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亀裂

魔法師は各々家の武器を呼び出すことができる

魔法師の家には1冊様々な武器が入っている家紋武器本という物が存在する

その中から1人1つ自分専用武器が与えられるという事だ

与えられると言っても、その者に相応しい武器が相応に反応し呼び出されるので武器を選ぶのことはできない


※これは余談だが、正式な家門でないところにも稀に魔法師は産まれる。もちろんその人達に家紋武器なんてものは存在しない。そういう者達は自分で武器を生成し出し入れしたり、持たない者も多い。

正式な家門と違って魔法で作った魔法剣ということになるので少々劣る。だがどこの世界にも例外は存在するだろう




話がそれたがもとに戻そう。家紋武器というのは家紋事に異なる。柚家は刀であった。


武器は早くて5歳、遅くて10歳までには出せるようになる。だから第一、第二継承者の儀がこの歳になっているのだ


私と妹の試合を見て父が何かを決断したかのようにその場を去っていった。

試合が終わったあと何も声をかけないなんて異例の珍事だった。ゆえに他の誰一人として声を発さず、沈黙の空気が流れる

それは時にして3分程だったのかもしれない、でも私にとっては妹に負けたことによる両親と祖父母の失望が手に取るように分かった

この場にいたくない、もう逃げ出してしまいたいと思うほどの重い空気がただただ流れていた


あの日、無言で去っていった父の後姿が今でも鮮明に思い浮かぶ...あれは絶望と落胆であった。


1ヶ月後、私は本家の中央塔、本家の会議が行われる部屋に呼び出された。

襖を開けて入った先には、さらに3つ襖を超えた奥、要するに部屋の1番奥に曽祖父である柚家の大主様と父上が座敷の上に正座して待っている。

私は入口の扉を閉めて、襖の前に座る


私と父の間20mくらい離れた所から声が発される

父上の顔を見ることが恐ろしくて、前を見ることさえ出来ない。

正座したまま俯いて父上の言葉を聞く...



-------------------‐


その数時間後私は山の中にいた。

辺りは誰もいない雑木林。かろうじて端に道があるがこんな山の中には誰も通らない。

もう夜だというのに電灯もないので辺りは真っ暗

虫の鳴き声だけがリンリンと聞こえるが、辺りは人はおろか動物の声さえしない。静かな山奥だ。



何故こんなことになったのだろう。行くあても帰る場所もない。住むところさえない。私は初めて絶望した


今まで大切に育てられてきた。分家とは違いもちろん本家の人間は色々教養を叩き込まれるが、その中でも継承権第一位として人一倍様々なことをさせられた。あれはなんだったのだろうか

周りには侍女が数名いて指導者や祖母様がいて、あの頃は大変で妹が分家の人が羨ましい、私も自由になりたいと思っていた。

まるであの全てが嘘であったかのように、目の前には何も無い。私はこの日、立場も権力も全て失った



涙が止まらない。私はどうしたらいいのだろうか


数時間前に言われた言葉が頭の中をよぎる『魔法力が弱く妹にも劣る人間がこの先成長の過程を見せるとは思えない。魔法師として劣った人間に家門を渡すわけにはいかない。これは柚家の命令である。お前は今日をもって破門とし金輪際この屋敷の敷居はまたがせない』


言葉が出なかった。涙すら出なかった。もう一度のチャンスさえ与えられなかった。私にはもう見込みなしの烙印が押されたのだ。

幼き妹に負け成長の余地すらないと

魔力とはそれ即ち持って生まれたものだ、成長の過程に増えたりはするが多少の誤差であり、ほぼ魔法師の優劣は生まれ持った魔力に秀でる

私は妹に魔力量で劣った。この先どんなに鍛錬を重ねてもそれは変わらない

まるで灰になったかのように抜け殻となった私はその後何をしたのか覚えてない無い


かろうじて覚えているのは最後に母上が何か話しかけてきたことだた。あれはなんていっていただろうか...

私はそのまま荷物と車に詰められて、山奥で降ろされた。父上が流石に1人で暮らすのは無理だろうと父として最後にお前にしてやる務めだとかで家を提供すると言われた。


山奥で降ろされてから、何も言わず運転手は帰っていき、1人になった

私が降りたのは家の前だったが、果たしてこれを家と言っていいものなのか


中にはかろうじてトイレとお風呂があるがそれだけだ。家というより小屋と呼んだ方がこの家には釣り合うだろう。

木造建築のボロ屋、かろうじて水が通ってるのは嬉しかったが、案の定冷たい。もちろんお湯などでない

屋根もボロく雨漏りした後が床に残っている、まるで今にも壊れそな幽霊小屋...ボソッと声に出た

我ながら的確にこの家を表現したと思う


そこでようやく魂が戻った。我に返りようやく自分の置かれた現状に戻る

涙がとめどなく流れ止まらない。悔いても悔いても過去は帰ってこなく、私はこの日本当に1文無しなったのだ


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