双子の姉妹
短いです。
精神的に辛い方・病んでいる方は閲覧をオススメしません。
内容は理解不明、及び最高に気分を害する場合がございますのでご了承ください。
私には妹がいる。名前はシロ。白い肌に白い髪。睫毛まで真っ白なその姿は妖精みたいで非常に愛らしい。
私はクロ。黒ずんだ肌。ボサボサの黒髪。やせ細ったガリガリの身体。周りからは気持ち悪いってよく言われる。
でも、いいんだ。シロが可愛くて綺麗ならそれで満足。
私たちは双子の姉妹。全く見た目が違うけど、同じ血が通っている正真正銘の姉妹だ。それだけで私は嬉しくなる。
「シロ、おはよ!」
朝起きて隣で寝ているシロを起こす。これが私の日課。
布団からのそりと起き上がるシロを横目に、テーブルの上に置いていた食パンを口にくわえた。
パサついた食感に顔を顰めながらもクローゼットを開けて制服を取り出す。シロは眠い目を擦りながら洗面所へ向かった。時計に目をやると、既に時間はギリギリの状態。
「大変!遅刻しちゃう!!」
私は通学鞄を掴んだ。遅れてシロも制服を整えながら玄関へ。バタバタと靴を履きながら、私たちは手を繋いで走り出した。
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「遅刻しちゃったねぇ、シロ…」
結局、間に合わずに先生の怒りを買った私たちは廊下に立たされることになった。また1時間放置されるのだろうか。
「足…痛いけど、シロと一緒なら平気だよ」
不安そうに下を向くシロの手を取り、私は優しく微笑む。すると、シロはこくりと頷いて私に抱きついた。
いつまで経っても甘えんぼな妹だ。私はシロの柔らかな髪を撫でながら目を閉じた。
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「みんな速いなぁ、私…もう…走れないや…」
体育の時間。私はこの時間が嫌い。
ひたすら走るこの授業は、体力のない私には地獄だ。
「シロは疲れてない…?」
隣を走るシロを気にしながらそう聞くと、シロは呼吸を乱すことなく頷いた。
運動もできる。本当にすごい妹。シロはいつも私を置いていくことなく、隣を走ってくれる。
最後まで残って走るのは恥ずかしいはずなのに。私のために一緒に走ってくれるんだ。
嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。
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「残さず食えよ」
机の上に置かれたどう考えても量の多い給食。
シロは肉が苦手だ。そして、今日のメニューは肉が沢山入ったスープ。
「わ、私…こんなに食べれないよ…」
「はぁ?もうお前の机に置いたんだから、これはお前のだよ。お前の机に置いた食べ物なんて誰も食わねぇからな!」
残るのは勿体ないと責められる。だからと言って、誰かにあげることもできない。こんな無駄なことを最初から分かっていて何故するのだろう。
「……ぅ……」
呻き声をあげる私はなにもできない。シロはこんな量食べられないのに…。私が、私がシロを助けなきゃ。
前に苦手な給食をトイレで吐き戻して大騒ぎになった。きっとそれがクラスメイトのツボにハマったんだ。またバカにしようと、わざと多い量を食べさせて…。
大丈夫。私がシロを助けるから。だって、私はシロのお姉ちゃんなんだもん。
「シロ、無理しないで。私が全部食べるから」
俯いたシロが涙を浮かべた目でこちらを見つめる。
震えた唇が、小さく「ありがとう」と言った気がした。
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放課後のチャイムが鳴る。
それと同時に、シロの机が乱暴に蹴られた。
「いい加減死ねよお前」
「学校に来んなよ、くせぇんだよ」
酷い。私の妹を虐めないでよ!
私はシロへ走りより、いじめっ子たちを睨みつけた。
「は?なんだよその目」
「きもっ!こっち見んなよ!」
シロは可愛い。そして優しい。だから虐められるんだ。
嫉妬でこんなことするなんて最低。私がシロを守らないと。
「黙ってんなよ!」
「キャッ…!?」
突然、いじめっ子のひとりがシロを蹴り飛ばした。
私はシロを庇うように抱きしめる。
やめてよ。これ以上シロを虐めないで。
私がシロを庇う間も躊躇することなく、いじめっ子たちは殴り蹴り続ける。
「やめて、やめてよ!シロを虐めないで!」
耐えられなくなり、私がそう叫ぶといじめっ子たちは笑いだした。何がおかしいのか分からない。
「真っ黒子がまた変なこと言ってるぞ」
「頭おかしくなったんじゃないの?セーシンシッカンってやつ」
「キチガイじゃん!キチガイ!」
真っ黒子?誰のこと言ってるの?私はクロ。
この人たち、きっとおかしいんだ。だからシロのことも虐めるんだ。
私が妹のシロを助けないと…。
「……クロ、ごめんね」
「…シロ?」
ぎゅっと目をつぶった時、シロの声が私の耳に届く。
驚き、抱きしめているシロを見るとシロはにっこり微笑んでいた。
「大丈夫だよ、クロ。今度は私が頑張るから」
…そうだ。私たちは双子の姉妹。
ふたりでひとつ。私たちは助け合っていかなくちゃ。
「………ありがとう、シロ」
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「また問題を起こしましたね、黒川シロハさん」
「………」
「貴方は、クラスメイトに一方的な暴力をくわえたんです。彼女たちから聞いた話だと、突然椅子を振り回したと」
「………」
「貴方のせいで市松さんと篠原さんは怪我をしました。篠原は頭に傷を負って、その傷は消えないそうです」
「………」
「自分のしたことが分かっているんですか!?親御さんとも連絡は取れないし……」
「………」
先生が何か喋っている。でも、今は安堵していた。
私はクロの手をぎゅっと握る。
私の双子の姉のクロ。私のためにいつも戦ってくれる、優しくて強いたったひとりのお姉ちゃん。
私たちはふたりでひとつ。ふたりなら何も怖くない。
終
解離した思考。だが、統一している。
お互いを守らなければならないという感情。
彼女たちは甘い幻想に目覚めなければ、永遠に幸せなのだろう。