電気を付け、ふ〜っと、唸り、玄関に座り込む。

「変な一日だった〜」

でも、明日、あの喫茶店に行けると、少し楽しみでもあった。


第二章


郁恵は、バスから降りる所で、昨日の、なごみさんの乗った車に気付く。

「ありがとうございます」

早速、助手席に乗る。

「お店、来るわよね」

返事を、する前に出発していたが

「はい!」

と返事をする。ふと振り返ると、驚き、声もでない。“昨日の、追って来た男!!”だった…

大人しく、申し訳なさそうに、後部座席に乗っている。

「どうして…?」

一時して、出た郁恵の言葉に

「まぁ、着いてからね」

と、なごみさん。

喫茶店に着き、三人は中に入ると、郁恵は、またカウンターの隅に座る。

昨日の男は、なるべく、郁恵から離れて座った。

なごみさんは、カウンターの中へ。

「なんだか、あなたが気に入ったみたいで、話したかっただけみたい」

なごみさんが、サラっと言う。

「どうして、二人は知り合いなんですか?どうして、この人と、なごみさんは解ったんですか?」

頭の中は、謎で、いっぱいの郁恵…

「昔、来たことあるの。このお客さん。昔、色々話しててね。まぁ、過去の事は、良いとして…

名前だけでも〜教えてあげて」

と、今度は少し、話し難そうに、なごみさんは、郁恵をみて言う。

「はぁ…郁恵と言います。あ、そういえば、なごみさんにも、言ってなかったですよね?」

「郁恵さんね!覚えとくわ!あなたもね。名前、教えてあげて」

なごみさんは、その男性に聞いた。思ったより、小さく、郁恵より若く見える。

「まさる…です」

俯いて答える。

「お友達になりたいよね?ここに、来て一緒に話すと良いんじゃない?」

まさるさんの、顔を伺うように、なごみが話す。

「はい…よろしくお願いします。今日は、帰ります…」

まさるさんは、すっくと立ち上がり、出ていく。

「まぁ〜本人にしてみれば、少しキツかったかもしれないわね…でも、郁恵さん、あなたは、明日からの不安は、消えたわよ。」

と言う、なごみさんの表情は、複雑だった。その、きもちは、郁恵にも十分に伝わる。

「ありがとう。本当に… 助かりました。」

心から、お礼を言う郁恵「で、今日も、紅茶?」

と、なごみさんは、微笑んで、もう紅茶を作り始めていた。




第三章


郁恵は、いつものごとくと“なごみ喫茶店”に入る。気付くと、すっかり、常連客になっていた。


よく、同じ時間に来る、お客さんとは、話すようになってきた。

その、姿をみて、なごみさんは、微笑んでいる。

初めての、お客さんが来ると、

「ハイ、ハイ」

と、話しを頷きながら、聞いている。


やがて、常連客の一人と、郁恵は、仲良くなった。男性である!

なごみ喫茶店から、出て、食事に行ったりして、二人は、デ−トを重ねるようになった。

そんなある日、また二人で、カウンターに座ると

「幸せそうね。郁恵さん!幸せになると、足が遠退くお客さんも、多いのよ」

と、なごみさんは、ニコッと笑って言った。

「そんな事、無いですよ!」

と笑い、郁恵と彼も笑った。


彼と、付き合い幸せを掴んだ郁恵は、やはり、なごみさんの、言うようにあまり喫茶店には、行かなくなった。


ある日、会社の帰り道、なごみ喫茶店の、ドアが開いていた。

なんとなく、気になり、中の様子を、見る。

「誰もいない。なごみさん??」

気付くと、ドアに、<掃除中>と書いた、紙が張られていた。

“なんだ…心配しちゃった”と、思い、カウンターを、何となく見た。

ノ−トが、何冊か重ねられていて、一冊開いたままだった。

“気になる〜”と、思い、諦めきれず、見てみた。

「〇〇日 〇〇時 〇〇さん、来客。今日は、元気がない。会社の上司と〜の話し」

など、細かに書いてある。最後の列に、まさるさんの名前があった。

「あれから、何度か来たのね」

少し、嬉しく思う。

“こうやって、書き留めて、お客さんの事を、観察してるのかしら?私や、色んな人の、悩みを解決しているのかも?”

ノ−トを、こっそり見た事は黙っておこう!


郁恵は、ますます、なごみさんが、好きになった。尊敬する人だ。


そのまま、その日は、帰る事にした郁恵は、

「また、悩みが出来たら、聞いてもらいます!不思議な喫茶店の、なごみさん!」

呟き、出て言った。


終わり


こんな、喫茶店があれば良いな!という、思いつきで、初めて、携帯小説に、挑戦してみました。


自分自身、人間観察が好きで、主人公は、ストーカーに追われるという、設定で書いてみました。


もっと現実は、大変で、こうは、簡単に、解決、出来ないとは思います。


でも、人が作り出す、感情…その、原因を、紐とき、軽くしてくれたら、そういう人が、いてくれたら良いですよね?


そういう思いで、書きました!


やちる

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