Quest:7
洞窟探検は面白かった。
だって現実世界じゃこんな冒険できっこないだろう?
ワクワクが止まらないんだ。
頼りになる案内役もいるしね。
「ナギ!こっち見て!!なんか色の違うブロックがあるわよ!!」
「ホントだ。罠って感じでは無さそうだ・・・。あ、これ押せる。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・。
「階段だ〜!!やったね、ナギ!!」
「レイのおかげだよ。僕1人じゃ見つけられなかったかも。」
「アタシはナギの案内役よ!任せなさい!!」
こんなやりとりをしながら僕たちは階段を見つけては下に降りて行った。
ようやく10階層目に降りる階段を見つけた僕たちが階段を降りると、そこは少しひらけた場所になっており、正面には二つのドアがあった。
一つは金のドア。もう一つは銀のドアだ。
「きゃ〜!!お宝の匂いがプンプンするわ!ナギ!ねぇ、どうする?金のドア?銀のドア?アタシは金のドアだと思う!!」
「うん、いかにもって感じの雰囲気出てるね。どっちだろ?でもやっぱりここは僕も金のドアだと思う!行ってみよう!」
と言い、金のドア方向へ進みかけたところで僕は足を止める。
ここに飛ばされる前、門に浮かび上がった文字を思い出したからだ。
“欲望に心満たされし者は真の宝から遠ざかる。探究心の在る者こそ真の宝を与えるに相応しい。我が名はグランディール。真の宝を与えるに相応しいか、その心、我に見せてみよ”
「アレっ?ナギ、どうしたの?」
「欲望に心満たされし者は真の宝から遠ざかる・・・、か。」
「・・・それさっきの門に浮かんでた文ね。どうしよ。今アタシ完全に欲望に心満たされちゃってたわ。」
「僕もだ。10階層降りてすぐ目の前に金か銀のドアがあったらどっちかに行っちゃうよな。ロクに探索をせずに。」
「探究心の在る者こそ真の宝を与えるに相応しい。だったっけ?」
「うん、そう。・・・ということは正解は金のドアでも銀のドアでも無いんじゃ無いか?どこかに何か手がかりがあるはずだ。」
僕は周りの壁を探り始めた。
すると一箇所違和感のある場所を見つける。
「ここだけ壁が不自然だな・・・。微妙に隙間が空いている。」
その壁はドアになっていた。周りとほぼ同化しており、パッと見ただけでは気づかない。
「それが真の宝のドアってことになるのかしら?」
「わからない。でも、隠された扉であることには違いはないはずだ。進もう。」
ドアを押し、その先の空間へ足を踏み入れる。
そこには大きな戦士の像が飾られていた。
僕は思わず息を呑む。
「うわ〜!この像カッコいいねぇ!!」
「うん。こんな美しいフォルムの全身鎧、男だったら一度は憧れる姿だよ。堪らんです。」
そんなやりとりをレイとしていると、像から声が聞こえてきた。
“よくぞここまで辿り着いた。我はグランディール。成長を司る神だ。此処までの試練を乗り越えた其方こそ、真の宝を授けるに相応しい”
「ありがとうございます。」
僕は急に聞こえてきたその声に多少ビックリしながらもそう答えた。
“今から与える物は3つともこの世界に二つと無い物だ。心して受け取るが良い”
「ナギ聞いた?1つじゃなくて3つもくれるんですって!」
「ハントフェスではお宝は3つ在るって言ってたけど、真のお宝も3つ在るんだな。」
きっとそういうことなんだろう。僕は特に疑問に思わず像の言葉を待った。
“先ずは一つ目の宝を授けよう。一つ目は[グロウエッグ]。成長するタマゴだ。”
グランディール像がそういうと僕の目の前に金のタマゴが現れた。
「成長するタマゴ?」
“グロウエッグはピクシーを成長させるタマゴだ。経験とともに卵が成長していき、やがてピクシーの姿が変わる。特殊アバターといえばわかりやすいであろう?”
「ナギ!!やったよ!!アバターだって!!!これ、可愛く成長できるかな??」
”ピクシーはマスターが望む姿になる。どう成長するかはマスター次第だ”
「うげっ!責任重大じゃん。」
「ナギ!ぜぇーーーーーーーーーっっったい可愛く成長させてよね!!」
「わ、わかったよ・・・。」
僕がそう言うとタマゴはレイに吸い込まれていった。
“二つ目と三つ目は我がグランディールの名を与えし武器と防具だ。先ずは武器を与えるが、其方の職業は何であろうか?”
「僕の職業は『銃使い』です。」
“『銃使い』か。承知した。それでは其方には成長する銃[白銀銃グランディール]を授ける”
次の瞬間、僕の目の前にシンプルな装飾がされた銃が現れた。
“[白銀銃グランディール]は機獣のコアを取り込むことで成長する”
「機獣??」
「機獣っていうのはモンスターハントエリアに出てくるモンスターの事よ。このゲームでは生物を殺すという感覚をなるべく与えないようにモンスターは全て機械で出来ているの。」
「機械で出来てるっていうのは事前情報で知ってたけど、機獣っていうのは知らなかった。ありがとう、レイ。」
「どういたしまして!」
“機獣のコアは機獣を倒した時にごく稀に手にできる貴重な物だ。それ自体を加工し武器にすることもできる故、市場には滅多に出回らないだろう。それ程成長させるのが難しい武器だが、成長させれば世界最強の武器になることも可能であろう。今は世界最弱の武器だがな”
「と・・・・とんでもないもの貰っちゃったな。」
「これだけでもスゴイのにもう一個貰えるのね!」
「そうだった。」
“最後に防具[魔導鎧グランディール]を授ける”
その瞬間、僕の目の前にグランディール像そっくりの鎧が現れた。
“[魔導鎧グランディール]は其方のステータスと共に成長する防具だ。其方のステータスをそのまま反映し、其方がステータス通りの能力を発揮できるようになるものだ”
「ステータス通りの能力・・・・。つまり素早さや力、防御力なんかがそのままこの身体で発揮されるってことか・・・。」
“[魔導鎧グランディール]も其方が成長しなければ世界最弱の防具だ。我が名に恥ぬよう精進せよ”
グランディール像がそういうと、目の前に浮かぶ[白銀銃グランディール]と[魔導鎧グランディール]が一瞬キラリと光り、僕のリングに吸い込まれた。
“今、白銀銃と魔導鎧を其方のIDに登録させてもらった。この世界で其方以外に使用することができない。其方専用の武器防具だ、喜べ”
「僕専用・・・。僕だけのもの・・・・。・・・マジかッ!!!!!」
僕は嬉しすぎて何度もガッツポーズをする。
「ナギが嬉しいとアタシも嬉しい!!」
レイと2人でピョンピョン飛び跳ねていると、グランディール像からまた声が聞こえる。
“白銀銃と魔導鎧は其方のリングと同化している。装備する際、解除する際はそれぞれ別の合言葉を登録する必要がある”
「・・・・・つまり、変身!?」
この日僕は男の子の憧れ、変身アイテムを手に入れた。
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