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僕は毎日、僕を殺して生きている。

作者: 七瀬








僕は毎日、僕を殺す事で生きている。

僕は僕自身の事が大嫌いだ!

噓つきで、人を騙すし、人の事を一切信じていない。

僕は誰にも心を開かない。

毎日、幻覚を見ては恐怖に怯える日々。

こんな事、誰にも言えないよ。

足がすくんで、体が硬直したみたいに動かないんだ。

お酒を毎日飲まないと眠れなくなった。

酷い不眠症なんだよ。

お酒が切れると、体や手が震える。

幻覚が僕を支配する。

毎日、僕は同じ男に殺されるんだ。

大きな釜を持った男に僕は追いかけられて最後には僕を

殺す寸前で僕が自分を殺して目を覚ます。

夢なのか? 現実なのか? もう僕には分からない。

それでも、僕は目を覚ます。

誰かに手を伸ばして助けてほしい訳じゃない。

僕の辛さを知ってほしい訳でもない。

ただ、僕は僕の事が“大嫌い”なんだ!

誰かに僕を認めてほしいなんていう、おこがましい事を言う

気はないよ。

僕はただ、“僕以外の人を傷つけないか?” それだけが心配なんだ。

僕は僕自身を殺す事に躊躇なんか一切しない!

だけど? もし僕以外の人を殺してしまったら、、、?

後悔しか残らないよ。

僕には夢なのか? 現実なのか見分けがつかない時があるから。

人を自分だと思って殺す事もあり得る話だ。



【ブッシャ―】

『キャー――――――アアアアアア!!!』

『何だコイツ!? 人を刺してんぞ!』

『“人殺しだ! 人殺しがいるぞ!”』

『誰か? 警察を呼んで!』

『救急車もだー!』

『急げ! 急げ!』

『血、血が、止まらないわ!』

『まだなのか? そうだ! 医者はここに居ませんか?』

『誰か、この人を助けてください!』

『コイツは、警察が来たら連れててもらおう! それまで捕まえておけ!』

『あぁ!』






 *




・・・これが、1年前の事だった。

僕は、自分以外の人を傷つけて警察に捕まる。

僕は僕自身を殺したと思い込んでいた。

だけど実際は、“それは現実で見知らぬ通りすがりの人を殺そうと

していただけ。”

一度も、僕と会った事がない人だった。

僕は裁判にかけられるが、当時、僕は精神が不安定だったという理由

で刑務所に入る事無く事が済んでしまった。

どうやら僕は、“重度の精神病患者らしい。”

実際に、その時も僕は幻覚を見ていた。

僕を殺そうとするあの男から僕は必死に逃げていたんだ。

釜を持った男に追いかけられて殺されそうになる恐怖は他の人には

分からないよ。

しかも、毎日だ!

眠れず浴びるほどお酒を飲んでも、あの男は僕を殺そうといつも

僕を追いかけてくる。

家の中に居ても、近所の奴らが僕の噂をしているんだ!



『アイツは毎日、家に居て酒を朝から飲んでいるらしいよ。』

『頭でもおかしくなったんだわ。』

『可哀そうよねぇ~』

『精神が崩壊して、自分の両親も殺したらしいわ。』



・・・やめてくれ、僕じゃない!

父さんも母さんも、僕は殺してないよ。


殺したのは、、、? 

【あの男なんだ! アイツが僕の両親を殺したんだ!】









 *




僕は夢も見ない。

眠っていないのだから夢を見るはずがないんだ。

ただ、この日も僕は幻覚を見ていた。





・・・その頃、現実の僕は?

病院にいた! 精神病院に入院している。

僕の部屋は、503号室。

窓一つない部屋に、鏡の奥から誰かが僕を見ている。



『彼はかなり重症患者のようだ!』

『そうですね。』

『今も幻覚を見ているのだろう。』

『・・・あの患者は、夢を見ているのですか?』

『いや? 彼にはそれが現実なんだよ。』




最後までお読みいただきありがとうございます。

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