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DreamHunterQuest  作者: Ebis
2/16

Quest:1

「ひとつも当たってなかった。」

僕はこの事実に絶望した。

クラスの中で100枚以上の抽選券を集めたのは僕だけだったし、これだけの数集めれば当たるだろう、と考えていた僕の期待は見事に打ち砕かれた。

このゲームのためにバイトをして身を粉にしてお金をためたし、友達付き合いも極端に減らしたのに、だ。


このゲームを発売日当日にプレイできない。

動画配信サイトで配信されるプレイ動画をただ指をくわえて見ているだけなんて僕には耐え難かった。


でも、現実は甘くない。

三日三晩寝込んだ後、学校へ登校した僕に友人から衝撃の発言を聞いた。


「おい、知ってるか?『DHQ』に当選した人の中に、二重で当選した人がいて、予約券の転売は不可だから再抽選があるんだってよ!」


神はまだ、僕を見捨ててはいなかった!


もう一度チャンスがある。

しかも友人曰く、当選者の中に不正をした人がいたらしく、1,000台ほどの再抽選が行われるとのことらしい。


僕は、家に帰ってから今度こそ当たりますようにと願いを込めて抽選券を大事に大事にしまった。

これで当たらなかったら僕のライフはゼロになる。


淡い期待を胸に再抽選日を待った。


待ちに待った再抽選日、抽番番号は午後3時に発表された。

学校を休もうかと考えたが、抽選券を集める時に欠席したためやめておいた。授業の内容は全く頭に入ってこなかったけど。


家に帰って発表された抽選番号をひとつひとつチェックしていく。

1枚、また1枚と外れていった抽選券。


その84枚目。


「11067745」


という抽選券の番号が当選番号とぴったり一致した。




歓喜。




泣いた。僕は泣いた。

50枚を超えたあたりから明らかに低くなっていたテンションは過去最高のものとなり、僕は嬉しくてその日は泣き続けた。


「ありがとう」


当選が発覚してから何度も心の中で叫んだその言葉をゆっくりと吐き出し、その日僕は眠りについた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


次の日、学校から帰って身支度をし当選した抽選券を持った僕は、その抽選券を発行した店舗に自転車で向かっていた。

幸いなことに、当選した店舗は自転車で20分くらいの距離だった。


道中誰かに襲われないかビクビクしながらだったが無事にたどり着いた僕は、早速抽選券を店員さんに見せ、予約販売の手続きをとった。


「おめでとう!うちの店舗で『DreamHunterQuest』が当たったのは君が2人目だよ!僕も抽選券発行したんだけど外れたから羨ましいよ。」


と店員さんは言った。周りにいたお客さんも羨ましそうに僕を見ていた。


「ありがとうございます。100店舗以上回ってようやく当たったので、ホッとしています。再抽選がなければ外れていました。」


と僕は答え、手続きを進めていった。


このゲームはIDの発行が必要で、1人一つしか登録できない。

IDはランダムで決まるので、住所と年齢、マイナンバーなどを記入して、ふとある一つの項目に目が止まった。


“ゲーム内コインの換金を希望される方は個人事業主登録をオススメします”


個人事業主だって?高校生でもなれるのか?

気になった僕は店員さんに聞いてみた。


「個人事業主登録は誰でもできますよ。税務署に行って手続きを行ってくださいね。」


とのことだった。

高校生活でやりたいことを見つけられなかった僕は、なんとなく大学へ行ってなんとなく就職するんだろうと考えていたが、この瞬間に大学に行く選択肢を消した。


『DreamHunterQuest』でプロゲーマーになろう。


そうと決まれば早速親に相談だ!

バイトで貯めたゲームの代金20万円を支払い店を出る。

僕の行動は早かった。

親をなんとか説得し、2年間でそれなりに稼げなかったら専門学校へ行き、安定した就職先を見つけることを条件に許してもらった。


税務署での手続きも驚くほど早く終わった。

紙を書いて提出するだけの簡単な作業だった。この瞬間、僕は高校生で個人事業主となった。

これで準備は整った。

ある意味これが僕の最初のクエストだったのは笑えるけど。



後はゲームの到着を待つだけだ。

プロゲーマーの道を、歩んでやろうじゃないか。

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