序章1
初投稿です。稚文はご愛嬌。
「ついに完成じゃああああああ!!!」
森の中にしわがれた声が響きわたり、鳥が我先にと逃げるように飛び立ってゆく。
「やりましたね!お師匠様!」
なにやら派手なチョウチョが老人の周りを飛び回っているが、老人は気にもとめずただただ興奮していた。
「苦節云百年…すべての魔法を修め、莫大なマナがなければ辿り着けぬこの境地!まさか液体術式が必要だとは…しかしついに魂魄薬の完成じゃ…」
液体のはいった瓶を持つ老人の手が震えているが、もちろん老人性のものではなく興奮によるものである。
淡く光る黄色味がかった液体がトプリと揺れている。
老人はいすに腰掛け、立派にたくわえた白い髭をしごきながらこれから起こることを夢想し始める。
しばしの時をそうした後、決心がついたのかユラリと立ち上がった。
「シルフィーユ、これから転魂を始めるぞ!お主はこれを見届け、入れ替わった儂を手助けするのじゃ!」
「承知しました!前に言ってた植物博士ですね!?」
元気に受け答えるチョウチョ、いや名をシルフィーユという。
こちらはまだ興奮しており鱗粉をばら撒きながら家の中を忙しなく飛び回っている。
老人は何やら書き物をしてから先程の椅子に腰掛け、ゴニョゴニョと呪文を唱え始めた。
次の瞬間、手元にあった紙は先程の黄色い液体に吸い込まれ溶けていく。
飛び回っていたシルフィーユもいよいよかとテーブルに乗りその様子を伺っている。
「後は頼むぞシルフィーユ、こちらに来る奴は植物にはくわしいが、この世界のことを何も知らん。うまく導いてやれ。」
「まかせてください!きっとマナ溢れる世界に!」
老人は小さく頷き、件の瓶を手に取り、
グイッと一気に中の液体を飲み干した。
「まずっっ」
そんなどうでもいい感想を呟きつつ老人の体から眩いばかりの光が溢れ出す。
「お師匠様、どうかあちらでもお元気で…」
シルフィーユは呟き、成り行きを見守る。
そして彼女の前から老人の姿が薄く消え始める…
更新遅めですがマイペースで投稿予定です。