Quest:3
街の案内と言っていたレイだったが、なぜかゲートタワーのエレベーターに向かっていった。
「なぁレイ。一体どこにいくんだい?」
と僕が尋ねると、待ってましたと言わんばかりにレイが勢いよく答えてくれた。
「展望台よ!この街を案内するならまずはどこに何があるか知っておくのが一番でしょ!展望台ならこの世界を一望できるわ。」
「なるほど、さすができるナビピクシーは違うね。」
僕が褒めるとレイは嬉しそうにくるくる僕の周りを回り始めた。
「ふふーん♪そうでしょ?もっと褒めてもいいのよ?」
あんまり調子に乗せるのはやめようと思いつつ僕はレイを先に促し、エレベーターに乗った。
エレベータが動き、地上50階あるゲートタワーの展望台に着いて扉が開いた瞬間、ゴールドアップルシティの広大な街並みが僕の目に飛び込んできた。
「ちょっとナギ、今からアタシがこの街の事説明するから、そこで固まるのはやめてよね。」
とレイに言われて僕は我にかえった。
「ごめんごめん、あまりにも感動しちゃって。」
事前情報ではコンセプトアートのみの公開だったため、ここまですごい景色になるとは正直思っていなかった。
「まぁ、いいわ。誰だってこのゲームに初めてログインしてこの景色を見たら今のナギのように感動して動けなくなるだろうし。」
うん、絶対にレイの言う通りだと思う。
「とりあえず展望台に来たのは正解だったみたいね。ナギのその呆けた顔、多分ずっと忘れないわ。」
「げ。すぐに忘れてくれ。恥ずかしい・・・。」
そう言いながら展望台の中でも一番見晴らしのいい場所に移動してレイに質問する。
「このゲートタワーの周りが商業エリアなんだっけか?」
「正解!商業エリアは厳密に言えば居住区と商業区に分かれているわ。居住区ではホームを作ったりできるわよ。商業区は冒険に役立つアイテムはもちろん、大手企業なんかとタイアップして様々な商品が売られているわ。」
稼いだお金が現実でも使えるだけあって出店企業は本気を出してきているようだ。
「ちなみにソロでゲームをやるにしろパーティー組んで攻略するにしろ、トッププレイヤーを目指すならいずれはスポンサー契約なんかできるといいわね。」
「どうして?」
「トッププレイヤーが使ってる武器や防具なんか真似したいプレイヤーは多いでしょ?『DHQ
』は基本的に武器や防具の性能は鍛治や錬金術の腕前で決まるのよ。非戦闘系と呼ばれる鍛治師や錬金術師なんかの職業は、高レベルの武器防具を作れる代わりに装備はできないから、高レベルプレイヤーとか有名プレイヤーに装備してもらわないといけないわけよ。そこで“〇〇モデル”とか有名プレイヤーの名前がついたブランドができたらそのお店は繁盛間違いなしってわけね。」
「そっか、個人で非戦闘系職業になるプレイヤーはあんまりいないわけか。」
「いてもきっと小数派ね。でも鍛治師や錬金術師なんかは完全に企業側の職業であることは間違いないわ。素材収集クエストなんかも出してるから、スポンサーについてもらいたい企業の出すクエストのみやるってのもアリかもしれないわね。」
「そうか、どんな企業があるのかも調べなくちゃいけないな。」
「そうね、まぁそれはゲームに慣れてきてからにするといいわよ。商業エリアの説明はこの辺りにして、次は東西南北に別れたエリアを紹介するわ。」
「ありがとう。確か東がモンスターハントエリア、西がトレジャーハントエリア、南がイベントエリア、北がダンジョンエリアだっけか?」
「またまた正解!よく勉強してるわね。」
当たり前だ。僕がどれだけこのゲームを待ちわびていたと思っているんだ。
「まずはトレジャーハントエリアから説明するわ。ここはモンスターが一切出ないお宝発掘エリアね。ソロクエスト、パーティークエスト、オープンクエストの3つから攻略したい島を選ぶ感じよ。」
「ソロとパーティはわかるけど、オープンクエストって何?」
「オープンクエストっていうのは、決められた時間に島が解放されて、3つあるお宝全てが発見されたら終わりのクエストね。誰でも参加できるから競争力が高い代わりにレアな装備や素材が見つかりやすいわ。」
「低レベルでも大丈夫なの?」
「運と観察力、閃き力が大事だから、レベルは関係ないわね。」
「じゃあそれに挑戦してみようかな。いつ解放されるの?」
「今日の午後5時に解放ね。そのあとは1ヶ月ごとのサイクルだと思うわ。」
1ヶ月ごとは結構きついと思う。その分レアなものが見つかる可能性が高いんだろう。
「あ、先に職業を決めてからじゃないと挑戦できないから注意してね。まだ時間あるから、先に他のエリアも紹介しておくわ。」
「うん、お願い。」
「じゃぁ次はイベントエリアね。ここは主にコラボイベント等が開催されるエリアになるわ。イベントが開催されていない日は解放されないから要注意よ。アタシのアバターなんかもコラボイベントで手に入るから、可愛いアバターが出たら絶対手に入れてね!」
「わかったよ。レイに似合うアバターを早く見つけないとね。」
「わかってるじゃない!頼んだわよ!次はモンスターハントエリアね。ここはトレジャーハントエリアと違ってモンスターを討伐することで装備の素材が手に入るわ。ソロ・パーティの他にレイド戦があるのが特徴ね。レイド戦は貢献度で報酬が変わってくるわ。」
「じゃあレイド戦をするならソロやパーティでレベル上げしたりしてしっかり準備しないといけないな。」
「うん。レイド戦は毎月末に開催されるから、またその時決めればいいわよ。長くなっちゃったけど、最後にダンジョンエリアを説明するわ。ここはトレジャーハントエリアとモンスターハントエリアが混ざったようなエリアよ。宝箱を開けている間にモンスターに襲われるなんてこともあるから、一番難易度が高いの。ダンジョンボスもいて、ボスを倒すことで次のダンジョンが解放されるのも特徴ね。ここはソロかパーティでしか挑めないわ。」
「ソロかパーティ限定か。僕は基本的にソロになりそうだなぁ・・・。とりあえずトレジャーハントエリアとモンスターハントエリアでしっかりレベル上げと装備を充実させてダンジョンエリアに挑む流れで行こうかな。」
「それがいいわね。とりあえずこれで説明は終わり!なんか質問ある?」
「いや、ないよ。ありがとう。」
「じゃあ早速今日のトレジャーハントエリアのオープンクエストに向けてナギの職業を決めにいこう♪」
そう言ってぴゅーんとレイはエレベーターの方に向かって飛んで行った。
早足でレイを追いかけ、職業を決めるべく僕とレイはエレベーターに乗り込んだ。
今回も説明回です。次回からようやくクエスト攻略に移っていきますのでお楽しみに!