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16話


新たな能力を試しながらアリたちについて十分情報を仕入れた僕はひとまずアリ塚の頂上に出ることにした。といっても別段特別な用事があるわけでもない。一応、そこから辺りを見渡し今後の計画を練るつもりではあったが、その景色を見るだけなら適当なアリを一匹派遣してやれば済む話であった。


それでもわざわざ地下奥深くから再び地上へ戻ったのは、あんなところに閉じこもりっぱなしじゃ気が滅入ってしまうというのと、これは恥ずかしい理由だが、自分が手に入れた城をこの目で見たいという思いがあったからだ。


縦穴をよじ登るアリの背から後ろを振り返る。その先には闇が延々と続いていた。まるで伝説のダンジョンみたいだな、ふとそんな風に思った。




はるか昔、この国の中央には巨大な迷宮があったらしい。そこには魔人が支配する十種の魔物がひしめき、迷宮を守護していたという。魔物たちは度々迷宮の外に出ては近隣を荒らし回り、その度に多くの犠牲を出した。絶望と恐怖が隣り合わせの日々を送る人々をまとめ上げ、迷宮に攻め入り、ついに魔人を打ち滅ぼしたのが王家の先祖だと伝えられている。


その迷宮は今も首都の地下深くに眠っているというが、この国でそんな話を信じているのは子供か白痴だけだ。だが別に王家が王権の正当性を主張するために大げさな伝説を吹聴するのは珍しいことではない。必死になってそんなのはおとぎ話だなんて声高に叫ぶ方がどうかしていた。


しかし、あながち全てが間違いではないのかもな


僕の能力の存在が、少なくとも魔物を操る術はあるということを示している。王家の先祖が魔人を滅ぼしたという話はともかく、伝説の魔人が僕と同じ能力を持っていたとするなら、迷宮を作り人々を支配することも不可能じゃなかっただろう。


気が向いたら首都の地下を探索してもいいかもしれない。まあそれは随分先のことになるだろうが。




アリ塚の頂上に着くと外の澄んだ空気を肺いっぱいに取り込む。地下の埃っぽい淀んだ空気にいつの間にやら慣れてしまっていたようだ。久々のシャバの空気は最高だった。それにしてもここは風が強い。その寒さに思わず僕は身震いした。


見下ろすとゴマ粒ほどの大きさに縮んだアリたちがせかせかと巣の周りを歩いていた。眼下に広がる森は地平線の彼方まで続いている。


その中にここと似たようなアリ塚がぽつぽつと遠くの方に見えるのを確認した。ふう、と大きく息を吐き出し腰を下ろす。ここら一帯をで幅を利かせているのはこのアリたちであること、そして複数のコロニーが互いに争っていることは、アリたちとの感覚共有でわかっていた。


僕は全てのコロニーを手にいれるつもりだった。さてそのためにはどうしたものか、頭をひねるがそう簡単には妙案が思いつかない。


それにしても、と空を見上げる。そこには抜けるような青い空が広がっていた。いい天気だ。眠っていたせいで時間の見当がついていなかったが、太陽の位置から見て今は昼頃らしい。突入したのが明け方だったから眠っていたのはそんなに長くはなかったのかもしれない。あるいは丸一日寝てしまっていたか。


「ん?」


たまたま空を見上げたおかげで、こちらに向かってくる影に気づいた。あれは蟲じゃない……鳥だろうか?

その時風に乗ってかすかに声が聞こえてきた。


「おーーーい!ジィィーーくーーーん!ボクだよーーーー!」


この声はまさか、いやそんなバカな、だけど……フィオナ……なのか?




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