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15話 新たな能力


何かが近づいてくる気配で目が覚めた。ばっと身を起こすとそこにはこれまで見たことのない、少々小柄なアリがいた。いや、コイツはたしか女王の周りにいた侍従アリだ。


そのまま警戒を解かない僕に、しかしそのアリは襲いかかることもなくこちらをうやうやしく頭を下げて僕に背を向けて去っていった。

どうやら敵意はないようだ。そもそもそんなものがあったらとっくに殺されているはずか。思い直して周りを見渡す。ここは女王のいた地下空洞じゃない。どうやら寝ている間に僕は別の小部屋まで運ばれたらしい。


立ち上がって伸びをする。さっさとここを出よう。色々と調べたいことがあった。




幸い女王の広間からそう離れていないところに位置していたようだ。途中で捕まえたアリの背に乗り、僕はまたあの地下空洞へと戻ってきた。


わらわらと無数のアリたちがそこここを行ったり来たりし、広間の中央には女王の巨体が鎮座している。お世辞にも目に優しい光景とは言えないが、やはり明るい場所に来るとほっとする。


行き交うアリたち全てがこちらに敵意を示すこともなく、僕がここにいることがさも当然かのように振る舞っていた。僕はなんとなく女王に近づきながら、すれ違うアリたちを感慨深く眺める。つい先ほどまで悪しき侵入者が、今となっては仕える主人か。我ながら笑える展開だ。


ここに来るまでに立てた推測は大方間違いないだろう。どうやら群れのボスを支配すれば群れ全体を支配することができるようだ。そうでなければ女王からフェロモンを下賜されたわけでもないのに、服従の命令を与えていないアリたちがこんな態度をとることに説明がつかない。


元々の予定では女王を手中に収めた後にアリたちに間接的に指示を下すはずだったが、期待を上回る結果になったようだ。いちいち女王に命令を下させては面倒だし、僕がここから離れることができなくなる。その不安がなくなったのは大きな収穫だった。


この先はこいつらを操って徐々に配下を増やしていく。そのためには戦力を把握しなければならない。コイツらは何匹いるのか、僕が目にしたアリ以外にまだ種類があるのか、巣の構造はあるのか、いちいち挙げるときりがない。その全てを調べるとなると面倒だ。やれやれ、僕はため息をついた。


女王なら下っ端のアリよりかは知能があるんじゃないかと妙な期待をして戯れに話しかけた。


「なあ、お前たちのこと説明してくれないか」


どうせ単純な命令を一方的に聞くだけだ、説明なんて無理に決まってる。そう思った直後、頭にイメージが流れ込んできた。


何だ⁉︎


激しい混乱の中で、だがなぜだか理解できた。それは女王が見下ろす光景であり、近衛アリの充溢した力であり、兵隊アリの足音だった。それはすべてのアリたちの感じる世界だった。


イメージの、感覚の共有……そうか、これがあの時新たに進化した僕の能力……。


全てのアリたちの様子が手に取るようにわかる、だがその情報量に押しつぶされることもない……。それは言葉では表せない不思議な感覚だった。


まさか、と思い一匹のアリに意識を向ける。そのアリはちょうど外に出ようと地表に頭を出した個体だった。アリはどこへ向かおうかと逡巡するように首を巡らせた。森の奥、そこに生えた朽ちかけの老木が目に入り、そこだ、と念じてみる。すると、そのアリは素直に従いそこへ進路をとった。信じられない思いでその後も二度、三度と進路変更をさせるが、その度に従順に命令を聞いた。


どうやら距離が遠く離れても従わせることができるようだ。


感覚共有と遠距離指令、二つを組み合わせればここにいながらにして万のアリの軍を指揮できる。


「まったく、ここまで一気に進むと逆に不安だよ」


そう言いながらも僕は口元が緩むのを抑えられなかった。



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